俺らが今いる場所は第一階層。
このダンジョンの第一階層は洞窟のような構造になっており、道もそこまで入り組んでいるわけではない。
そしてモンスターもゴブリンやオークがメインで、たまにコボルトなども出現する。
そんなダンジョンの中を俺たちは歩いていた。
ちなみにリサが持っている武器は剣だ。
「結構武闘派なんだな」
「まあね~、やっぱり戦闘するなら剣を扱えるようにはなりたいじゃない?」
そんな事を言っていると、前方から3匹のゴブリンが接近してきた。
「よし、なら俺の魔法をお見せしよう」
「待ってました!」
リサは俺の魔法というと、目を輝かせながらこちらをみてくる。
俺は手を前に出しながら、魔法を唱える。
《炎槍》
すると俺の手のひらから3本の炎の槍が出現して、ゴブリンの腹部を貫いた。
そしてゴブリンたちは地面に倒れ、絶命する。
「すごい! しょうく……ねえ、何て呼んだらいい?」
そうだった、今は配信中だ。
視聴者が見ている前では、俺の呼び方に困るだろう。
俺は少し考えた末、《クロ》と名乗る事にした。
「俺の名前は『クロ』だ、改めてよろしくな、リサ」
「うん! でも一応リスナーに説明をいれておこうか」
そう言ってリサはカメラを俺の方に向ける。
そして口を開いた。
《私は今、新人探索者の《クロ》さんと探索をしています!》
そう配信で説明するリサ。
すると視聴者たちはコメント欄に《クロなんだ》や《本名教えてよー》などのコメントが書かれる。
「皆クロの事が知りたいんだね」
「はははは……」
俺は苦笑いを浮かべながら、ダンジョンの奥へと足を進める。
そしてしばらく歩いていると、俺たちは第二階層へと到達するのだった。
ここまでは罠などもなく、比較的安全に進むことが出来た。
だが二階層からはそうはいかないだろう。
二階層のモンスターはゴブリンやコボルトなどの低級モンスターが多い。
しかし1階よりも数が多く、集団で行動していることが多いので少し厄介だ。
「さっさと五階層まで行きたいし、一気に駆け抜けるか」
「え!? 今日五階層まで行くの!?」
俺は《炎風》を放ちながら、道を切り開く。
そしてリサもそれの後に続き、一緒に走った。
「ちょっと! これ以上はダッシュ禁止! 魔物が多いよ!」
「大丈夫だ、まだまだ魔力が残ってる」
俺は数秒に一本ペースで《炎槍》や《水槍》を放つ。
そして少ししてから一気に後ろのモンスターたちを殲滅する。
そんな俺を見て、リサは感嘆の声を上げた。
「す、すごい! 私でもこんなに早く進めないのに……」
こうしてリサが驚きのあまり棒立ちしていると、後ろからオークたちが迫ってきた。
《土壁》
俺は土魔法を使い、オークの行く手を阻んだ。
オークたちは壁に衝突して、絶命する。
その隙をつき、俺とリサはダンジョン内を駆け抜けた。
そして30分ほどダンジョンを駆け抜けると、俺らは五階層の入り口に到着した。
「嘘、本当に五階層まで来ちゃった……」
リサは驚きのあまりか、口をあんぐりと開けている。
配信の視聴者も驚いているのか、コメント欄は大盛り上がりだ。