【ゆめKo】いせスト実況やろうぜ【nakana】:ライブチャットフィード
[ふい]:祭りじゃー 素材祭りじゃー(09:11)
[騎士おん]:めっちゃレアじゃん これまでアマドラの全素材剥ぎ取れたヤツいたっけ(09:11)
[ふい]:はげはげはげぇええ(09:11)
[ゼウス]:呼んだか? なあ呼んだか?(09:11)
[太陽]:それより字面がきたない(09:11)
[騎士おん]:こんなところにNPC ……NPCだよな?(09:13)
[ふい]:コミュ障っぽい男キャラひとり 合ってるんじゃね? >NPC(09:13)
[ウィンダット]:お、ゆめKo武器げと(09:21)
[騎士おん]:なるほど交換イベだったか ステータスはよ(09:21)
[ウィンダット]:おやおや? こいつは(09:22)
[太陽]:微妙?(09:22)
[スターダスト]:なんかめっちゃシークレットかかってるっぽい これは大当たりか?(09:22)
[ふい]:まだ後ろにたくさんあるじゃん とれよ(09:23)
[騎士おん]:どうやら一回きりのイベントみたいだな……残念(09:23)
[ふい]:やっちゃえやっちゃえ(09:23)
[陰の影]:レアアイテムがあるだろ? じゃまなNPCがいるだろ? 殺るだろ? うぇーい(09:24)
[陰の影]:様式美じゃん(09:24)
[ふい]:>>陰の影 パリピでワロタ(09:24)
[ふい]:やりやがったwwwwwwwwww(09:26)
[騎士おん]:いやマジかよwwwひでぇ(09:26)
[陰の影]:wwwwww(09:26)
[陰の影]:やはり様式美だったw(09:26)
[スターダスト]:回復置いてる? え、まさか倒して復活させたらイベントループできると思ってる?(09:27)
[騎士おん]:そんな裏技はなかった けどごっそり手に入れてて草 鬼だわこいつら(09:27)
[ゼウス]:ゆめKoは鬼じゃねーぞ 沼だ!(09:27)
[ふい]:つまらん(09:27)
[陰の影]:早く雑魚で試してくんねーかな(09:29)
[陰の影]:www まさかの耐久1ww(09:39)
[ふい]:使えねえーww 売れ売れ ネコッタちゃんいただろ外に(09:40)
[スターダスト]:二束三文……けどこんなもん隠し持ってるなんて結構面白い あの地味なNPC(10:09)
[スターダスト]:もしかしたら実はすげえ武器すげぇキャラだったりして この地味キャラ氏、ちょっとフォローしとこ(10:09)
[スターダスト]:……復活するよね?(10:09)
[シャドウさん]:すごい地味さんがいると聞いて(10:12)
[ふい]:だれおまえ(10:12)
[シャドウさん]:すみません(10:12)
◇◆◇
「トキヤさんッ! トキヤさんッ! しっかり、しっかりしてください!」
半狂乱状態で、蝶の精霊少女は呼びかける。
彼女の目の前では、刻哉がうつ伏せの状態で倒れていた。
――ゆめKoに回復薬と引き換えでナイフ
彼女のパーティメンバーと思しき男チーターが、いきなり刻哉に斬りかかってきたのだ。
あまりの出来事に、フィステラは一瞬だが思考力を失った。
その間、男チーターもまた、ゆめKoと同じように回復薬の入った小瓶を刻哉の側に置く。
深手を負った刻哉は痙攣するばかりで動けない。喋れない。
その様子を見て取った男チーターは、一切表情を変えることなく、刻哉のナイフ擬きをごっそり抱えて、その場を去っていった。
フィステラが怒声を上げても、彼らは歯牙にもかけない。
精霊少女は『いせスト』を知らない。ゲームのイベントという概念を知らない。NPC、そしてモブの扱いを知らない。
ただただ彼女の目には、見ず知らずの意志なき人形が、理不尽に刻哉を傷つけ、努力の結晶を略奪したと映った。
「……血が止まらない。傷が深い」
フィステラは焦りのつぶやきを漏らす。周囲の蝶が、青や赤に明滅しながら不規則に舞う。
相手はチーター。その手に持っている武器も、現地の人間が逆立ちしても創り出せないような特別製だろう。
そんな武器で、無防備な人間が不意打ちを食らったら――。
刻哉は、フィステラの呼びかけに反応しない。
肉体が不自然な痙攣を起こしている。精霊少女の焦りはますます募る。
――同じだ。シイラさんのときと同じだ。
死ぬ。このままでは彼が死んでしまう。
「なにが『信じさせてあげる』だ」
涙が目尻から溢れる。
「なにが『あなたに世界を救わせてみせる』だ」
拳で頬を拭う。
「これじゃあ、あのときと一緒じゃないですか……!」
力のない自分が恨めしい。
けど今自分を
フィステラは動く。
隠し持っていた地粘材を千切り、小さくして自らの口に含む。
ゆめKoが渡してきた回復薬入りの瓶の中身を、同じく自分の口の中に傾けた。
そのまま、刻哉の唇に押し当てる。
かさついた感触がした。
回復薬とマナの塊を同時に喉へ流し込んだ。
「戻ってきて。トキヤさん」
息継ぎの代わりに、祈り。
フィステラは回復薬の瓶が一個、空になるまでそれを続けた。
――刻哉の呼吸は、戻らなかった。