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第40話 村へ向かうと

 アリアの自宅の豪邸は無事みたいだな。探索魔法で確認すると、一箇所に避難しているみたいだし、魔獣の侵入もないな。一応、結界を張っておくか。自分の家も……うん。問題なしで両親も無事だな。結界っと。


 冒険者の5人のパーティが魔物と交戦中のところを発見した。状況は最悪で、3人の前衛のうち2人が負傷していて重症だった。オオカミ型の爪で腹を裂かれ、大量の血が地面に広がり、顔色が悪くグッタリとしていた。魔術士が攻撃よりも治療を優先していて、もう一人が攻撃魔法の詠唱中だった。


 前衛の剣士が、オオカミに攻撃を仕掛ける時に、キラリと輝くシルバーのタグが光るのが見えた。


やっぱりAランクの冒険者でも、この状況になるのが普通だよな……。力を隠してやり過ごすという状況じゃないか。周りに潜んでいる2体が襲うタイミングを伺っているっぽいし。



「アリア、ミーシャ、助けるぞ」


「「うん」」


「アリアは治療、ミーシャは、あそこの家の陰に隠れてるヤツ頼む」


「うんっ」


「はーい♪」



 シュッとアリアが消えて、物陰からシュパッとかすかな音が聞こえ、ドサッと大きな物が倒れる音が聞こえた。


さて……俺だけ指示しているのもカッコ悪いよなぁ……。久しぶりに剣でも使うか。


収納から剣を取り出し、帯剣をしてAランクのパーティに近寄った。


「大丈夫ですか? 加勢に入ります。負傷者を連れて一時避難をしてください」


「は? 今、ケガ人を動かしては死んでしまう……。それにお前は……そのタグはCランクだろ? ムリだ! 何も出来ずに即死だぞ! 逃げろ!!」


「けが人は、大丈夫そうですよ? それに前にもコイツと戦った経験があるので、ご心配なく」



 オオカミ型の魔獣にゆっくりと近寄り、歩みを進めると、威嚇して襲いかかるフェイントをしてきたが無視した。剣を抜くとオオカミ型の魔獣が警戒して後ずさりをしたが、襲いかかってきた。



「おい! 逃げろ!!」



 前衛の冒険者が大声を上げたタイミングで、剣を振るう真似をしバリアでオオカミの首を切り落とした。体格差があり首まで剣が届かないし、ジャンプをするのが面倒でカッコ悪いと思ったからだ。


 首を落とされ血しぶきが辺りに飛び散り、自分の顔や服に付いてしまった。



「だ、大丈夫なのか……? は? 一撃で倒したのか?」



 前衛の冒険者が、呆然と立ちすくみ危機感から開放されその場に座り込んだ。



「な、なぁ……俺達は助かったんだよな? あはは……。お前は、本当にCランクなのか?」


「まぁ、最近Cランクになったばかりの新米ですけどね」


「……そうか。Cランクか……システム上な。その強さなら、明らかにS、SSランクだな……お前は。いや……あなたは、と言った方が良いな。命の恩人だしな」



 Aランクの冒険者が、改まって跪き頭を下げて御礼を言ってきた。



「いや。止めて下さい! 目立ちたくないので! 困っている人が居れば助けるのは当たり前ですよ。それにランクも下、年齢も下なので……敬語や跪くのを止めて下さい!!」


「いや。ランク、歳は冒険者には関係ないです。強い者、優れている者に、敬意を示すのは当たり前ですよ」


「それより、治療をしちゃいましょうか」



 アリアが二人の前衛の応急処置を終えて、出血は止まり瀕死の状態には変わりがないが、すぐに死ぬ危険は回避できていた。



「ユウくん、わたしには、これが限界だよ。こんな重症の傷……」


「アリア、ありがと。交代するよ」



 横たわりグッタリしているが、出血は止まり地面に横たわっている者に手を翳し、治療をしている感じを出した。手を翳さなくてもイメージで治療は出来るが、手を翳してエフェクトが格好良い……キラキラとしたエフェクトが出て、魔法を使っている感じがしてファンタジー感が出る。


 俺が治癒魔法を唱えると、手のひらから柔らかな光が溢れ出し、傷ついた者の体を包み込む。その光は温かく心地よく、見る見るうちに傷が塞がっていくのが見える。俺の集中した表情と共に、魔法のエネルギーが俺の周りを漂い、まるで生き物のように動き回った。



「は? え? あなたは……剣士じゃ? 魔法も扱えるのですか?」


「まぁ、両方使えますね。内緒ですよ?」


「……かしこまりました。秘密はお守りいたします」



 二人の前衛が目を覚まし、上半身を起こすと、顔を青ざめさせて自分たちの体を慌てて触り、傷を確認していた。



「お、俺……生きているのか? 腹を……裂かれたよな? 思い出すだけで……ゾッとするぞ」


「俺も、胸を切り裂かれて腕も取れかけていたんだぞ……」



 二人が顔を見合わせてブルブルと震えていた。



「こちらの命の恩人に、御礼を言ったらどうなんだ? お前ら……」


「いえ。他の場所の魔獣を倒しに行くので、お構いなく! ギルドへ行って状況の報告と、ケガ人と村人を誘導して避難をしてください」



 ギルドにも魔物、魔獣よけの結界を張らないとだなぁ。



「はい。指示に従い行動を致します! お前ら元気にしてもらったんだろ! 行くぞ!」


 冒険者パーティと分かれホッとした。


 秘密を守ってくれそうだし、良かった。魔獣の数もだいぶ減らしたし、そろそろ討伐をするのが面倒になってきたな。


 少しズルをして魔石の回収をして、素材はそのままで放置で良いだろ……消すのは怪しすぎるし。


 負傷している村人を治療して回り、シャルを見ていないことに気付いた。


 シャル……無事なら良いんだけどな。すぐに無茶をするからな……。ここに来た時からシャルの反応は無かったし、冒険に出ている感じだよな。



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