え？　アリアがムスッとしてる？　怒ってるのかな……？　余計な火種を俺が作っちゃった？

　心配をしていると、アリアが話しだした。

「ミーシャちゃん、ユウくんがそんな事をするわけ無いでしょ。もぉ……そんな事をするなら、私達の面倒を見てくれてないと思うよ」

　ん？　アリアは、俺が面倒を見てると思ってるの？　逆じゃないか？　俺が、アリアに面倒を見てもらってる感じだけど。

「……うん。そうだよねぇ……ごめんなさい……」

「あぁ……別に良いけどさ。俺は、中身よりも罠の方に興味があるんだよね……。中身があれば、２人で分けても良いよ」

「ん……？　わたしは、要らないよ」

「えへへっ。わたしも、別にお金持ちにならなくても、今まで通りで幸せー♪」

　探索魔法で部屋を調べると、宝箱には異常は無い。魔力も感じられないし……。部屋に魔物や魔獣が潜んでもいないな……？

　宝箱の中身を転移させて目の前に出すと……大量の金貨、宝石やアクセサリー、豪華な短剣がドッサリと出てきた。

「わぁ……すごーい……！」

「わっ！　なにこれーすごーい♪　お金持ちになっちゃったねー」

「これって……本物かなぁ？」

　アリアが金貨を持ち、見つめて首を傾げて呟いた。

　俺も心配になり、財宝を収納して鑑定というか表示される品名を確認をした。すると、金貨や宝石名が表示されたので本物だな。

「本物だな……ミーシャ欲しかったんだろ？」

「い、要らないよー。ちょっと宝箱って聞いて、興奮しちゃったのー！　お金持ってても村じゃ……殆ど使えないしー。いらなーいっ」

「ユウくんが持ってて使ってよ。ユウくんが、見つけて回収したんだからっ」

「まぁ……欲しい物があったら言ってな。皆で、使おうな」

「はぁい♪」

「分かったー。お菓子が、欲しいー♪」

　ミーシャは、やっぱり財宝よりお菓子の方が良いらしい。アリアは、元々お金には不自由をしていないようで財宝に興味は無いらしい。俺も、今の暮らしが出来ていれば満足なので……まぁ〜無いよりは、あった方が良いとは思うけどね。

　ここで、シャルが居たら大騒ぎになっていただろうなぁ……山分けね！とか言って……村に帰って自慢気に場所を言うんだろうな……

「帰ったら、アリアに作ってもらおうな」

「うんっ♪」

　俺とミーシャに見つめられて、アリアが、嬉しそうに返事をした。

「うん。良いよぉ♪　 美味しかったんだぁ？　帰ったら作るねっ」

「美味しかったな」

「うん。美味しかったー。早く帰ろぉー」

　俺とミーシャが笑顔で返事をすると、アリアもニコニコの笑顔でご機嫌になった。

　多分、帰ってから作るお菓子のことを考えているんだろうな。俺も楽しみだな……

　アリアと顔を見合わせてニコッと微笑み合った。

　宝物を収納して本物の宝物があった理由を考えてみた。思い当たる理由は……ダンジョンの途中で、こんなに大量に宝物を発見したら……？　普通は、引き返すよな？　こんなに大量の宝物を背負って、ダンジョンを進む奴はいないだろ。でも戻るにしても、かなり重くて戻るのも一苦労するだろ。たとえ大人数が居たとして財宝を背負って進んでも魔物や、魔獣と戦闘になったら戦力は確実に低下してるしな。うん……それじゃ死ぬな。

　大量の財宝を背負って帰ったとしても財宝を担いでいるせいで、まともに戦える訳がない。それで死んだ冒険者の持ち物が、ダンジョンの宝物になって増えるって訳か。

　それか宝物の取り合いになって、仲間割れをして殺し合うかもな……

　俺達みたいに財宝に興味がないパーティは、居ないだろうし。そもそも財宝に興味のない奴は、冒険者なんてしてないよな。

　こんな一生豪遊しても使い切れない程の財宝を目の前にしたら、普通は取り合いは確実だろうな。

　幸いお金や宝物に無欲で無関心な３人組で助かって、希少な異次元収納があって全て回収しても重さも感じないし問題なく先に進める。

　そう考えると……財宝は、冒険者を引き寄せる撒き餌か。ダンジョンの維持、魔物や魔獣の増殖の為に冒険者の魔力でも必要なのかもなぁ……

「ちょっと、この部屋に入ってくるなー」

「ダメー！　もう宝物は、無いんでしょ？　危険だよーっ！」

「だめぇー！」

　二人は勘が良いらしく、この部屋の危険性に気付いたらしい。俺も、危険だと感じる。

「だからー宝物より、罠に興味があるんだって」

　２人が心配そうな表情をして、目を潤ませたので……諦めた。

「わ、分かったって……泣くなって……」

　２人が顔を見合わせてニコッ♡　と笑い合っていた。んっ？　何か企んでた？　違うか……俺が危険な事を諦めて、ホッとして笑顔になっただけか。それにしても、二人が仲良くて微笑ましくて見てるだけで癒やされるなぁ。

　先に進むことにして魔物が出ると、ミーシャが張り切り攻撃を仕掛け討伐をするが、不満そうな表情で戻ってきた。

「ん？　どうした？　討伐は、成功だろ？　ケガでもしたのかー？」

「ううん。地上と違って、狭くて上手く攻撃が出来なくてー」

　あぁ……そうだよなぁ。ミーシャは距離を保って、フェイントを入れながら懐へ潜り込んで、斬りつけるってのを基本としてるからな。自分の間合いが保てなくて、上手く攻撃が出来た気がしてないのか。

　ミーシャの間合いは、かなり広い。俊敏性、スタミナもかなりあるので、間合いを詰められても問題ない気がするんだけどな？　狭い場所を空間を逆に利用すれば、有利に戦えるんじゃないのか？　壁とか天井を使ってさ……

「それならさ……洞窟の床だけじゃなくて、壁や天井も使ってフェイントを入れられるんじゃないのか？　地上でも木を足場にして、攻撃をしてただろ？」

おおぉ♪　という表情をして早速、言われた事を試していた。

　シュッ シュッ シュッ シュ……ッ。と前方の空間で音だけが響いていた。これは……敵に回したくない感じだろうなぁ……。あらゆる方向から攻撃をされるだろうし、早すぎて目で追えないからな。