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第9話 再びのスタンピード

「こんにちはっ、優馬さん。会いに来ちゃいましたっ」


 僕の家にやってきた、よく挨拶する女の人。今日も元気いっぱいだ。染めている金髪が印象的で、とても可愛らしい。

 ただ、自己紹介していないのに名前を知られている。ちょっと怖い。


 だけど、彼女も僕との関係を大事に思ってくれたのだと思うと、けっこう嬉しい。

 僕だけが、この人と接する時間を楽しんでいた訳じゃないんだと思えて。


「確かに僕は優馬だけど。なんで名前を知っているの?」


「あっ、それは気になりますよね。Cランクダンジョンを攻略した人なんだって、噂になってましたよっ」


「それは、あなたの地元でってこと?」


「ううん。もっと大きいと思いますっ。Cランクダンジョンが攻略されたのは、初めてらしいのでっ」


 そうなんだ、知らなかったな。

 もうちょっと、情報を集めた方が良いよね。もしかしたら、ダンジョン攻略の手段を知れるかもしれないし。


 いや、ダメだな。僕が初めてCランクダンジョンを攻略したんだもんね。

 つまり、これから先は僕が先駆者になるわけだ。誰かにやり方を教えてもらうことはできない。


 でも、これまでと同じことだ。今まで通りに戦っていくしかない。

 幸い、加藤さんという協力者ができた。僕は一人じゃない。


 分かっているよ。もともと愛梨がいるから一人ではなかったって。

 だけど、ダンジョン攻略の協力者は、加藤さんが初めてだから。


 目の前にいる彼女も含めて、ダンジョンがきっかけの出会いもある。

 怖かったし、苦しかったけれど、良かったこともあるんだ。


 愛梨がご飯を作って待っていてくれることも、新しい出会いができたことも。

 これから先だって、大切な思い出になってくれるはずだ。


「だから、名前まで知っていたんだね。ところで、あなたの名前は?」


夏鈴かりんですっ。優馬さんのおかげで、死んだ両親も報われたと思いますっ」


 僕のおかげということは、ダンジョンに関わっている。

 つまり、ダンジョン攻略に失敗したか、スタンピードで死んだか。


 どちらにせよ、他人事じゃない。

 僕はダンジョンで死んでもおかしくないし、愛梨だってスタンピードで死んでいたかもしれない。


 なんというか、夏鈴さんは他人のような気がしないな。

 僕がたどるかもしれなかった可能性を、どこかで見ているかのような。


 愛梨が死んでいたとして、僕はダンジョンを攻略した人に感謝できただろうか。分からない。

 だけど、絶望していたことは想像できる。きっと、夏鈴さんだって。


 だからかな。何もかもを失った僕の姿を思い描いているのかもしれない。

 つまりは、自分勝手な共感ではある。だけど、悪い気分じゃないな。


「よろしくね、夏鈴さん。ご両親が亡くなったのなら、大変だよね。できることがあれば、言ってほしい」


 自分でもバカバカしいことを言っていると思う。ただ挨拶していただけの関係の人に、何を。

 きっと、夏鈴さんだって困ってしまうよね。でも、なぜか口から言葉が出てきた。


 まあ、頼ってくれるのなら嬉しいことではあるけれど。

 ほとんど他人とはいえ、少しは親しみを感じている人だから。力になれたらって。


 夏鈴さんは首を横に振って、笑顔を向けてくれる。

 良かった。機嫌を損ねるような物言いではなかったみたいだ。


「大丈夫ですっ。一応、優馬さんと同じ高校生なんですっ。お金にも困っていませんっ」


 高校生だとなぜ大丈夫なのかは分からない。

 だけど、お金に困っていないのなら、そこまで心配はいらないか。


 ああ、そうか。ちゃんと高校に通えてるよってことか。

 それなら、きっと大丈夫だよね。近くのダンジョンも無くなったことだし。


「そうなんだ。じゃあ、あまり心配しなくても良さそうだね」


「はいっ。むしろ、優馬さんの方が大変だと思いますっ。両親の仇を討ってくれたのは嬉しいですけど、だからこそ、死なないでくださいっ」


「もちろんだよ。僕には帰りを待ってくれる人がいるんだから」


「なら、その人のためにも、生きてくださいねっ。私の方こそ、できることがあったら言ってくださいっ」


「心配しなくていいよ。僕だって、生きるために全力だから」


 それに、ダンジョンに他の人を巻き込みたくない。

 夏鈴さんは普通に生きているんだから、わざわざ危険なことをしなくて良いと思う。


 本気で心配してくれていることは伝わるけれど、だからこそ断るんだ。

 僕を大切にしてくれる人は、失いたくないから。


「じゃあ、今日は行きますねっ。また、会いましょう」


「分かった。また今度ね。これからも、よろしくね」


「もちろんですっ。優馬さんと会えて、本当に良かった」


 その日は夏鈴さんと別れて。

 ときどき、夏鈴さんは僕に会いに来てくれるようになった。


「今日は大変だったよ。別のCランクダンジョンに行ったんだけど、幽霊が居てさ」


「優馬さん、幽霊が苦手だったんですねっ。可愛いですっ」


「それで、スタングレネードを投げたら倒せたんだけどね。持ってなかったらと思うと恐ろしいよ」


「ふふっ、それは大変でしたね。他の倒し方はあったんですか?」


 幽霊が出てきて、冷静じゃなかったからな。

 正直、もっとうまい対処もあったかもしれない。


 今後、幽霊を克服しておかないといけないよね。

 もう一度敵として現れる可能性だってあるんだから。


 めちゃくちゃ怖い。でも、ホラー映画なんかで耐性をつけたほうが良いかも。


「まだ分からないかな。剣が通じてくれるなら、楽なんだけどね」


「でも、もう攻略しちゃったんですよね? ふふっ、なら、出会わなくてすみますね」


 最近は、Cランクダンジョンも一日で攻略できることが増えてきた。

 だから、そろそろBランクダンジョンに挑んでも良いのかもしれないな。


「そうだね。できれば、もう二度と出会いたくないかな」


「幽霊を怖がる優馬さん、見てみたかったですっ。そろそろ時間ですね。では、また」


 夏鈴さんとは、いつも少し会話をするだけだ。

 それだけでも、ずいぶんと心が落ち着いていく感覚があった。


 やっぱり、ダンジョンの攻略を素直に話せるのが大きいんだと思う。

 今でも、クラスメイトや家族には黙ったままだからね。


 もしかしたら、知っていて気づかないフリをしてくれているのかもしれないけれど。

 どちらにせよ、ダンジョンについてあまり触れ回るつもりはない。


 それから、家に入って愛梨と会話をしていく。

 いつも、夏鈴さんは家の前で待ってくれているんだよね。僕の家には入ろうとしない。


「おかえり、優馬君。今日のご飯、もうできてるよ」


「ありがとう。今日は何かな?」


「とんかつと野菜炒めと、味噌汁とさばの味噌煮だよ」


「分かった。楽しみだな」


「うん。優馬君なら、絶対に美味しいって思うはずだよ」


 その言葉通り、確かに美味しかった。

 とんかつは衣がサクサクで肉は柔らかい。野菜炒めはどれもよく火が通っている。

 味噌汁はホッとする味で、さばの味噌煮は味がしっかりと染みていた。


「美味しかったよ。いつも、大変だよね。僕に何かできることはないかな?」


「ううん。余計な負担を増やさないでほしいかな。優馬君は弱いんだから、すぐに死んじゃいそうで怖いよ」


「いつも、ごめんね。心配かけているよね」


「否定はしないけどね。でも、私のためだって分かっているから」


 愛梨は少し悲しそうだ。こんな顔をさせてまで、戦う意味はあるのだろうか。

 いや、ある。僕が一番ダンジョン攻略を進めているんだ。


 万が一スタンピードが起きた時にも、愛梨を守れるように。

 そして、できればSランクダンジョンを攻略して、ダンジョンそのものを無くせるように。


「絶対、愛梨の所に帰ってくるから。それだけは約束する」


「お願いだよ。優馬君がいないと、私はどうにかなっちゃうから。それだけは分かるんだ」


 前から、愛梨は僕が死んだら死ぬと言っていた。

 今回の言葉は、前進したのかどうかのか。


 僕が死んだ後でも、愛梨が幸せに生きてくれる方がいい。

 でも、今の感じだと難しいよね。やっぱり、死ねない。


「大丈夫。愛梨が待っていてくれる限り、何があっても死んだりしないよ」


「うん。信じてるから。ずっと、私のそばに居てくれるって」


 それからは、いつものように過ごしていった。

 愛梨は食事の後には帰っていき、僕は一人の部屋を広く感じる。いつも通りだ。


 やっぱり、僕は一人では生きていけない。

 だからこそ、愛梨のために頑張っていくんだ。改めて、決意を固めた。


 そして次の日。Bランクダンジョンへと向かっていると、通信機から連絡が入った。


「優馬君、聞こえるか? スタンピードだ! 明夜町にモンスターが!」


 明夜町は、加藤さんと夏鈴さんが住んでいる町。

 つまり、夏鈴さんも危ない? いや、愛梨はどうなっている。

 僕はどうすべきか。そもそも、移動して間に合うのか。


 とにかく、状況を整理しないと。何が起きているのか分からないと、判断ができない。


「他の町ではどうなっているんですか!?」


「今のところ、同時多発的なスタンピードでは無いようだ。わずかな救いだな」


「分かりました。どのダンジョンからモンスターが現れているか、分かりますか?」


「済まないが、まだだ。できれば、すぐに移動できるようにしておいてほしい」


「申し訳ないですけど、状況次第です。加藤さんは大丈夫ですか?」


「今のところは、問題ない。とりあえず、状況が変わったら連絡する」


 そのまま通信が切れていく。加藤さんと繋がっていて良かった。

 もし今の情報が無かったら、何もできないところだった。


 とりあえず、愛梨に連絡しよう。

 様子を確認して、それから動きを決めよう。


 電話をかけると、すぐに出てくれた。


「優馬君、どうしたの?」


 焦っている様子はない。なら、今は安全なのだろう。

 最低でも、すでに死んでいるわけではない。思わず息がこぼれる。


「スタンピードが起きたみたいなんだ。いざとなったら、すぐに逃げられるようにしておいて」


「分かった。優馬君、頑張ってね」


 そのまま電話は切られていった。

 とりあえず、愛梨は無事みたいだ。ありがたい。


 なら、明夜町に向かおう。きっと、いつも出会う場所の近くだ。


 僕は全力で走って、夏鈴さんを探していく。

 車を追い抜かすことすらできて、僕はバケモノなのだと実感した。

 でも、今は都合がいい。これなら、夏鈴さんを助けられるかもしれない。


 駆け抜けていく中で、夏鈴さんの姿を見つける。今にも攻撃されてしまいそうだ。

 赤くなったスライム、黒くなったゴブリン、真っ白なゾンビ。

 どんな能力かは分からないけれど、とにかく夏鈴さんを助けないと。


 全力で剣を振っていく。まずスライムを上から叩き切る。

 続いてゴブリンの首をはねる。その次に、ゾンビを縦に切り裂いていく。


「夏鈴さん、大丈夫!?」


「はいっ、優馬さんのおかげですっ」


 怪我らしい怪我は見当たらない。だから、本当に無事に見える。

 ほっと一息つきたいところだったけど、まだまだ敵がやってくる。


「夏鈴さん、僕の後ろにいて。必ず守ってみせるから」


「はいっ。信じていますからっ。いざとなったら、囮にしてくださいっ」


「そんなことはしないよ。安全な場所にいて。今のところは、僕の後ろで」


 また敵がたくさん出てくる。攻撃を受けないように気をつけているんだけど、何か違う。

 スライムを切り、ゴブリンを断ち、ゾンビを叩き潰す。


 そんな事をしている中で、僕を無視して夏鈴さんへと向かう敵がいた。

 慌てて切り捨てるけれど、違和感の正体に気がついた。

 そうだ。モンスターは僕よりも夏鈴さんを優先的に狙っている。


「夏鈴さん、絶対に僕から離れないで! なぜかは知らないけど、敵は夏鈴さんを目標にしている!」


「分かりましたっ。絶対に邪魔にはなりませんよ。こっちですっ」


 モンスターの前に姿を表す夏鈴さん。

 僕の考えは正しいのだと証明するように、スライムは突進し、ゴブリンは棒を振り下ろし、ゾンビはしがみつこうとする。

 夏鈴さんに当てないように、必死で剣を振っていく。


 いつになったらスタンピードは終わるんだろう。このままじゃ、ジリ貧だ。

 きっと、夏鈴さん一人に人員は割けない。

 むしろ、たった一人の犠牲で済むのならなんて言われかねない。

 でも、ダメだ。夏鈴さんを死なせる訳にはいかない。


 夏鈴さんが囮になってくれているおかげで、僕はずいぶんと楽ができている。

 何も考えずに剣を叩きつけていくだけでいいから。

 だけど、本音を言えば危ないことはしてほしくない。


 言葉を出すのも危ない気がするから、黙っているけれど。

 うっかり夏鈴さんの集中力が切れたらおしまいだから。


 夏鈴さんを守るために、敵を倒し続けていく。

 だけど、モンスターは減る気配を見せない。

 このままだと、本当に夏鈴さんが危ない。ひいては、僕の命だって。


 諦めるか? そうすれば、楽になれる。

 そんな考えが浮かんだけど、全力で否定する。


 僕にとっては愛梨が一番大切だ。

 だけど、夏鈴さんだって見捨てていい相手じゃない。

 僕を頼ってくれる人なんだ。信じてくれる人なんだ。

 そして、僕だけに負担をかけないようにしてくれる人でもあるんだ。


 ただ、今の状況は苦しい。

 前回のスタンピードは、スライム一体を倒すだけだった。

 今回は、いつ終わるのかも分からない。


 疲労が溜まっていくのを実感する。

 夏鈴さんを見捨てないまま、いつまで耐えられる?

 それに、僕だけじゃない。囮になっている夏鈴さんは、いつ限界を迎える?


 そんな恐れを振り払いながら、モンスターを倒し続ける。

 一体なぜ、夏鈴さんが襲われているのだろう。

 いや、今は考えている場合じゃない。

 とにかく、夏鈴さんの命を第一にしないと。


 焦りが襲いかかってくる中、ずっと戦い続ける。

 夏鈴さんが死んでしまえば、僕の日常がひとつ終わってしまう。

 そんな未来は嫌だから、頑張っている。 

 でも、本当に乗り越えられる状況なのか?

 不安に負けそうになりながら戦っていると、通信機から声が聞こえた。


「優馬君、モンスターの発生源が分かった。君の向かっていたBランクダンジョンだ」


「分かりました、そこに向かえば良いんですね」


 ハンズフリーの通信機で助かった。手に持って戦える状況ではないからね。

 とにかく、今の状況で耐え続けるのは厳しい。だったら、元を断ちに行くだけだ。

 けれど、夏鈴さんを見捨てることもできない。


 どうすれば良い。何が正解なんだ。


「優馬さん、私も行きますっ。これでも、ダンジョンに潜っていたこともあるんですからっ」


「そこに人がいるのか? 状況はどうなっている?」


「なぜか彼女が襲われているので、ダンジョンに向かうか悩んでいたんです」


「なるほど。確かに、君がダンジョンへ向かえば、モンスターに襲われる人は危うい。だから一緒にか」


「そうですっ。優馬さんなら、必ず私を守ってくれますっ」


「頑張ってくれ。私は君たちに期待するしかできない。武運を祈る」


 ダンジョンの場所は分かっているので、夏鈴さんと一緒に走っていく。

 驚くべきことに、僕と大きな速度の差はなかった。

 僕は敵を倒しながらとはいえ、すごい身体能力だ。

 なんで僕を応援していたのか分からないくらい、ダンジョンでレベルアップしている。


 敵を切り続けながら走ってしばらく。Bランクダンジョンに到着した。

 門番の存在もなく、まっすぐに門に入っていくことができた。


 さあ、ここからだ。初めてのBランクダンジョンなのに、一発で攻略しないといけない。

 それも、夏鈴さんを守りながら。とてつもない難題だ。

 だけど、絶対に諦めたりしない。ここまで来たんだ。負けてたまるか。


 ダンジョンの中は森になっていて、とにかく動きづらい。

 木の枝や草、ツルのようなもの、何もかもが動きを妨害してくる。

 にもかかわらず、スライムもゴブリンもゾンビも、手足を取られないかのように進んでくる。


 ただ、良い事もある。壁にできるものが多いので、夏鈴さんを守りやすい。

 敵の攻撃してくる位置を限定できるので、そこにだけ注意していれば良いのだ。

 木が邪魔で攻撃できない敵を、剣を叩きつけて切る。

 そうしていくことで、僕はそこまで疲れずに進んでいくことができた。


 もうひとつの要因として、防御を考えなくて良いことがある。

 理由は分からないけど、とにかく敵は夏鈴さんばかりを狙う。

 だからこそ、僕は攻撃に全力を注ぎ込むことができた。


「優馬さん、もっと敵を引き付けますねっ」


 夏鈴さんはわざわざ自分からスキをさらして、だからこそモンスターも攻撃していく。

 その後ろや横から、僕はモンスターに斬りかかる。

 楽に倒せはするのだけれど、夏鈴さんが心配だ。

 万が一にも僕が失敗してしまえば、それだけで危ないのだから。


 だけど、夏鈴さんがいないと、このダンジョンは攻略できない。そんな気がする。

 どのモンスターも動きが早くて、僕だけだったら囲まれていただろう。

 後ろに気を配らなくて良いことが、どれだけ戦いを楽にしてくれるか。


 そのまま順調に攻略を進めていき、いよいよボスと戦うことになった。

 真っ黒で大きい犬に、より鋭い牙と、大きな角が生えている。

 勢いよく突進してくるので、夏鈴さんの手を取って避ける。

 すると、角に当たった木が大きな音を立てて倒れていった。


 ボスはそのまま向きを変えて、また夏鈴さんへと向かう。

 手を引っ張ろうとすると、振り払われた。


「私はなんとかよけてみせますっ。ですから、優馬さんは攻撃を!」


 また手を引っ張ろうとすれば、今度も振り払われるだろう。

 そして、それが夏鈴さんのスキになってしまう。なら、大丈夫だと信じるしかない。

 そう考えて、僕は全身全霊でボスに攻撃を仕掛けていった。


 結果として、夏鈴さんは無傷のまま敵を倒すことができた。

 速度では劣っているのに、最低限の動きで攻撃を避けていた。

 彼女はときおり足払いを仕掛けて動きを妨害していたりして、僕よりも技術では上だったかもしれない。


「優馬さん、素敵でしたっ。あなたのおかげで、命拾いしましたよっ」


「良かったよ、夏鈴さんが無事で。じゃあ、帰ろうか」


「そうですねっ。行きましょうっ」


 結局、今回の事件では愛梨も夏鈴さんも、加藤さんも無事だった。

 だけど、いつ次のスタンピードが起きるかなんて分からない。あらためて実感した。

 できるだけ早く、Sランクダンジョンを攻略しないと。

 まずは、次のAランクダンジョンだ。しっかりと、決意を固めた。

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