猫毛組合 下
翌日の朝。メイドの沢森はいつも通り勢い良くボクの部屋のドアを開いた。
「お嬢様! 朝やで! もういい加減高校生になったんやから一人でって、なんや、起きとるやん」
ボクは意外そうにする沢森に「おはよう」と答えた。既に制服も着ている。
「おはようさん。今日はえらい早いですね」
「事件のことが気になってね。早起きして色々と考えていたんだ」
沢森は興味がなさそうにベッドで寝ていたロキアンを撫でた。
「ふうん。それで? なんか分かりましたか?」
「いや。でもアプローチの方向は決まったよ。やはり瑠偉先輩の利害関係が怪しい」
「なんや仰々しいなあ。学生なんやからもっと気持ちよう過ごしたらええのに」
「高校生にもなると色々あるんだろう」
「仲間はずれにしたり、好きな人取り合ったり? いややわ。聞きたくもない」
「言ってないけどな。ほむう。なるほど。そういう考えもあるのか……」
せっかくまとまりかけた考えに暗雲が漂う。色恋沙汰は想定してなかった。
ボクが顎に手をあてて考えていると沢森は背中を押して部屋から出した。
「ほらほら。せっかく起きてんから準備しな。和藤さんもなんか考えてたし、自分らは似とるなあ」
「え? 和藤はなにか言っていたか?」
「自分とこの学校の部活でなにがあるか聞かれたわ。そんなん学校のサイトに載ってるでって言ったらスマホで調べてたで」
「部活……。やはり部活か……。ほむ。ならボクの方が有利だ。ありがとう」
「よう分からんけどどういたしまして。ほら、行くで。うちが漬けたぬか漬けがちょうど良い塩梅にできたんや。自信作やで」
「それは楽しみだ」
そう答えながらもボクの頭の中はずっと事件のことでいっぱいだった。