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第19話【エルフの元へ〜関係無い奴もついて来る〜】


「でもよ、俺はこれから一体どうすれば良いんだ?」


 俺がオリアラの森の使用権を巡ってエルフと決闘をするのは分かったが、それ以外のことが全然よく分からん。

 お姉さんにそう聞いた。


「今から私も含めた数人でオリアラの森に入り、エルフ族の方に決闘をするということを伝えに行きます。そして恐らく、そのまま決闘という流れかと。」

「それって、とうまと同じパーティーの私たちも行った方が良いのかしら?」

「そうですね、オリアラの森ではモンスターが出る可能性もあるので、来ていただけると幸いです。」

「よし!じゃあ私たちでとうまの応援をしに行くぞ!!」

「「おー!」」


 おいおい、俺がこれからする決闘はコロシアムでする様な見物じゃねぇんだぞ。

 たく……パーティーのイケメン担当が戦うってのにお気楽なヤツらだな。


 それにしても今の話を聞いた限りでは、エルフたちと会ってすぐに決闘をする感じか。

 出会って5秒で決闘って訳だな。


「じゃあ俺たちはもう出発の準備をした方が良いのか?」

「はい、私もこれから出発の支度をしますので、皆様は冒険者ギルドの前で待っていて下さい。」

「あいよ。」


 それにしても、まさか今日こんなことをするなんて思わなかったぜ。

 俺はさっき入って来たばかりの扉を開けると、4人で外に出る。

 お姉さんが来るのを待つことになった。


 ---


 それからしばらくして、俺たちは冒険者ギルドの前にあるベンチで座っていると扉から日傘を持ったお姉さんと、ひとりの冒険者が一緒に出てきた。


 ん?まさか付き添いか?

 俺はそいつの顔を見て、それが誰か確認する――って!


「エスタリ?なんでお前がお姉さんと一緒に出てきたんだ?」


 そう、一緒に出てきたひとりの冒険者は、本当にオーガを倒したエスタリだったのだ。

 こいつと最近めちゃくちゃ会うな。まさか俺たちのことが好きなのだろうか?


「皆様、待ちましたか?」「よっ、お前ら。」

「いえ、全然大丈夫よ――ってそんな事より、」

「お前、他の仲間はどうしたんだよ?」


 俺はいつも通りのお気楽な雰囲気を醸し出すエスタリにそう尋ねる。


「あいつらには依頼に行かせる。」

「お前は?」

「俺は行かない。お前の決闘を見届ける義務があるからな。」


 なんだよ義務って。

 そんなセリフを俺に対して吐くんなら、いっその事立場を変わってくれよッ!!――とは言わないが……

 本来この立場に立つのはお前だろうが。


 っていうか、依頼に行かせるあの2人は大丈夫なのだろうか。

 実際に異世界に来てから分かったのだが、パーティーメンバーがひとり欠けるというのは、思っている何倍も痛い。

(オーガと戦った時に痛感したよ)


「っていうか、あの2人は大丈夫なのか?」

「あの2人?オネメルとヒルデベルトの事か?」

「逆にそいつら以外いるか?」


 全く……こいつは仲間が心配とか無いのか?

 確かにあの2人は強いが――信頼し過ぎだろ。


「あの2人なら大丈夫だ!難易度低めの依頼だからな。」


 真っ白な八重歯をグイッと出して、片手でグッドを作りそれを突き出してくるエスタリ。

 そういうもんなのかねぇ……まぁ良いけどよ。


「じゃあとりあえず、立ち話をするのもなんだし、歩き始めるか。」

「そうですね」


 これ以上エスタリと話していても時間が経つだけという事に気が付いた俺は目線をお姉さんの方に向けると、出発する様に促す。


「じゃあ、行きましょう。」

「行こう行こう!!」

「ちょっとくるみ、あんまりはしゃぎ過ぎないの。」

「はぁ……こいつらは俺のする決闘をなんだと思ってるんだよ……」

「まぁ元気だせって、俺もお前の決闘、楽しむ気満々だからよ!」

「フォローになってねぇよそれ!!」


 むしろボケているのかと疑いたくなるエスタリのフォローにツッコミながら、俺はみんなでオリアラの森へ向けて出発したのだった。


 ---


 そこからしばらく雑談を交えながら歩いていると、あっという間にオリアラの森へ入った。

 俺たちは2日前にここでワーウルフを倒し、オーガと戦った訳だが――なんだか思ってたよりかは怖くないな。


 てっきり、「オーガは倒したからもう居ないって分かるが、それでも怖いな……」なんて弱気な発言をすると思っていたんだが……


 まぁ、怖くないに越したことはないから良いんだけどな。

 でも、普段こういうところに来ていないお姉さんは、終始みさとに引っ付いて涙目だったぜ。

 正直に言っておこう。こういうギャップも興奮するな。



 それから更に歩き続けると、ずっと薄暗かった森から抜けた様で、いい具合いに光が入ってくる、良い雰囲気の場所に変化して行った。


「さっきまでのジメジメとした雰囲気からガラッと変わったな。」

「だな、この光景を愛しのオネメルにも見せてやりたかったぜ。」


 いや、依頼に行かせたのアンタじゃねぇか。

 それに愛しのオネメルって――前から思ってたがコイツ仲間に恋してるのか?

 だとしたら確実にその思いは一方的だろうな。


 するとそこで――さっきまでのジメジメとした場所を抜けて、テンションを取り戻しつつあったお姉さんが、前を指さしながらこう言う。


「あ!あれは!皆様、着きましたよ。」

「ん?――お、あれか。」

「俺も初めて来たけど、やっぱりあったんだな。」


 お姉さんの指さした先には、木でできた鳥居の様なものがあり、その下にひとりの女性が立っている。

 その女性は髪が薄い緑色のボブ、耳は長く伸び、ローブの様な服を羽織っていて、まるで絵に書いたかのようなエルフだった。


 そんなエルフも、こっちへ向かってくる俺たちの存在に気づいたようで――こっちを向くと真剣な声色でこう聞いてきた。


「ここへ何しに来たんですか?」

「私たち、冒険者ギルドの人間です!先程送られてきた手紙の返答をしに来ました!」


 エルフの問い掛けに、小走りで近寄って行きながら笑顔でそう答えるお姉さん。

 すると――それを聞いたエルフはすぐに理解したような表情になると、


「それは失礼しました。すぐに長の元へご案内致します。」


 頭を下げながらそう言った。




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