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第42話 特別

 国王陛下からの指名依頼?そんなことあるわけないでしょ……王都から離れているし、そんな情報が早く行き来できるわけないだろ。早馬でも数日、数週間はかかる距離だぞ?俺が引き受けないと思って、国王陛下の名前を出しただけだろ。それってダメなやつじゃ?俺が子供だと思っているからだと思うけど、勝手に国王陛下の名前を使っちゃって良いのかよ。



「国王陛下ですか? そんなに早く情報が?」



 子供だと思って舐めてもらっちゃ困るよ? この質問に俺が納得できる答えを返せるかな?



「えぇ、それはギルド同士を繋ぐ魔石を利用した音声通信がありますので。それに、魔石と数人の魔術師を使って書類を転移させる技術がありまして……これです」



 ギルマスが立ち上がり、机の引き出しから他の書類とは違った立派で豪華な書類を取り出して見せてくれた。それは国王陛下からの指名依頼書で、国王陛下の直筆のサインと印も押されていた。俺に依頼をさせるために、こんな手の込んだ偽造書類を危険を犯してまで作るわけがないか。


「……分かりました。でも、俺たちはCランク冒険者ですよ? そんな重要な討伐依頼を出してもいいんですか?」


「それは問題ありません。私の権限というより、国王陛下からの推薦もあり……これより、ユウヤ殿はSランク、アリア殿、ミーシャ殿をAランク冒険者とする」


 受付のお姉さんがギルマスの後ろで控えていて、ギルマスの横に立つと、小箱から出した物を渡され、ギルマスから直接冒険者証とゴールドのタグを受け取った。


 アリアとミーシャも初めて受け取るのが、いきなりAランクの冒険者証とシルバーのタグだった。アリアは手が震えていたが、ミーシャはよくわからないという表情で気軽に受け取っていた。



「これは異例中の異例だが、十分に資格があり、実力も伴っていて誰も文句も言えまい」



 後ろに立っていた受付のお姉さんが嬉しそうに、首をコクコクと頷いていた。


 目立つのが嫌だとか言っている場合じゃないよな。とはいえAランクの冒険者のルークさん達は……隠すとかの問題より一緒に討伐に参加は厳しいだろ。ハッキリいって邪魔だ。オオカミ型の魔獣1体で苦戦するようでは厳しい、これはギルマスから村の警護をしてもらうとかしかないか。



「お願いがあるのですが……」


「討伐の報酬ですかな?」


「違いますって! Aランク冒険者のルークさんを村の警護に任命をしてくれませんか? 討伐に付いて来られると……その、足手まといに」



 ギルマスは、しばらく考えている様子だった。



「Aランクのパーティですが……足手まといですか?」


「魔獣1体にパーティで苦戦をしていて、ダンジョンで逸れたり、後方で支援をして頂いてる時に後ろから魔獣が襲ってきたら対応を出来ますかね?」



 後ろに控えていた受付嬢のお姉さんは頷いていたが、ギルマスは再び考え込む様子で、しばらくすると結論が出た表情になった。



「そうですな。ダンジョンはすでにAランクでは手に負えないと判断しました。ですので、仰るとおり、彼らのパーティには村の警護を任命します。これは非常事態時の特別任命で、拒否権はありません」


良く分からないけど、拒否権が無いのなら安心かな……付いてきそうだけどなぁ。あの勢いだと……


取り敢えず、状況と詳しい場所を聞いた。受付のお姉さんが資料をテーブルに広げ、さらに詳しい地図を見せてくれた。


「場所は、この村から南のダンジョンのここ、それとこの西のダンジョンのここから、魔物と魔獣が溢れ出してるとの報告が多数入っています」


「通常でも危険なAランクの冒険者が数人いるパーティで探索が可能なダンジョンでしたが、今ではAランクの冒険者で固めたパーティでも難しいかと。Sランクの冒険者のパーティでも厳しい状況だと判断しております」



 受付のお姉さんが、補足をしてくれ心配そうな表情で見つめられ、アリアがコッソリと膝を突いてくるのが可愛い。ミーシャは、話に付いてこれずにお菓子とお茶を飲み満足気な表情をして、俺に寄りかかって眠そうにしていた。


「村を襲った魔物や魔獣と違う種類の報告はありませんか?」


「その報告は受けてはおりませんが、他の種類の存在もいるとお考え下さい。可能性は大です」


 だろうなぁ……この村を襲った魔獣のオオカミのボスはいるのは確実で説明を受けてるし、今回は楽しめそうかもな。


「早速、行ってきます」


「はい? あ、え? 準備をしてからとお伝えしましたよね? 何の準備もせずに向かうのは無謀です!」


 受付のお姉さんの表情が怒った表情になり、部屋から出て行ったと思ったら、また小箱を持ってきて小箱を押し付けられた。



「ギルマスも言っていましたが、今回は非常事態なので特別支給です! 持っていってください! 特別ですよ!」



 箱の中にはポーション類が大量に入っていた。


 そういえばポーションって見たことはあるけど、使ったことが無いかも。美味しいのかな? 聞くのは怪しまれるよな……冒険者をやっていて使ったことが無いっておかしすぎると思う……ん? アリアは使ったことあるのかな? 見たことが無いけど……あ、俺が回復させたり付与してあるからか。……納得してしまった。

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