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第36話 久しぶりの休日気分

 ダンジョンから早めに帰って、昼夜逆転をしているのを直すために微量の魔法を使い皆で早めに眠った。


 最近、定位置となっているリビングのソファーで眠り、早朝に目覚めると、外で物音がするのが聞こえた。結界が張ってあるので不審者や魔物、魔獣は入ってこれないようにしてあるので扉を開けて確認をしてみた。


 外では、アリアが魔力を抑えた魔法で、ウィンドカッターやウォーターカッターを木に向かって放ち、魔法の練習をしていた。


 アリアは真面目な性格で、昨日の魔法の復習をしているのかな?



「アリア、おはよー」


「わ、わわっ。ごめんね。うるさかったかな?」



 アリアが振り向き、恥ずかしそうな表情をして慌てていた。



「丁度、目が覚めて外の空気を吸いに出てきただけだぞ」


「そっか〜。涼しくて良い朝だね」


「そうだなぁ。で、何をしてるんだ?」


「え? あぁ……魔法の練習だよ。昨日は、上手くいかなかったから。動くモノに当てるのって難しいっ」



 ウィンドカッターなどは、動かない敵や的には有効だけど、追尾機能がないと流れ弾のようになって危ないんだよなぁ。動き回るミーシャもいるし……。ムキになって当てようと連射されても困るしな。



「そうだ! 動き回るてきって事は魔物か魔獣だろ? これなんか良いんじゃないかな?」



 バシュッ! べちゃぁ〜と音が鳴った。それを見たアリアが、え? という表情をして振り返って見てきた。



「動き回る相手の顔に目掛けて放つと、どうなると思う?」


「……気持ち悪いんじゃないかな? ベトベトで、ドロっとしてるし……嫌がらせ?」



 え!? 敵に嫌がらせをして、どうするんだよっ。違うってのっ! アリアは、意外と天然さんで可愛い。



「違うってばっ。口と鼻を塞がれたら?」



 表情が一気に明るくなり、理解したらしい。



「これだったら外しても、魔法を解除すれば問題ないし、洞窟を破壊することもないだろ? それに魔力の消費は小さいウォーターボールと同じだしね」


「でも、ウォーターボールと違う感じだけど?」


「えっと、水の粘度を上げる感じかなぁ。ベットリと付くイメージをして放つ感じで、威力とか倒すイメージは要らないからね」


「うぅ〜ん……わかった。やってみる」



 数発放ち、ドロっとした液体に変わってくると、そこからは数発でトリモチの様に木に張り付いた。



「ユウくん、見て! 出来た!」


「うん。完璧じゃないかな、あれは簡単には取れないね」


「むぅ……二人で、楽しそうにしてるっ!」



 可愛いパジャマ姿で眠そうな表情と、ムッとした表情を混ぜた顔をしたミーシャが家から出てきた。



「魔法の練習だよ? ミーシャも練習する?」


「……えっと、パジャマだし……お部屋に入ってるっ! パジャマ姿で外に出たらダメって言ってたよね? ね?」



 魔法の練習と聞いて慌てだしたミーシャだけど、魔法の練習が嫌なわけじゃなくて、こっそり魔法の練習をしているのは知っているので深くは聞かないけど。多分、俺達を驚かせようと頑張ってるんだと思う。



「そうだぞ〜パジャマ姿で外に出ちゃダメだぞ〜」


「はぁい」


「もう少ししたらご飯の用意を手伝ってね」


「はーい。着替えてくるぅー」



 そう言うと、元気に走って着替えに自分の部屋にパタパタと駆けていく音が家の中から聞こえた。



「じゃあ、最後に試して終わりにしようか」


「うん。付き合ってくれてありがとっ」



 当然、最後のも成功し、ベチャと木に張り付いた。朝食を食べ終わり、午前中は家の掃除と洗濯物の山を片付けた。と言っても洗濯は魔法で一瞬でキレイになるが……その後はノータッチで触ると怒られる気がする。後ろからそういう圧を感じる……



「ユウくん、終わった?」


「終わったよ」


「畳み終わったら、仕舞っておくね」



 下着を見られるのが恥ずかしいらしく、ミーシャと二人でアリアの部屋で洗濯物を畳に入った。


 さて〜やる事が無くなったし、外に出て畑仕事でもするかな……こういう生活がしたかったんだよなぁ。


 家の外に出ると、敷地内にある畑まで移動をした。

 畑で元気に育つ緑色の薬草から視線を上げると、青空が高く広がり、涼しいそよ風が吹いて木々の葉がキラキラと輝きながら揺れていた。気持ちの良い朝で、久しぶりに休日を感じた。


 畑に立ち大きく伸びをして、朝の新鮮な空気を吸い込み、揚げた両腕を下ろすと同時に息を吐き出した。



「さぁ、働きますか」



 土作りからかな。この拠点に来た頃に落ち葉とか雑草を一箇所に集めて置いたんだよな……野菜くずとかも混ぜ込んであるし。たまに……ズルをして転移で、天地返しもしてたし。


 新しく野菜畑を作る場所に、いい感じに出来上がっている腐葉土を、森から持ってきたのを魔法と収納を使い混ぜ込んだ。鶏糞や牛糞も欲しいけど……売ってないしなぁ。臭いもキツイし止めておくか。



「ユウくん、お昼は外で食べる?」



 ん? 外で? この世界には外でご飯を食べる習慣は無いと思ったけど? ピクニックとかハイキングは魔物や魔獣が出るので無いし。どうしたんだろ?



「うん。いい天気だし、外で食べたいけど……どうしたの?」


「前に、外でご飯食べてる時に嬉しそうにしてたから……それを思い出して」



 あぁ……ここに初めて薬草を取りに来た時に、お昼を作ってもらったなぁ。

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