新幹線の改札が見えるベンチに座ってしばらく待っていると件の女性がやってきた。
古葉先輩を見たのはこれが初めてだが、写真より随分大人びて見えた。そこかしこから自信が垣間見える。先ほど会った先輩達とは顔つきが違った。これが大人になると言うことなのかもしれない。
ボクは小さく息を吐いて立ち上がった。和藤の言う通りにするのは癪だが、ホームズを目指すなら泰然とした振る舞いを求められる。ボクは笑顔で話しかけた。
「古葉まどかさんですね」
古葉先輩は突然名前を呼ばれて驚いていた。
「そうだけど、あなたは?」
「ボクは写楽ほむら。探偵をしています」
「探偵? あなたが?」
古葉先輩は目を丸くした。ボクが頷くと怪訝な顔になる。
すると和藤が先輩に名刺を渡した。
「こちらが名刺です。公安委員会の許可も得ている正式なものですので、どうしても信用できないならご確認ください」
「この名刺に描いているのは?」
「ほむら様の愛猫ロキアンです。絵はほむら様が描きました」
「ふうん。なんか虎みたい」
失敬な。
古葉先輩はボクに向き直した。
「それで探偵さんが私になんの用?」
「探偵が現れる理由は決まっています。謎があり、それを解決するためです」
「その謎って?」
「無論、猫毛組合の謎ですよ」
その名前を出すと古葉先輩の眉がぴくりと動き、そして苦笑した。
「今ちょっと疲れてるの。話をするなら座りながらでいいかしら?」
「もちろんです。そこにうちの兄が経営するコーヒーチェーンがありますから、個室を取らせますよ。その方が先輩もいいでしょう?」
ボクがそう提案すると先輩は少しご機嫌になった。
「まあ、どこで誰が見てるか分からないしね」
「ではこちらへ。荷物は和藤がお持ちします」