俺が「ほら?」と言い、片手で両目を隠しアリアの服を掴んで歩いた。勝手にライトが付いてきてるのを見て、アリアが唸っていた。
「むぅ……やっぱりユウくん、おかしいっ」
え? 怒ってると思い、慌ててアリアを見ると表情はニヤニヤしていた。
「ど、どうした?」
「えへへ……やっぱりユウくんは、スゴイって思ったのー」
「そうかな?」
おかしいなー? アニメでは、こんな感じだと思ったんだけどなー……? この方がラクで良いと思うんだけど。
「それに……明るさも明るすぎかなっ」
アリアに、明る過ぎと指摘をされた。
え? 明る過ぎかな……? 3人で歩いていて、暗いと足元が見えづらいかと思って、明るさの調整をしたんだけど……。あ、そうか夜行性の魔獣や魔物が逃げちゃったり、集まってきたり、襲い掛かってくるからか?
「暗くした方がよかった? 魔獣が逃げちゃうとか? 寄ってきちゃうとか?」
「違うよ。普通は、もっと暗いって話だよー」
「っていうか、ミーシャが帰ってこないな?」
探索魔法で探すと、ミーシャは少し先で既に討伐を始めてるようで、恐怖の感情は感じないどころか、ワクワク、楽しんでる感情の方が強い。
「あはは……。もう討伐を始めて楽しんでるみただな」
「え? はぁ。ユウくん……普通は位置を把握するだけだよ……それも秘密にしておいてよぉ〜。軍の隠密部隊が欲しがりそうな魔法だし……バリアとか結界とか……」
「あれ? バリアと結界の事を知ってたの?」
「え? この前の討伐の時に自分で「こっちにバリアを張ったから疲れたら休んでなー」って言ってたよ。そもそもその前から気付いてたけど……料理してる時に魔獣が近寄って来る気配が無かったし」
やっぱり前から気付いてたのか。アリアとミーシャには良いけどね。
「そっかー、まぁ。アリアとミーシャには、隠す気は無いから良いんだけどさ」
「他には、何を隠してるのぉ?」
そう言われてもなぁ……隠しているつもりは他には無いし。ちゃんとイメージが出来れば、何でも出来る……と思う。
「ん〜分からないなぁ……。自分でも把握してないかなぁ……」
「……そ、そうなんだ……それは、スゴイね」
さっきとは逆になり、アリアが俺の服を掴んで後を付いてきていた。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
「もう、いつもの場所に着くぞ」
「うん」
「あー! おっそーいっ♪ いっぱい倒しちゃったよー」
ライトの魔法で、そこら中に倒された魔獣や魔物が転がっていて照らし出され。ミーシャが楽しそうな表情で、声を掛けてきて駆け寄ってきた。
「靴の使い心地は?」
「すごいよ。これーキュッ! キュッ! って直ぐに止まれるし、方向転換も出来ちゃうっ!」
昼の討伐が終わって、魔獣や魔物の死体を地中に転移させて片付けたんだけどなぁ。また魔獣や魔物の山が、出来つつあった。
「使いづらくはないか?」
「ううん。最高だよー」
「わたしも、試して来るね」
「あー、わたしの方は、明るいの要らないよー! まぶしー! それキライー!」
「あ、悪いー」
ライトをアリアの方へ移動させた。
「アリア、気を付けてなー」
声を掛けている時には、すでにプレゼントをした杖を使っていた。杖を振り上げ魔物の頭部を、打撃をしていい音を出していた。杖は軽くて操りやすく、ヒュンッ! ヒュンッ! と音を立てて魔物に当てていた。
バコッ! バコッ! ゴツンッ! バキッ!
「はぁーい♪」
う、うわぁ……アリア……コワイって。
低級の魔獣は既に打撃のみで、討伐されていて地面に転がっていた。残っていた中級と上級の魔物は、付与されていたステータス異常の気絶の効果で、気を失い周りに倒れていた。
「これ、すごいねー♪ えっと……えいっ!」
杖を地面に着いた。すると魔石の少し上部に魔力の球が浮かび上がり、アリアの「えいっ!」という声がトリガーとなった。生き残っていた魔獣や魔物を目掛け、魔力の球体から複数の魔力弾が放たれて、生き残っていた魔物や魔獣にトドメを刺し討伐が完了をした。
「わーすごいねー♪ いつもなら2、3体が限度なのにー。一度に13体も倒せたー!」
「すごいねー。そんなのも隠してたの?」
多重魔法ってヤツかな? そんな魔法も使えたんだな。
「ううん。普通に使ってたよ? でも、難しいから余裕ある時にって感じかなぁ」
それって上級魔法の多重魔法だよね? 自分も上級魔法を使ってたんじゃん。ここじゃ俺と、ミーシャを信用しているから、隠さずに使ってくれているんだろうな。その方が気楽だし、討伐もラクになるし。
俺も対抗して別の多重魔法をって……と、思ったけど……目立つし周りに被害が出そうなので止めておいた。
「ユウくんは、討伐しないの?」
ん〜剣、双剣で討伐をしたいんだけど。それは、昼間に出来るしなー? 夜にしか出来ない事は無いかな……? ミーシャの使っている夜目が羨ましいんだよな。あれ、俺にも使えるようにならないかなぁ……。手には、魔力を集中させて魔力弾を放つだろ。目に魔力を集中させれば、使えちゃったり……? 目から魔力弾が放てたりして?
ふざけた事を考えていて、笑いを堪えていた。フッと暗闇で、闘っていたミーシャがよく見えるようになっている事に気付いた。
あれ? マジで見えるようになっちゃってるじゃん。すげぇー
ライトをアリアを追尾するように設定をし、双剣を出した。
「俺も、向こうに討伐に行ってくるな〜」
「え? 向こうって? え? どこ行くのー?」
俺が、ミーシャの居る方へ歩きだし向かった。それをアリアが、不安そうな表情をして聞いてきた。
「暗闇でも、討伐が出来るように練習してくる! 危なくなったら、休憩場所に避難してよー!」
「うぅ……分かったぁ!」
アリアが不満そうに、返事を返してきた。
「少しだけだからさ。待ってて」
「うん。少しねー? 少しだよー!?」
少し寂しそうな表情のアリアを置いて、シュッ……と移動をした。目標の魔獣の懐へ入り、双剣で斬り付けた。
昼間の魔獣や獣と比べると、夜になり種類が変わり夜行性といっても動きは鈍っていて反応が遅い。問題なくラクラクと斬れた。
強そうな魔物を見つけると、ミーシャと目で合図をして共闘をしてみた。
「俺は、右の足を斬るから! 左を宜しくなー」
「はぁい♪」
シュッ……と、消えて息を合わせて同時に斬り掛かった。後ろにあった木を足場にし、跳躍をして魔物を目掛け再び斬り掛かった。
「次は、俺が首。ミーシャは、好きな方の横腹を切り裂いちゃって!」
「はぁいっ」
シュッ……スパッ! スパーンッ!
「ミーシャ……。それ、やり過ぎー!! 胴体が、真っ二つじゃん!」
「だってー。これ良く斬れるんだもーんっ♪ それにユウちゃんと、一緒に討伐って面白いっ!♪」
「もぉー。ちょっとーっ! ねぇ〜!? 一人にしないでよー! そっち楽しそうー! ズルいよぉ〜!!」
俺達の話し声を聞いたアリアが、羨ましそうな表情をして、珍しく大きな声をだして話し掛けてきた。