そして放課後までボクのほっぺは膨らんだままだった。
真里亞と一緒に和藤の元に行ってからも絶賛プクプク中だ。
校門でボクを待っていた和藤はそんなボクを見て苦笑した。
「どうしたんですか? もしかしてまた先生をママと呼んだとか?」
ボクは顔を熱くして反論した。
「そんなんじゃないやい。ただ自分が情けないのだよ。君を頼ってしまうボク自身がな。想像してみたまえ。ホームズがワトソンに事件が解けないと泣きつく様を!」
「おいたわしや。しかしながら彼なら事件を解くために躊躇なくそうするでしょう。ただそこまでする機会がないだけかと」
ボクはムッとした。
「分かっているさ。優先すべきは事件を解決することで、ボクの気持ちじゃないことくらい。それで、君はもう解けているのか?」
「どうでしょうか? 私如き者にできることはただあれこれと想像を巡らせるくらいですから。それが合っているという証拠はどこにもございません」
「なら三つほど分かったことを話そう。瑠偉先輩がいなくなって得をする存在はいないし、銀行強盗もペットの盗難も起きていない」
「なるほど。ではこれで随分絞られましたね」
「やはり分かっていたか」
「滅相もございません。ただ一つ気になったことはございますが。あなた様の推理の邪魔にならなければ発言をお許し願いますか?」
「くるしゅうない。申してみよ」
後ろで真里亞が目を輝かせて和藤を見つめる間、ボクは腰に手を当てて眉間にしわを寄せて助手を見上げていた。
和藤は微かに首を傾げ、惚けるように告げた。
「謎の先輩はどうして瑠偉さんを選んだのでしょうか?」
「どうしてってそれはたまたまで――」
ボクはそこまで言ってハッとした。
和藤は優しく微笑む。
「偶然と必然。その二つが重なったとしたら?」
その言葉でボクの中にある灰色の脳細胞がようやく動き出した。
「なるほど! そういうことか! こうしちゃいられない! 真里亞! ボクは学校に戻るぞ!」
真里亞はうっとりしたまま頷いた。
「じゃあわたしはここで和藤さんを眺めてるねえ」
「そうしてくれ!」
ボクは和藤と真里亞を置いて急いで学校にとんぼ返りした。