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バニシングツイン
久央浬子
現代ファンタジー異能バトル
2024年10月12日
公開日
369文字
連載中
 僕は 片桐 紫音、十九歳。父さんは魔法界の王弟で、母さんは継承魔法使いの最上級魔女。だから僕もバキバキの魔法使いだ。
 魔法使いの一家が人間界で暮らす理由。1、父さんが人間と魔法使いの混血児だから。2、魔法界より人間界が好きだから。3、わが子を護るため……
 では詳しく。僕は双胎一児死亡 ( バニシングツイン ) の生き残りとして生を受けたけど、事実は違った。母さんの胎内で死亡したはずの兄・紫蘭が、僕と一緒に産まれていたからだ。でも紫蘭の体は透明で、周囲からは完全に見えない。紫蘭の存在は秘密になった。それでも僕らは、楽しく、幸福に、双子らしく片時も離れずに成長していく。そんなある日、突然紫蘭が消えた!危険を直感した僕は、なんとしても紫蘭を捜し出す決意をする。そして、両親の魔力に守られながら、人間の友達・岩井陸人と二人で、魔法界へと出発した。
 

プロローグ

「よいか紫蘭しらん。お前はシン王子のシャドーになるのだ。シャドーとして生きる以外にお前の命の保証はない」

「断る。ニセのシヤドーになるくらいなら、死んだ方がましだ」

「強気だな。まあ、お前の弟の命と引き換えなら、そんな悠長な返事はできまい」

「汚いぞジークリンデ! 弟には手を出すな!」

 紫蘭が床に唾を吐く。吐いた唾には血が混じっていた。

「弟はたしか、紫音しおんといったな……」

 ジークリンデは、紫蘭の傍らに置かれた水をいっきに自分の胃袋に流し込んだ。口元からポタポタと滴が垂れ、返り血に染まったシャツが雨だれのように濡れた。

「これでもう水は無いぞ。紫蘭よ、そんなに弱っちまったらお得意の魔法も使えまい。今までは同じシャドーのよしみで手加減してやったが、そうもいかないようだな」

 禍々《まがまが》しき魔力を秘めた長鞭ちょうべんが、拘束された紫蘭の体に、冷酷に振り下ろされた。




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