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第6話 高揚と安心

 優馬は初めてのダンジョンを攻略して、それでもあまり自惚れていなかった。

 うんうん。私の優馬は、やっぱり違うよね。少し成果を出したくらいで、自分を天才だなんて思ったりしない。


 同時に、慎重ではあるけれど、勇気を持ってダンジョンに踏み込むことができる。

 私の思い描いていたヒーローって感じで、相変わらず最高だ。


 今の優馬が挑んでいるダンジョンは、まだEランク。

 すぐにDランクに挑まないあたり、ちゃんとしているよね。


 本当は、一日でも早く解放されたいはず。

 私と普通に過ごす日常を、待ち望んでいるはず。

 だけど、それでも自分を制御している。

 素晴らしい限りだよ。あまりにもカッコいい。


 自分の感情に向き合って、それでも私を生かすために耐え忍ぶ。

 優馬が死んだら、私が死ぬ。本音だと理解してくれているのは感じるから。

 そんな優馬の帰りを待つのは、とても楽しい。

 私の顔を見ると、安心したって顔をしてくれるのが特に良い。


 だから、優馬の活躍を覗き見ながら、食事の用意をしていく。

 彼の両親は、割と優馬を放っておいている。

 だから、私が面倒を見ると言うと、安心したような顔をした。


 正直に言って、この両親から優馬が生まれたなんて、とても信じられない。

 トンビが鷹を生むなんてものじゃない。だからこそ、よりヒーローとしての適性を感じる。


 恵まれていない環境でも、それでも立ち上がる。そして、戦いに挑む。

 なんて素敵なんだろうね。優馬の高潔さとでも呼べるものは、とても稀有だから。

 だって、愛されて育っていないのに、他者を気遣えるんだから。

 前世でも、今世でも、優馬以外に知らないくらいの人格だ。


 今思えば、私を犬から助けた時の優馬は、理由なんて持ち合わせていなかったはずだ。

 現在は好意を持ってくれているのが明らかだ。

 だけど、当時は私ともただの友達くらいでしかなかった。私からも、大して良い感情を向けていなかった。


 ああ、優馬の素晴らしさは留まるところを知らないね。

 私が見た勇気は、本当に尊いものだったと改めて理解できたよ。


 そんな優馬に私の料理を食べてもらう瞬間は、とても良い。

 今日、帰ってくる瞬間が今から待ち遠しいくらいに。


 まだダンジョンに入ったばかりだからね。

 アンデッド系のダンジョンに仕上がっているけれど、どんな反応をするかな。


 優馬は、心霊系のホラーは苦手みたいだけれど。

 今のところは、幽霊のような敵はぶつけないでおいてあげる。


 というか、優馬は対抗手段を持っていないからね。

 特別な武器とか、魔法とか、そういうものがないのなら、倒せるのはおかしいだろう。


 そうなると、まだまだ先になりそうではある。

 優馬に魔法を覚えさせるにしろ、エンチャントの付いた武器を与えるにしろ。


 結局、いつも通りのダンジョンとして攻略しているみたいだった。

 当たり前か。普通のモンスターと、そこまで変わらないからね。

 ただ、余裕ができてきたみたいで、人助けをしている瞬間もある。

 根本的には、優馬はお人好しだよね。身の程をわきまえているだけで。


 自分の命を危険にさらしてまで、誰かを助けようとしない。

 誰よりも大切な私の命もかかっていると、しっかり理解しているから。


 やっぱり、私は優馬のヒロインだ。気分が良いな。

 今の段階でも、最高のヒーローになるとしか思えない優馬だからね。

 私だって、特別な女だと言って良い。優馬と出会わなければ、TS転生した私は、きっと誰とも結ばれなかったし。


 優馬の動きを見ながら、料理を仕上げるタイミングを考えていく。

 そろそろボスみたいだから、下味くらいは付けておかないとね。

 唐揚げに味を染み込ませるには、それなりに時間がかかるから。


 鶏肉を揉み込みながら、優馬の立ち回りを眺めていく。

 今のところは、あまり上手とは言えないかな。


 とはいえ、当然のことだ。最近まで、戦うことを知らなかった人間なんだから。

 落ち着いて戦えるだけでも、相当な素質と言って良いはず。


 それでも、所詮はEランクダンジョンのボスだ。簡単に倒せていた。

 優馬も自分の緩みに対策したそうだし、これは次に行くかもね。


 なんというか、ちょっと調子に乗った顔をしてから、すぐに顔をしかめていたから。

 私の見ていない所でも、可愛い顔をしてくれるんだ。眺め甲斐があるよね。


 まあいい。これから帰ってくるから、出来上がる時間は簡単に調整できる。

 電車から降りたタイミングで火を入れ始めれば良いよね。


 思惑通りに、料理が完成した頃に優馬が帰ってきた。

 当然、笑顔で出迎えてあげる。


「おかえりなさい、優馬君。今日も大きなケガが無さそうで、良かった。ご飯できているよ」


 そう言うと、すぐに頬を緩めてくれる。ちょろい。

 でも、私にしか見せない顔なんだよね。私にだけちょろいとか、最高かな?


「ありがとう。今日は何かな? 愛梨のご飯はいつも美味しいから、楽しみだよ」


 優馬はいつも美味しいと言ってくれるから、作り甲斐がある。

 顔を見ているだけでも、とても嬉しそうではあるけどね。

 それでも、実際に言葉があると、やっぱり違うんだ。


「嬉しいな。優馬君のことを考えて、腕によりをかけて作ったんだからね」


 優馬に喜んでほしくて、優馬の血肉を私の料理で構成したくて、手間をかけた。

 私の願いはどちらも叶っていて、とても気分が高揚するんだよね。


 勢いよく美味しそうに食べていて、とても満たされていく。

 本当に幸せだよ。優馬との生活は。いつだって穏やかな気持ちになれる。

 心がじんわり温かくて、いつまでも浸っていたいくらい。


「とっても美味しいよ、愛梨。いつもありがとう」


 相変わらず、感謝の言葉をくれる。

 こういう純朴なところも、ヒーローとしての素質だよね。

 誰から見ても輝いていたら、ちょっと違うから。


「当たり前のことだよ。優馬君は命をかけているんだから。支えるくらいはね」


「愛梨が待ってくれていると思うだけで、力が湧いてくるんだ」


 なら、私はヒロインとしてちゃんとできている。

 変える場所を守る役割は、大切な仕事だからね。

 ヒーローが戦うための活力は、無尽蔵じゃないんだから。


 私がいることで、優馬は輝きを増す。

 それが実感できることで、ちょっと興奮してくる。

 変な顔をしないように、気をつけておかないとね。


 きっと、私の顔が歪んだくらいでは、優馬は私を嫌わない。

 だけど、優馬の前では最高に可愛い私で居たいからね。


「それは良かった。ずっと、優馬君のことを待っているからね」


「うん。そろそろ、Dランクダンジョンに挑もうと思うんだ。そろそろ、成長が頭打ちだから」


 そういう風に作ったからね。ゲームバランスは大切だ。

 絶対に勝てない敵なんて用意していないし、レベル上げだけで攻略できるようにもしていない。

 強くなったことで楽々攻略なんて、ヒーローのやることじゃないんだよ。


 優馬は相変わらず私好みだ。

 ありもしない希望にすがって、レベル上げを追求もしない。

 ちょっと強くなっただけで満足して、停滞したりもしない。


 確かに一歩一歩進んでいって、それでも足りない時に勇気を振り絞る。

 勝てない敵に挑むのなら、私を守るため。

 それ以外の状況なら、ちゃんと勝ち目を見出してから戦う。流石だよ。


「まずは様子見をしてね。危ないことはしてほしくないからね」


「分かった。愛梨の所に帰ってくるために、慎重にやるよ」


 優馬の心の奥底に、私は強く刻まれている。

 それを感じるたびに、幸福感が大きくなる。

 大好きな相手の、誰よりも大切な存在でいられること。前世では味わえなかったものだよ。


「お願い。優馬君の居ない人生に、意味なんて無いんだからね」


 本当にね。優馬が見せてくれた、キラキラしたもの。

 それがあったからこそ、生きていたいと思えた。


 ただチートを持て余すだけの退屈な日々は、私の心を追い詰めていたから。

 それなのに、いざという時にはチートを使えなかった。

 だけど、優馬が私を助けてくれた。どんな未来が待っていても、絶対に忘れたりしない。


「愛梨と一緒に居たいから、頑張るね。愛梨には幸せになってほしいから」


「優馬君なら、必ず私を幸せにしてくれるよ。だから、生きて帰ってきてね」


 すでに私は幸せだから。これから、もっと幸せになれるから。

 それだけは、確定していると言って良い。優馬が生きているというだけでね。


「もちろんだよ。愛梨のご飯を食べたい。愛梨の笑顔を見たい。そのために」


 私は優馬の希望になれている。優馬が私の希望であるように。

 やっぱり、私達は運命で結ばれているんだ。


「嬉しいよ。優馬君を任せてくれたご両親には、感謝しないとね」


 感謝と恨み、両方がある。

 優馬を軽く見ていることは許せない。

 それでも、私と優馬を出会わせてくれたこと、私に優馬の時間をくれたこと、それだけは恩だと思うから。


「これからも、ダンジョンで戦っていく。怖くはあるけれど。でも、負けないよ」


「優馬君なら、きっと大丈夫。私のヒーローなんだからね」


「ありがとう。必ず、愛梨の期待に応えてみせるよ」


「うん。疲れたら、いつでも言ってね。全力で癒やしてあげるから」


 どうしても勇気が出ないのなら、体を使っても良い。

 結ばれるのは、最後の最後が理想だけどね。


 だから、もうちょっと軽いところからの方が、私の望みには合っている。

 でも、優馬のことが一番大事だから。私の体を捧げるくらいで元気になってくれるのなら、軽いものだ。


 だけど、きっと優馬は折れたりしない。私の前では、カッコつけたがりだから。

 そんなところも素敵なんだけどね。弱さを知っているからこその感情だよ。


 そして、次の日。優馬はDランクダンジョンへと挑んでいく。


「じゃあ、今日も待っているからね、優馬君」


 私が送り出すと、笑顔で返してくれる。

 優馬は顔が良いから、とても似合っているんだよね。優しい微笑みって感じで。


 今回は、あまり厳しい試練ではないかな。少しずつ段階を踏んでいかないとね。

 優馬の成長だって、ちょっと戦ったくらいで一気に伸びるものじゃないから。


 ダンジョン入口の門へと向かうと、国が設定した受付が対応する。

 一応、ちゃんと攻略できる人間は大事にしたいみたいだ。

 国の思惑がどうであれ、私は優馬以外はどうでもいいけれど。


 身分証明証として作られたギルドカード。

 そこには、ダンジョン攻略の実績を乗せることにしたみたいだ。


 確かに合理的ではあるよね。誰が期待できるのか、ひと目でわかる。

 実際に、今回の受付は、実績を積み重ねた優馬に注目しているみたい。


 私だけのヒーローでなくなるかもしれないことは、少し不満だけれど。

 それでも、優馬がヒーローとして認められるのは、悪いことではない。


「もう、いくつものダンジョンを攻略しているんですね。お願いします。できるだけ早く、このダンジョンを攻略してください。ここは私の故郷なんです」


「努力はしますけど、期待はしないでくださいね。僕は僕の命を優先します」


「当たり前です。こんな若い子に、命をかけさせて情けない限りですが。それでも、全てを押し付けないだけの良心はあります」


 今回の優馬は、ダンジョンの攻略を頼まれている。

 それでも、私を優先してくれた。承認欲求の為なら、受けた方が良いんだけどね。


 ただ命が惜しいから出たセリフじゃないって、私には分かる。

 だからこそ、素敵なんだよね。誰かのために命を大切にする。難しいことだから。


 そのまま会話を終わらせ、優馬はダンジョンへと入っていく。

 おおよそのDランクダンジョンにおけるコンセプトは、モンスターと正面から挑むこと。


 苦手な敵から逃げることはできないし、楽な敵だけ倒すこともできない。

 つまり、確かな戦闘能力が求められるんだよね。


 とは言っても、まだまだ弱い敵ではあるけれど。

 ゲームのように、パターン構築だけで倒せる敵だ。慣れれば楽勝だと思う。


 実際、優馬はさほど苦戦せずに次々と進んでいく。

 鎧型の敵も、スライムの強化版も、四足歩行の獣みたいな敵も。


 いろいろと用意したけれど、強くなった優馬にとっては楽だったみたい。

 思ったより、成長しているな。ステータス的には、敵の攻撃を一度や二度受けても大丈夫。


 だけど、優馬は命がかかっている訳だからね。攻撃を受けずに進んでいる。

 このまま進むようなら、一回くらいは必中の攻撃を用意しても良いかもね。


 まあ、しばらくは先の話だ。ちょっと、邪魔が入りそうな気配もあるから。

 刀也が同じダンジョンに入っている。万が一優馬が追い詰められていると、面倒だ。

 優馬をいじめていただけあって、敵視しているのは明らかだからね。


 だから、今回のダンジョンではあまり優馬を追い込めない。

 刀也が優馬を助けるなんて、ありえないからね。何なら妨害してもおかしくない。


 ということで、優馬は順調にボスまで進んでいった。骸骨剣士だ。一応、剣技を操る。

 優馬は特に苦戦することもなく、しっかりとボスを倒していく。わざと弱体化はさせていないから、確かな実力だ。


 だけど、そんな優馬に刀也が襲いかかった。

 ナイフを振り回して、攻撃していく。


「何をするんだ!?」


「お前が死んでくれれば、愛梨は俺のものになるんだ。ダンジョンなら、死んでも犯罪にならないよな?」


 何をバカなことを。刀也程度の力では、私をモノにはできない。

 それに、あんな品性のない男を私が好きになるはずもない。


 どんな未来であっても、刀也と私が結ばれるなんてありえないことだ。

 それに、ステータスを見る限りでは、優馬に傷すら付けられないよ。


 だけど、優馬はわざわざ刀也を殺さないように立ち回っている。

 申し訳ないけれど、その努力は無駄になるよ。私が刀也を殺すからね。


 ダンジョン内のモンスターは、私が好きに配置することができる。

 つまり、難易度なんて自在に設定できるんだ。


 刀也がこれから先もダンジョンに挑むのなら、絶対に死ぬ設定にしてあげる。

 何をしても無駄で、じわじわとなぶり殺しにされる苦しみ。それを味わってもらうよ。


 どうやって刀也を殺そうか考えていると、戦いはゆっくりと進んでいく。


「どうしたどうした!? やっぱり、俺に手も足も出ないか!? お前みたいなザコに、愛梨は相応しくねえんだよ!」


 反撃しない相手に、自惚れている刀也。

 本当に間抜けだ。優馬はいつでも刀也を殺せて、だけど手加減しているだけなのにね。


 実際、優馬の行動は相手を観察しているだけだ。

 どうすれば殺さずに刀也を無力化できるのか、考えているだけ。


「お前みたいなヘタレには、反撃すらできないか!? それでよくダンジョンに挑んだものだな!」


 優馬がDランクダンジョンのボスを倒したことを、どう考えているのだろう。

 刀也はとにかく頭が悪い。当たり前に思い浮かべるべきことを、全く想像できないようだ。


 そのまま、刀也のナイフは優馬によって砕かれていく。バットを叩きつけられることによって。

 武器を失ったことで、刀也は自分の負けを理解したみたいだ。


「バカな……優馬ごときに……」


 そんな事を言いながらうずくまる刀也。

 優馬は刀也に対して殴りかかっていく。今までのうっぷんを晴らしているのかと思ったけど、違うみたいだ。


 なぜなら、優馬は殴ることに愉悦を感じていない。ただ淡々と、必要な作業をこなしている目だ。

 まあ、優馬は復讐なんて考える人じゃないよね。そこもヒーローに向いているとは思う。


 だけど、どうして殴りかかっているのだろう。

 楽しくもないのに、人を痛めつけるような理由があるのだろうか。


「ゆ、優馬。許してくれ。もうお前に手出ししたりしないから」


「愛梨にも近づかないことだね。破ったら、今みたいな軽いものじゃ済ませないから」


 ああ、なるほど。私を守りたかったのか。やけになった刀也が私に手出ししないように。

 改めて、惚れ直しちゃったよ。私の為なら、好きでもない暴力だって実行できるんだ。


「ああ。分かった!」


 刀也はそう言いながら逃げていく。

 それを見て、優馬はゆっくりと去っていった。


 しばらくして、刀也は周りの壁に八つ当たりをしていた。


「畜生、優馬ごときに! 何か卑怯な事をしたに決まっている! なら、俺だって手段を選ばない! 殺してやる! 寝込みを襲ってでも!」


 刀也は後で殺そうかと思っていたけど、気が変わった。

 すぐにでも、地獄に送ってあげるね。似合いだよ。お前みたいな小物には。


 さっそく沢山のモンスターを生み出して、刀也を襲わせていく。

 とりあえずは、このダンジョンと同じ見た目の敵かな。

 鎧とスライム、四足歩行の獣、あと骸骨も。


「なんで急にモンスターが!? こんなの、聞いてねえぞ!」


 当たり前だよ。言っていないからね。

 一応、法則性くらいは無いと攻略に支障が出そうだったからね。

 だから、ルールを作ってはいたんだけど。


 でも、刀也はこれから死ぬんだから。今の異変は誰にも知られないよ。

 優馬だって、安心してダンジョンに挑むことができる。

 だから、ゆっくりと絶望して死ね。


 刀也は必死でボス部屋から逃げようとする。だけど、扉は開かない。

 何度も扉を叩いているけれど、効果はない。


 そのまま逃げ出すことは諦めたのか、今度はモンスターに挑んでいく。


「俺がモンスターなんかにやられる訳がないだろ!」


 そう言って、モンスターに素手で殴りかかっていく。

 だけど、今のモンスターは特別性だからね。何も攻撃なんて通じないよ。


 むしろ、拳を痛めるようにできている。ステータスがあったとしてもね。

 さて、どのあたりで心が折れるのかな。じっくり楽しませてもらおう。


 なんて考えていたけれど、数発殴っただけで、もう諦めたみたいだ。

 拳を振り上げることもせず、うなだれるだけ。


「さっさと殺せよ。モンスターに言葉なんて通じないんだろうけどな」


 そんなに早く死にたいのなら、できるだけ死なせないようにするよ。

 モンスターに指示をして、まずは関節を外させていく。悲鳴を上げていて、面白い。


 続いては、端っこの方からゆっくりと刀也の体を刻ませる。

 口から泡を吹いていて、ちょっと見苦しいな。でも、まだまだ。


「た、助けて……」


 なんて言っているけれど、お前を助ける気はないよ。

 そのままモンスターに痛めさせ続けて、やがて刀也は動かなくなった。


 あまり気分はスッキリしないけれど、とりあえず邪魔者は消えた。

 優馬が帰ってくる前に、ご飯を準備しておかなくちゃ。


 Dランクダンジョンは簡単みたいだったから、次の試練をどうしようか。

 今のところは、単純に敵を強くするつもりはない。


 だって、ワンパターンだとつまらないからね。

 いろんな優馬を見たいのに、同じ攻略法ばかりだと、ダメだよね。


 ダンジョンでのカッコいい優馬も、日常の優しい優馬も、どっちも味わえる。私は幸せものだ。


 そんな優馬と、最後には結ばれるんだから。想像しただけで、興奮してきちゃう。

 私はウエディングドレスの方を着たいな。きっと、見とれてくれるんだろうな。


 優馬と私の結婚式は、きっと誰よりも素敵な式になるはずだ。

 だから、頑張ってね。優馬との結婚式、楽しみにしているからね。

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