「マジかよ……」
「ちょっと、何でこうなるのよ……!?」
スライム討伐も終え、これから帰ろうという時に、巨人のような見た目のソイツは姿を現した。
この状況、マジでやばい。
(一か八か戦うか……?――いや、そんなの無駄に決まってる)
とりあえずは――
「逃げるしかねぇだろ!!」
俺たちはすぐに森の出口の方へ走り出す。
こんなのとなんか戦える訳ねぇ!!
「ウォォォォォ!!」
すると、そこで相手は俺たちに気付いたのか、そう叫び声を上げると、ドスドスと地面を蹴りながら近づいてくる。
くっそ……コイツ前よりも早くなってないか……!?
いや、武器を背負ってる分俺たちが遅くなってるのもあるかもしれないが。
「……ッ!」
俺は後ろを見る。
すると巨人のようなモンスターは、先程とは比べ物にならないくらい近づいて来ており、捕まるのはもう時間の問題のように思えた。
くッ……考えろ……考えろ俺……!――――はッ!
そこで俺は思い出した、ユニークスキルの存在を!
(俺のユニークスキル……シールド形成……あぁもう!一か八かだ!)
「お前ら!俺の身体に触れてくれッ!!」
「は、はぁ!?とうま、貴方あまりの恐怖で頭おかしくなったの!?」
「ちげぇよ!ユニークスキルだ!」
「「……ッ!」」
そこで俺以外の3人も、俺の持っているユニークスキルを思い出した。
ユニークスキル[ボディタッチ]
それは女の子に身体を触れられるとシールドを形成することが出来るという物。
一見聞くとただのド変態スキルにしか聞こえないが、今のような逃げ切ることが出来ない状況なら、これに掛けるしかねぇ!
「頼む!今はこれしか無いだろ!」
「……ッ、分かったわよッ!」
「――しょうがねぇな」
「今回だけなんだよ!」
3人はそこで俺の提案を承諾し、
一斉に――
「何とかしなさい!」
「やってやれ!」「任せるよ!」
俺の身体に触れた。――瞬間、
触られたところからどんどん力が湧いてくる。
よし……!これなら本当に行けるかもしれないぞ!
俺は走る足を止め、身体を180度回転させると――
「美少女パワーのシールドだ!破れるもんなら破ってみやがれ!」
身体に溜まったパワーを一気に絞り出した。
するとその途端、俺たち4人の周りに青いシールドがドーム状に形成された。
「ウォォォォ!!」
それに対して、すぐ近くまで迫って来ていた巨人のようなモンスターは拳を振り上げ、俺たちを叩き潰さんと振り下ろすが――
「ウォォォ!?」
拳は俺の形成したシールドに触れた瞬間、弾き飛ばされた。
そのままの勢いで後ろによろめくモンスター。
「ウォォ……」
予想外の出来事に混乱したのか、そのまま森の奥へと走って行った。
「た、助かった……」
「何とか上手く行ったみたいね……」
「助かったぜ……」「死ぬかと思ったよ……」
俺がそう安堵の声を漏らし、力を抜いた瞬間、シールド空気のように透明になり、消えた。
本当に死ぬかと思ったぜ……
こうして俺たちは、俺の天才的な閃きにより、九死に一生を得たのだった。
---
その後、俺たちは冒険者ギルドに戻ると、受け付けお姉さんに皮袋に入ったスライムの切れ端を渡し、先程あった出来事を早速報告した。
巨大なモンスターから逃げ切ったなんて、はたから見たら「どうだ?俺たち凄いだろ?」アピールをしている様に見えるかも知れないが、あんなに危険なモンスターがここらをうろついてるのを誰も知らなかったら、死人が出るかもしれないからな。
「――もう一度確認を取りますが、そのモンスターは長いツノが2本生えていて、身体は巨大だったんですよね……?」
「あぁ、それで皮膚の色はオレンジだった。」
「やっぱり……」
先程俺たちを襲ったモンスターの話を聞き終わったお姉さんは、そう俺にモンスターの特徴を聞くと、腕を組みながら険しい顔をして、こう言った。
「そのモンスターはオーガと言うやつです。」
「オーガ?」
「はい、普通ここらには居ないはずなんですが……」
ってことは、普段はもっと違うところに居るやつが、何故かここら辺に居るってことだよな?
ちょっと待て、それじゃこの町、危なくないか?
「なぁ、ならこの町にそのオーガが来る可能性もあるって事だよな?」
それなら今すぐにでも強い冒険者たちで力を合わせて討伐しに行くべきだと思うんだが。
しかし、どうやらその心配はいらなかったらしい。
お姉さんは表情を明るくすると、
「いえ、その心配はありません。ラペルの周りにはモンスターが入れない魔法をかけてありますので。」
そう言った。
なるほどな、だから最初にオーガに追いかけられた時、ある程度町に近づいた所で追って来なくなった訳だ。
「しかし、だからと言って危険じゃないという訳でもありません。魔法の外に出なくては行けない時も沢山ありますので。」
「――だよな。」
要するに、早めに討伐しないとダメって事だな。
「とにかく、報告ありがとうございました。特別手当として、皆様に1枚ずつ、銀貨をプラスしてお渡ししますね。」
「マジか!」「やったわ!」「よっしゃ!」「ありがと!」
あの時はマジで死ぬかと思ったが、プラスでお金が貰えるんなら許してやるかぁ!
オーガよ、また襲って来ても良いんだぜぇ?
俺は特別手当分も合わさった、合計銀貨5枚が入った袋を受け取ると、それをズボンのベルトに付ける。
そして、ポケットの中に入れていた銅貨10枚も、今付けた袋の中に入れた。
これで合計銀貨6枚分だな!
なんだか大金持ちになった気分だ。はぁ、この世界に18禁ショップがあれば買い損ねた新作エロゲを買うのに!
「じゃあとりあえず今日はゆっくりしましょうか」
「そうだな」「おう」「お腹すいたよ〜」
俺たちは受け付けカウンターから離れると、冒険者ギルドから出て何処かでご飯を食べに行く事にした。
あんな事があったから、お腹ペコペコだぜ。
しかし、
「おい、お前ら、」
そんな俺たちに対して、後ろから誰かが話しかけてきた。