中華街はカラリと晴れた。
昨夜も降った、池袋における暴力と喧噪の雨が、嘘みたいに平和な朝だ。
それはそうなのだ。二つの世界はパラレルワールドであり異次元なのだ。
池袋の暴力も中華街の混沌もそれは並行世界の出来事で、決して交わらず干渉することはない。俺は花と花を行きかう蝶々にすぎない。
ハンモックから抜け出し仲間に声をかけ、
だが
微糖にすればよかった。甘ったるい。
ベンチに座る。いっちょ手品でもやってみよう。
「ハイ! 封筒に万札を何枚か入れるしょ? 周りには誰もいません。後ろを向いて10秒待ちます。1 2 3……9 10~~ハイ!」
振り返ると封筒は消えていた。
どうやら俺は天使に好かれているようだ。
あれから姿は見ていない。
……空から降ってきたピンクベージュのショートカットの女の子。
「こんな寒空にこんなところで待ち合わせか。駅前のカフェがよかったな」
「たまにはいいだろ? 騒がしい店は落ち着かない」
ガチャコン。俺は資料を手渡し自動販売機で
「仕事量がまた増えたな。ご祝儀相場も終わって報酬は極めて現実的。だがそろそろこちらのキャパシティーの限界になりそうだ」
「現実的な報酬はこれからも継続の意思表示だろ? とりあえずこれ以上は増えないそうだ。ご不満?」
「不満はない。いやもうなくてはならない収入源になっている。でもね、ヒロユキ。鎌倉英二は相当に危険な男だ」
「十分に承知している。鉄玉と出会った瞬間からな」
「資料の中には彼が所属する広域暴力団のアキレス腱も含まれている。つまり、自分の親玉の弱みを握ろうとしているようだ」
「弱い奴はいつだって切り捨てられる。そんなの社会でもやくざの世界でも同じだ。自分の身を守る保険の意味もあるんじゃないのか? まあ、状況が変われば積極的にそれを使って親を食い殺そうって算段があるのかもしれないけど……」
俺は甘ったるい缶コーヒーを飲み干した。
「…………なにがあった? まるで別人だ」
「特別なにもないよ。ちょっとばかり忙しくはなったけど」
「そんなはずはない。池袋でやっていることはなんだ? いっぱしのアウトローだ。なにがあった? どうやってあんな集団を組織できた?」
「ん? あーあんなのハリボテだよ。瘦せっぽちの蝶が羽を広げてるだけさ、実態なんかない」
「実態がない?」
「中身は鉄玉の子分とチンピラ、それと事務所がある新宿の華僑。池袋には暴力団の本部もあるから鉄玉が表に出るわけにはいかない。同じ理由で新宿チャイナタウンも表にはでない。それじゃあ、華僑同士の縄張り争いになっちまう。それとバラックの連中もアルバイトで参加してる。皆、本業が忙しいから参加者はバラバラ。顔ぶれが毎回変わるから逆に巨大な組織だと錯覚する。ま、人数の水増しだ。微罪で捕まった
立て板に水の俺のおしゃべりに、
「つっても、実際そこで商売を始めるのはスネークアイの
「……ヒロユキ。おまえは悪党になる決意をしたのか? それとも正義の味方にでもなったつもりか?」
「ん? 勘違いするなよ。計画の絵を描いたのは、あんたのボスの