目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第51話

 翌日。

 無事英語の宿題を提出したボクは授業の間もこっそりと和藤から渡された資料を読んでいた。

 跡羅はデリバリーのアルバイトをしているらしく、帰ってきたのは夜の九時頃だった。

 それからノートンに餌をあげ、自分も簡単な夕食を食べた。寝るまでの間は特に変わったことはなく、防空壕の入り口は分からなかった。

 夜になってノートンと寝るまで跡羅は終始安心していたようだ。

 どこにも姉である愛莉の姿は確認されていないことから、おそらく病院か友人宅だろう。

 だがそこにボロボロの新聞を持っていくとは考えられない。あの男のことだ。病院で同室の患者や友人まで襲いかねないからだ。

 ボロボロの新聞は間違いなく跡羅家にある。だがどこに?

 最もありそうなのは跡羅レイが身に付けている可能性だ。学校の中は手が出せないし、放課後はデリバリーのアルバイトで動き回れば危険は少ない。夜襲だけ気を付けていればいいんだ。

 実際跡羅は戸締まりをしっかり確認していた。表も裏も扉の鍵を閉め、窓も施錠していた。特にいつでも逃げられるようにするためか、裏口は念入りにチェックしていたそうだ。

 しかしいくら跡羅とは言え、屈強な男達に力尽くで捕まえられればどうしようもないだろう。洲本の性格を考えればそういった危険も考えないといけない。

 もしボクなら身に付けない。それを奪われたら終わりだから。だけど捕まってもブツが出なければ脅しに使える。解放しないと姉があれを世に出すと。

 考えろ。跡羅ならどうする。あいつは大胆で、だけど抜け目がない奴だ。

 そう言った人間は必ず保険をかける。もしもの時に備えるはずだ。

 もしボロボロの新聞の在処が分かったとしても取り出せない場所があるとしたら……。

 その日の授業は何一つ頭に入ってこず、結局あとで真里亞にノートを借りることになった。それでもまた網は狭まった気がした。

 だがまだ足りない。推理では限界がある。ならどうする?

 ホームズならどうする?

「……………………そっか」

 情報がないなら出させればいい。それに気付いた時、幾分気持ちが晴れやかになった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?