中世ヨーロッパのロココ様式をコンセプトにしているらしいシャンデリアが吊り下がっている一室。いかにもなムード演出に一役買っている濃い紫色の光沢を放つシーツが目立つベッドの上。
馬鹿みたいに顔が整っているイケメンが、怪訝な顔を浮かべる私の目前で妖艶な笑みをぶら下げる。自分の眉間に寄っている皺が更に深い溝を刻む。胃がムカムカして胸焼けすら覚えた。
ラブホの癖に…否、ラブホだからか、歓楽街の喧騒がまるで聞こえてこない室内は、居心地が悪いまでの静寂に包まれている。
「先輩、何処をどうシテ欲しいですか?」
「……」
「えーまさか、遠慮とかしてますか?」
「……」
「心配しないで下さい。俺、上手ですから」
コテンと首を傾げて眼を細める相手に対し、心の底から吐き気を催す。もしもランプの魔人に何でも三つの願いを叶えて貰えたらどうする?なんて会話を誰しも一度はやった事があるだろう。
「どうしようかな~」と頭を抱えて本気で考えた青春時代もあったけれど、今なら迷わず即答できる気がする。しかも三つもは要らない。一つで構わない。だから魔人でも神様でも最悪悪魔でも良いから、どうか私の願いを聞いて下さい。
目前にいる
Prologue End