「なにもわからない。それが結論だ」
なんじゃあそりゃぁ!
どうやらサンタクロースはプレゼントの配達前に玄関ですっころんだようだ。
インド人ならチャイを飲め! 心の中で毒づくしかない。
窟以外の場所でこの男に会うとなんだか妙な感じがする。こちらが勝手にイメージを固定させてるだけなのだが、ここが日本一ポピュラーなカフェチェーンとくれば、それも仕方がないことだろう。カレーのチェーン店であれば俺の脳内も整理され、
ウズラフライカレーニウズラフライヲトッピングモデキタノニ……呪文かっ!
「専門家ではないがそれほど巨大なコンピューターシステムで噂にさえならないのは考えられない。……これはね、ヒロユキ。相当に危険な組織だ。だけれども料金以上の仕事をしてみた。ビル本体に入出をする人間を徹底的に調べた。ひょんなことから思わぬ利益になるかと考えてね……そして、何一つ有力な情報は得られなかった」
んだよっ! 頼りにならねぇな!
だが、目には敵意を浮かべない。偶然にせよ、この男には命を助けられている。
こいつがあのとき偶然通りかからなければ、俺は死んでいたかも知れないのだ。
店内は騒がしかった。おっきなリボンのセーラー服の学生がきゃっきゃしている。そしてことあるごとに、
当の本人はまったく意に返さず、ビジネスライクに話を続けている。
しょうがないので、俺も冷めたカフェオレを喉に流し込む。
「ここから先はヒロユキが支払えない金額の範疇になる。だからねヒロユキ。正直に事情を話しては貰えないだろうか?
――――――――――
「……蝶の目?」
「ええ、なんのことかわかります?」
「いや、さっぱりわからないね」
「でしょうねぇ」
話し終えると、俺は頭を抱えて、椅子にのけぞり、天井を見上げた。
それほどショックでもない。話すだけ無駄だと、最初から思っていた。それよりもバラックに帰りハンモックに飛び込んだ後に襲ってくるであろう虚無感をどうにかしなければと考えていた。小さな目的だけあった。呪いをかけたあの男を捜し出す。それだけに取りすがり、神経を保っていた3ヶ月だった。俺はおそらくこのまま壊れるのかも知れない。
「よし。その先の仕事を引き受けよう」
うん? 受ける? なにをいっているんだ? この男は……
「もちろん料金は取らない。ひとつだけ手がかりがある」
パサリッ。
ん? そこには見覚えのある顔があった。