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第11話 3人の弁護士

「いやぁ、金沢観光って夢だったんですよ」


 北陸新幹線のホームを降り立った3人の弁護士は改札口を降り「佐倉法律事務所御一行様」とプラカードを掲げた大智に「よっ、久しぶり」と手を挙げた。


「この前会ったばっかじゃねぇか」

「大智が居ない事務所は寂しくて仕方ないよ」

「どうせ静かで仕事が捗るって言いたいんだろ」

「捻くれてんなぁ」


 大智は吉高と紗央里の不倫行為を有罪にすべく東京の佐倉法律事務所の同僚を金沢市に招いた。3人の名前は瀬尾せお辰巳たつみ島崎しまざきと言った。当初は渋っていたが明穂の画像を見せた途端俄然がぜんやる気になった。


「おお!」

「あれが噂の鼓門!」

「柱一本一本が立派だねぇ」


 鈍い朱色の組み合わさった柱は縄文時代を思わせる独特な造りで見上げた空は梅雨明け間近の青が広がっていた。


「さぁさぁ、持った持った、!」

「ちょ、おれは荷物係かよ!」


 3人は大智に旅行鞄を持たせると金沢駅の鼓門つづみもんの下で記念撮影を始めた。


「鼓ってあれだろ、芸者の鼓なんだろ」

「よく知ってるな」

「るるぶ買ったんだ」

「どんだけ楽しみにしてんだよ」


 辰巳がもてなしドームと呼ばれる鉄骨のシェルターを仰ぎ見ると透き通るガラス張りで「ふむ、これは」と腕組みをした。


「なんだよ」 

「鳩の糞害が取り沙汰されそうですが美しいですね、鳩の姿も見当たりません」


 大智がタクシー乗り場の行列に着きながらドヤ顔で鼻息を荒くした。


「時々、鷹匠を呼んで鷹を飛ばすんだよ」

「鳩もたまったもんじゃありませんね」

「成る程」


 辰巳は満足気に頷いた。


「にしても!あんな可愛らしい子を泣かせるなんて言語道断だ」

「おまえ、乗り気じゃなかったろ」

「案件による」

「なんだよそりゃ」


「そういや大智、明穂ちゃんは良いのかよ」

「息抜き息抜き」

「やっぱりおまえは適当だな」


 大智は真顔になった。


「やっぱ、実の兄貴を追い込むとなると気が滅入るわ」

「そうだな」





 今回は吉高や紗央里が言い逃れ出来ない様に3箇所同時進行での断罪を考えた。決行日は3日後、明日は約束の金沢観光だこれは致し方無い。


「俺と瀬尾は大学病院だ」

「辰巳は吉高の慰謝料請求」

「島崎は紗央里の慰謝料請求」


 瀬尾が不思議そうな顔をした。


「なんで大学病院に行く必要があるんだ」

「お偉いさんたちが大集合のがあるんだよ」

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