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第14話

 三年生の教室に行くと多くの生徒が帰っていたが、まだ何人か残っていた。

 残っている生徒の中から目星を付けて何人かに聞き込みをすると一人が求めていた情報を持っていた。

「バイトの勧誘? それならされたよ。断ったけどね。受験もあるし」

「やはり」

 謎の先輩が求めていたのが瑠偉先輩ではなく、誰でもよかったのならまず声をかけるのは同級生のはずだ。だが受験もあって誰も誘いに乗ってくれなかった。

 そして瑠偉先輩にお株が回ってきた。ここまでは必然で、そして偶然も重なる。

「その人の名前は分かりますか? できれば写真も」

「えっと、名前は古葉さんで、写真はないや。誰か持ってる?」

 ボクが聞き込みをした先輩が周りの友達に尋ねると「去年の文化祭のでよければ」と返ってきた。ボクはその写真を見せてもらう。

「この子だよ」と言って指さされた生徒は可愛らしく笑って指でピストルを撃つようなポーズを作っていた。

「ほむ。この写真、よかったらもらえませんか? もちろんネットには載せませんから」

「べつにいいけど」

 ボクはSNSで連絡先を交換し、写真を送ってもらった。すると先輩の一人が照れながら言った。

「あ、あのさ。あなたって毎朝車で来てる人だよね? 執事さんと一緒に」

「そうですが」

「じゃあさ。お礼って言っちゃあれだけど、あの人の写真くれない?」

「和藤の? 別に構いませんが」

 ボクが入学式の日に一緒に撮った和藤の写真を送ると、先輩達はキャーキャー言いながらお礼を言った。

「ありがとね」

「いえ。こちらこそ」

 先輩達は「あー。あたしもイケメン執事に送り迎えしてもらいたーい」とか、「あんたじゃ無理だってー」とか言って楽しそうに廊下を歩いていった。

「……まあいっか」

 なんともモヤモヤするが今はそれどころじゃない。ボクは職員室に向かった。

 そして古葉先輩の担任だという壮年の教師を見つけ出す。口と腕には毛がたくさん生えているが、髪にはほとんどなかった。

「突然ですいませんが、古葉先輩に会いたいのです。今どこにいるでしょうか? 部活? それとも自習室ですか? ああ、この時期だと予備校もあるのか」

「さあねえ」

 やはり担任と言えど放課後生徒がなにをしてるかまでは把握してないか。だけどクラスは分かったんだ。明日の朝に行けば会えるだろう。

 そう思っていたボクに先生はこう続けた。

「古葉はもうかれこれ一週間ほど学校を休んでるからなあ。俺もしばらく休むと言われただけで詳しいことは分かってないんだよ。家にもいないし親御さんも心配しているみたいだ。無事だといいんだけどなあ」


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