女性は後ろで括られた長い黒髪を揺らしながらこちらを見つめている。
年齢は俺らと同じぐらいで落ち着いた印象を抱かせた。
そして顔がバレないように仮面をつけているようだ。
恐らく顔を隠している理由はバレないようにするためだろう。
俺がそんなことを考えていると、リサが口を開いた。
「もしかしてあなた……A級探索者のユキ?」
「ええ、そうよ」
リサがそう聞くとユキと呼ばれる女性は軽く頷いた。
A級探索者でありながら顔を隠しているのは珍しい。
《すげええユキだ》
《なんでここに!?》
《もしかして攻略の邪魔をしに来た感じか?》
《それはないでしょ、攻略の邪魔をするメリットがない》
《それもそうだな》
コメント欄ではユキを見てとても驚いている様子だ。
だがリサはユキに対して訝しげな表情を浮かべている。
「そう警戒しないで、私はあなた達の攻略を邪魔しに来たわけじゃないの」
するとユキが俺たちの心を読んだかのようにそんなことを言う。
まあユキの様子を見ていると俺たちを邪魔しに来たわけではなさそうだ。
「じゃあどうしてここにいるんだ?」
「私もあなた達と一緒に攻略を進めたいと思ってね」
そう言うとユキは俺の隣に立つ。
するとリサが慌てた様子で口を開いた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 私たち2人で攻略するつもりなんだから!」
「でも私は前衛を担当できるから役に立てるわよ」
「そ、それはそうだけど……」
確かにユキの言うことは一理ある。
実際俺の魔法だけで敵を倒すにも限界がある、そこをカバーできるのはありがたい話だ。
ユキが攻略を手伝ってくれるのならスムーズに進むだろう。
俺はユキの同行を認めようか悩んでいると、リサが先に口を開いた。
「ク、クロはどう思う? やっぱり私たち2人の方がいいよね?」
リサはどこか焦ったような様子で俺に意見を聞いてくる。
俺が今持っている考えとしては、ユキがいることで次の階層も楽になるというのが本音ではある。
「俺はユキの同行はありだと思ってる」
「え!? ど、どうして?」
「普通に俺らのダンジョン攻略が早く終わる、ユキは前衛をできる実力があるだろうしな」