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第2話「ゲーム開始」

ある日の東京の深夜。女子高生のA子は、深夜のファミリーレストランに呼び出された。制服を着ていれば確実に補導される時間帯で、深夜のファミレスに恋人の女子高生と一緒にいた。


「…ごめんね。きちんと気持ちの整理がしたい」


A子と交際相手の女子は今宵は別れ話をしていた。女子同士で交際をしていたが上手く行かず、A子は他の女子とも仲良く友達でいるから恋人は不満だった。


「私の気持ちを考えてくれる人がいいの」


A子は別れたくなかった。確かに恋人も心はまだA子を思っているがこのまま曖昧な関係を続けていてもよくないと思われた。A子はさめざめと泣いた。


深夜のファミリーレストランは別れ話をするにはうってつけだ。空席が目立ち、誰も他人の話など立ち聞きしない。この時間帯の客は皆疲れ切って寝ているか、自分の事に集中している。


A子のすすり泣く声が微かに聞こえるフロアに吸血鬼シグネチャはいた。シグネチャは吸血鬼5人組で行うゲーム(第一話参照)のため深夜は東京都内を徘徊していた。コーヒーを一杯注文したが手をつけずにファミレスの座席で黙って座っていた。


「馬鹿…!知らない…!」


しばらくするとA子が退店した。A子は間違いなく百合っ子だ。


ガランッ!


とファミレスの入り口を出ると、必ずしも監視の行き届いていないこの街で男子が4人待ち構えていた。


「…?!…なんですか、貴方たちは?」


A子は突然男子4人に囲まれて、驚きと不安に襲われた。


男子とは吸血鬼。


ストラクチャ


ギブネマチャ


ギゲルフ


イカナクチャ


の4人だった。


「百合カップルを見つけた」


とシグネチャが「念力の通信」を行っていた。現場のファミレスに残る4人の吸血鬼が向かい、入り口で待ち構えていたのだった。


ストラクチャはA子の右腕の前腕部を掴むと「誘惑の魔力」を発動させた。


「やめてください…!やめて…!やめ…」


A子は最初は抵抗したが徐々に大人しくなった。


「…アノ…ワタシニナニカゴヨウデスカ?」


ストラクチャは魔力が通じた事を確認すると、


「貴方の名前はなんといいますか?」


と言った。


「エーコデス」


「連絡先を交換してください」


「ハイ」


「毎晩血を20cc頂きに伺います」


「ハイ」


「構いませんね」


「ハイ」


そしてストラクチャが連絡先交換をしている間に、ギブネマチャが注射器を取り出し、その場でA子の血を20cc採血した。


しばらくするとファミレスの入り口から会計を済ませたシグネチャが出て来て、


「こっちは独りでやった」


と得意げに採血済みの注射器を見せて言った。


ギゲルフは、


「A子は可愛いが、そっちは可愛い子だったんだろうな?嫌だぜジャガイモみたいな女じゃ。可愛い妹が欲しいからな(第一話参照)」


と言った。


吸血鬼は皆「念力の通信」と「誘惑の魔力」を持っていた。これで毎晩20ccの血液を分けてくれる女子高生が2人手に入った。たとえば血液の提供者を20人まで増やせば一晩で400ccの血液が手に入る。目標の50kgまで125日程度かかる計算になる。女子高生の百合カップルを探す手間を考えれば正味1年はかかるプロジェクトだった。


シグネチャは提案した。


「誘惑の魔力を使えば独りでも採血できるから競争にしないか。製造される女の子の吸血鬼(第一話参照)は最も多くの血液を集めた者の妹にしよう」


シグネチャは初めての採血は5人の集団行動だったが、明らかに単独行動で事を済ませられると指摘する。


ストラクチャは、


「いいな。2位以下はどうなるんだ?」


と言う。


ギブネマチャ は、


「僕達は兄弟同然だ。率先して可愛がる立場を手に入れるって意味だろう。2位以下は仲間だと思って普通に接すればいい。楽しみだな、妹に会えるのが」


と言う。


イカナクチャは、


「退屈しのぎだね」


と言った。


その後、5人の吸血鬼達は、東京の百合カップルを探し出して20ccの注射器で採血する競争を始めた。 

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