「困っている人を助けられる人になりなさい」
大好きだった祖父は幼いボクに常々そう言っていた。
祖父は誰をも愛し、だからこそ誰からも愛された器量人だった。
代々受け継ぐ大きく古い屋敷。そこにある広い書斎で祖父はいつも静かに読書していた。
ボクが遊びに行くと嬉しそうに話をしてくれたり、子供ても読める本を薦めてくれる。
たくさんある本の中でボクが一番気に入ったのがシャーロック・ホームズシリーズだ。
言わずと知れた名探偵ホームズが次々と難事件を解決していく。
その様は痛快でちびっ子のボクを夢中にさせた。
ホームズはいつも持ち込まれた謎を鮮やかに解いていく。
そして謎を持ち込む人々は総じて困っていた。
祖父の言う困っている人を助けられる人そのものだ。
すごい。かっこいい。
憧れはすぐにボクをある感情に連れて行く。
自分もホームズになりたい。
その気持ちは祖父が亡くなったあとも変わらなかった。