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第3話【初めての依頼〜元ヒキニート、仕事をする〜】


「これです。」


 受け付けのお姉さんはそう言いながら、俺たちに一枚の依頼が書かれた紙を渡した。

 そこには、こう書かれていた。


=========================

酪農家お手伝いクエスト

・内容:モーウの出したモノを集める。

・報酬:銅貨5枚

・場所:メディー牧場

・期限:特に無し。

・依頼主:テオ・メディー

・備考:酪農に興味のある方は是非

=========================


 なるほど、酪農か。

 確かにそれならモンスター討伐の様な危険は無いだろう。


「お前らはどう思う?」

「良いと思うわよ?」


 みさと以外の2人も、同じように首を縦に振った。

 ――ならこのクエストで良いか。別に一日一回しか出来ない訳でも無いだろうからな。


「じゃあこのクエストにする。」

「了解致しました。それではこの紙を持って依頼主の元へ行き、内容にあることをした後、紙のどこかにサインを書いてもらい、ここまで持って来て下さい。」

「分かった。」


 そうして俺たちのこの世界に来て初めての仕事(俺にとっては人生初の)「酪農家のお手伝いクエスト」が始まった。


 ---


「ここか……」

「思ったより遠かったわね。」

「全くだ。」「うん、私疲れたよ……」


 あれから冒険者ギルドを出た俺たちは、村人に目的地のメディー牧場の場所を教えて貰い、10分程かけてそこへ行った。

 どうやらこの町は山の麓にあるらしく、目的地の牧場は山を切り分けて作った為に、道のりは終始上り坂だった。

 たく……もっと行きやすい場所に作って欲しいものだ。


「みてみて!牛さんだよ〜!可愛い!」

「お、ほんとね。肉になる前は初めて見たわ。」

「おいおい肉になる前って。言い方が怖いな。」


 メディー牧場というのは当たり前だが個人経営らしく、山小屋の様な小さな家に柵がくっ付いており、そこに牛――この世界で言うモーウが放し飼いになっていた。

 だから道からその様子が見えるのだ。

 (やっぱりこの世界にも普通な生き物、居るんだな。)


 ここに来る途中で馬車を使って荷物を運んでいる村人を数人見かけたが、この世界には馬だけでなく、牛もいるらしかった。

 するとそこで、


「――なんじゃ?若いもんがここに来るのは珍しいのぉ」

「あ、この牧場の経営者さんですか?」


 俺たちの声に気づいたのか、家の中からおじいさんが出てきた。


「あぁ、いかにもこのワシがメディー牧場の経営者、テオ・メディーじゃが?」

「俺たち、あなたが冒険者ギルドに出していた依頼を受けに来たんです。」


 俺はそう言うと、ポケットの中に入れていた依頼の書かれた紙を取り出し、テオさんに見えるように紙を広げる。

 するとテオさんは、


「おぉ!そうかそうか、よし、じゃあまずは家に入ってくれ、仕事内容を説明してやる。」


 笑顔で手招きしながら扉を開け、俺たちを歓迎した。


 ---


「じゃあ、今言った通り放牧地に落ちているモーウのフンをカゴに集めて持って来てくれ。」

「はい……」


 その後、家の中で説明を受けた俺たちは、モーウたちのいる放牧地(柵の中)にカゴを持って入った。――のは良いんだけどよ……

 (まさかモーウの出したものってのがう○こだとは思わなかったぜ……)

 俺的には、乳搾りとかそういうのを想像していたんだが。


 まぁでも、こうやって仕事を受けたからには最後までやるしか無いよな。


「よし、じゃあ俺は奥から集める。お前らは手分けして家に近い方のう○こを集めてくれ。」

「え?私たちもするの?」

「――は?」


 ちょっと待て。コイツら全員テオさんが家に入ったからって態度をコロッと変えやがったな?

 なんだよ今の「え?私たちにもそんな汚いことをさせるの?ひどぉ〜い。」みたいな言い方は!


「まさかお前らする気も無かったのにさっき冒険者ギルドで「良いと思うわよ?」みたいな返事しやがったんじゃないだろうな?」

「違うわよ、まさかう○ちを集める仕事だとは思わなかったの。」

「うんうん」「その通りだ。」

「俺だって思わなかったよ!!」


 (はぁ……ダメだコイツら……、一向に仕事をする気が無い。)


 このまま今のような言い合いを続けていても埒が明かないと思った俺は、仕方なくひとりでモーウのう○こ集めを始める事にした。


 〜そこから20分後〜


 まさかの仕事を俺以外しないというアクシデントもあったが、俺は何とかモーウのう○こだらけになりながら、全てをカゴに集め切った。


「お、終わったか、お疲れ様。」

「おつかれ〜」

「あれ?みさとのやつは?」


 俺がくっさいう○こだらけのカゴを背負いながら家の方へと歩いて行くと、ちなつとくるみは居たが、みさとの姿は無かった。


「みさとならとうまが頑張ってる間に暑いからって家の中に入っちゃったよ?」

「あ、あいつなぁ……」


 たく……まぁ姿が無いイコールそういう事だとは思ったが、仕事をしないにしてもせめて見届けるくらいはしろよな。

 今日は俺の人生初仕事だったんだぞ?


「――まぁ良い。とりあえずテオさんに終わった事、言おうぜ。」

「そうだな。」「うん。」


 ---


「今日はご苦労だった。ほら、紙にサインはしたから、これを冒険者ギルドに持って行けば報酬が貰えるはずじゃ」

「ありがとうございます。」


 俺はメディー牧場の前でテオさんからサインをして貰った紙を受け取る。

 あれからテオさんに仕事が終わったことを報告して、OKをもらった俺たちは、ここに長居しても仕方ないという事で、冒険者ギルドに戻る事にしたのだ。


 どうやら俺たちは昼頃に転生してきたらしく、仕事が終わった頃には夕日が出ていたからな、そろそろ今日泊まる宿を探さないと。


「じゃ、気を付けて帰るんじゃぞ。」

「はい、ではこれで。」「おじさん、ばいば〜い!」


 こうして俺たちの――いや、俺の初めての仕事が幕を閉じた。


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