「え? あ、おはよう
集中していて気づかなかったのか、幼なじみであり今でも一番親しい友人の
ロングボブの茶髪はサラサラストレートヘアで、涼し気な目をしたクール系美女だ。
そしてその隣には左目下の泣きぼくろが特徴的な、一見クール系のイケメン・
「加藤くんも、おはよう」
加藤くんは景子の彼氏だ。
美男美女カップルで朝から目の保養だな、なんて思う。
「おう、おはよう。朝から一人で読書とか、ホント地味だな藤沼は」
けれど、加藤くんは見た目のクールっぽさが壊れそうなくらい気安い態度で失礼なことを口にする。
まあ、地味なのは事実なんだけど。
「もう、久斗。私の大事な親友に失礼なこと言わないで」
「でも事実だろ? 景子だって藤沼のこと本当はかわいいのにっていつも不満言ってんじゃん」
「それはそうなんだけど……」
注意してくれた景子だけれど、加藤くんの反論に言葉を濁す。
申し訳なさそうにチラッと見てくる景子に私は困り笑顔を向けた。
小さいころのちょっとした事件が原因で地味に徹することにしている私。
そうしようと決めたのは私なんだけれど、そのちょっとした事件のとき一緒にいた景子は自分にも責任があるって思っているみたい。
景子が気にする事じゃないのに……。
「まあまあ、私は自分で決めてこれでいいって思ってるんだから」
「そうだとしても……萌々香、本当にずっとこのままでいいって思ってる?」
今度は仲裁に入った私へ景子からの苦言が入る。
苦言と言っても、心配が大半だっていうのはわかってるけど。
「……」
その心配する景子に「いいと思ってるよ」って言えないのは、私自身本当にこのままでいいのかな? と少し思っているから。
自分で決めたことだけれど、このままずっと本当の自分を隠していていいのかな?
自分を偽ったままで、いいのかな?って。
「……」
私が答えられないから景子まで無言になってしまった。
ちょっと気まずい空気になったそこへ加藤くんが声を上げる。
「っていうか景子さ、藤沼に何かもらいに来たんだろ?」
あえて空気を読まない様な明るい声。
ちょっと失礼な物言いをすることもあるけれど、こういうときの彼は本当に助かる。
景子も、そういうところが好きで付き合ってるみたいだし。
「あ、そうそう。頼んでたアロマ出来たって言ってたでしょ?」
「うん、ちゃんと持ってきてるよ」
私は話題を変えてくれた加藤くんに内心感謝しながら、カバンから小さな茶色の遮光瓶を取り出す。
可愛いラベルシールが貼ってある、私自作のアロマオイルだ。
「ありがとう。最近不安なことがあったから、これでリラックスできるわ」
受け取って笑みを浮かべた景子を見て良かったって思う。
自分を偽ってることで心配させてしまっている私だけれど、こんな風に景子の役に立つことができたから。