「この扉ってなんだ?」
「うーん、多分この扉は転移系の魔法が付与されてる扉かも」
《え、これ大丈夫なの?》
《絶対何か罠あるパターンだ》
《怪しい扉! 怪しいですぞ?》
《まあでも、転移魔法が付与されている扉はあまり珍しくはないし大丈夫だろ》
《でもここ中級者向けのダンジョンだよね?》
コメント欄では視聴者たちがそんな話をしている。
どうやら転移魔法が付与された扉は珍しくないようだ。
俺もあまり聞いたことが無いため本当に危険なのか分からなかった。
だが中級者ダンジョンではあまり見ないらしく、視聴者たちが警戒するのもわかる気がする。
「どうするクロ?」
「ここまで来たし、とりあえず開けてみるか」
俺は扉を開けようと、ドアノブを捻り始める。
そして扉を開けようとした瞬間、黒い渦に吸い込まれるような感覚に襲われるのだった。
「ここって……どこだ?」
周囲を見渡すと、平原のような場所にいる事が分かる。
すると後ろの方から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「私初めてダンジョンで転移したよ! どんな魔物がいるのかなあ」
後ろを振り向くと、そこには俺と同じような反応をしたリサの姿があった。
恐らくだが、転移魔法の付与された扉を開け、この場所に飛ばされたという認識でいいのだろう。
《え、何ここ》
《基本的に中級者ダンジョンじゃあ転移は見ないよな、上級者ダンジョンでは転移は普通だけど》
《俺あまり上級者ダンジョンの動画見てないから、なにが起こってるのか全く分からん》
コメント欄を見てみても、俺たち同様困惑している様子が伺える。
だがそんな時、リサが何かに気づいたように声を上げた。
「な、何あれ!?」
俺はリサの指さす方向を見てみると、そこには巨大な蛇のような魔物が佇んでいるのが見える。
《え、何これ》
《でか! でかすぎるだろ!》
《やばいやばい、逃げて》
コメント欄は驚愕のコメントで溢れかえっており、視聴者たちも何事かと思い注目している。
そんな巨大蛇の名前は《パイソン》だ、俺が見る専だったときに動画で見たことがあるが、かなり厄介な魔物だ。
強力な毒を持ち、睨みによって相手を硬直させてしまう。
「パイソンはA級の魔物だよ! しかもそのレベルって、中級者ダンジョンでは滅多に現れないレベルのはずなんだけど!?」
「どうしてこんなところに……」
俺はパイソンを睨みつけながらそう呟くのだった。