不気味な見た目であり、その巨大な体格を見たリサは怯えた声を出す。
俺はそんな怯えるリサを背に庇うように立つ。
これはもう戦うしかないだろう。
多分ここから逃げ切れるとは思えないし、戦わないことには前には進めない気がするからだ。
恐怖というものは一切感じない。
ただ気色が悪いと思うだけだ。
トレントは俺らを視界に捉えると、攻撃をしてくることもなくこちらをじーっと眺めている様子だ。
そして攻撃を仕掛けてくるわけでもなく、俺らから距離を取るように後ろに下がっている。
「あれ、何で後ろに下がって……」
「グルァァァァァァ!」
俺がそう呟いた瞬間、トレントは一気に間合いを詰め、拳を振り下ろしてきた。
「クロ君! 避けなさい!」
ユキがそう言うがもう遅い。
腕を振り上げようとしたトレントの動きに気を取られ反応が遅れてしまったのだ。
確実にやばいと思ったその時だ。
リサが蛇剣を構え、俺の前に立ち塞がる。
そしてトレントの拳を剣で受け止めた。
だがその衝撃は凄まじく、リサは吹き飛ばされ壁に激突する。
俺はリサが止めてくれた時間を無駄にはしない。
俺は詠唱を始め、魔法を繰り出す。
《炎槍 レベル2》
そう唱えると赤々しい魔法陣が目の前に出現し、炎の槍が発射される。
放たれた炎槍はトレントに一直線に向かっていく。
トレントは身を翻しそれを躱すが、それは予想通りの行動だった。
槍は空中を進むと、突然曲がるように右に曲がる。
避けたと思った攻撃がいきなり自分の方向に向かってきたため、トレントは驚いた反応を見せるが時すでに遅し。
その身で炎槍を受けると、苦しむように体をじたばたとさせる。
「はぁぁぁぁぁ!」
それと同時にユキは剣を振りかぶり、トレントの体を斬り裂く。
トレントは悲鳴を上げながら、体勢を崩す。その隙を俺は見逃さない。
《炎蛇 レベル2》
俺が詠唱をすると、頭上に真紅の魔法陣が展開される。
その次の瞬間、魔法陣から炎の蛇が顔を出した。
そのまま俺は手を下の方に下げるように振り下ろすと、炎蛇はトレントに向かって一直線に飛んでいく。
そしてトレントの体に巻きつくように絡みつき、そのまま噛み付くと一気に燃え盛った。
「す、凄い、これがクロ君の魔法……!」
ユキはそう言い、俺の戦いを目に焼き付けるように見ている。
トレントは炎蛇を振り解こうと悶えているが、なかなか離れることが出来ない。
そんなトレントに俺は魔法を続けざまに喰らわせる。
《炎槍》や《氷槍》の魔法を繰り返し打ち込み、一方的な戦いを展開していた。