《シャーク・リブラの能力説明》
シャーク・リブラは
1、暴力と魔法を封印した空間、《法廷》を開廷して、真実を解き明かすフィールドを作り出せる。
補足
法廷内では、裁判官が全てを支配する。
訴えられた側、
裁判を見守る者、
それ以外の証言をする者、
2、作り出された法廷では、全ては真実を判断する場であり、定められた行動以外をとった者にはペナルティーが課せられる。
補足
裁判官以外の者は以下の事が禁止される。
暴力をふるう。
魔法を使う。
これらを行った際に、自らの不利を悟っての行動と判断して、判決を下す際に不利な判決になる可能性がある。
裁判官が必要とあれば、《静粛《セイシュク》カード》を発動して、声を出すことができなくなる。
3、訴えた側、原告は訴える内容が正しいことを証明するために、真実だけを述べて示し、被告側に非を認めさせる必要がある。
4、被告側は、原告の訴えに対して、真実だけを述べて、原告側の訴えを突っぱねる必要がある。
5、原告、被告、裁判官は、証人を証言者として召喚する権利を持つ。
傍聴人が証言を求めた場合、裁判官が認めれば、証人として発言が許される。
補足
3、4、5の者たちによる証言は、法廷内でのみ裁判官の右耳が嘘をついているのか判定できる。
6、両陣営は物的証拠を提出できる。
提出された物は裁判官の右目で鑑定して、証拠として価値があるのか判定を受けられる。
補足
裁判官は、法廷内でのみ提出された証拠を証言に沿った物として鑑定することができる。
所有者と誰が触ったか、鑑定で知ることができる。
7、全ての証拠、証言が出揃い、互いの真実に基づいて両者の主張を聞いた上で、判決を裁判官が下す。その際に下された判決は絶対に実行される。
8、法廷内では裁判官が行う、回復、鑑定以外の魔法や暴力を全て無効化される。
9、法廷は異空間であるため、外界とは隔離され時間が停止しているため、空腹、尿意、状態異常を起こす事はない。
♢
「さて、この説明をしなければ、我が身の能力を正式に使うことができません。長々と申し訳ありませんでした。要約すれば、両者、もしくは片方の主張があり、解決が正当なものではないと我が身が判断した場合に、空間を支配した《法廷》を開廷できます」
法廷空間には、裁判官である我が身から正面に傍聴人の席があり。
左手に原告。右手に被告がそれぞれの席に座っておられます。
彼らに対して、説明をすることで、能力を正式に使えることができるのです。
「そして、この法廷内では、罪について問い、真実を解き明かす場所ですので、嘘をつけばすぐにバレます。互いに思い違いや、真実だと思っていることもあるでしょう。それらを主張して、証拠を出し、第三者として証人から話を聞いて、真実に極めて近い答えを皆さんと共に導き出します」
我が身は毎度しなければいけない説明に少々の疲れを覚えながら、最後の言葉を告げます。
「第三者として、我が身が互いの主張に沿った判決を下します」
やっと説明を終えることができてホッと息を吐くことができました。
「くれぐれも嘘のないように、もしも嘘を吐けば、嘘をついた者の信用は失われ、判決の際に不利になりますので」
法廷を開廷した瞬間に我が身は貴族衣から、法服へと変貌を遂げております。
真っ黒な法服は、何にも染まることがなく、真実だけを判断する公平さを表しています。
「それでは原告、シル・ダレガノ男爵令嬢。あなたの訴えをお聞かせください」
「はい!」
証言台に立ったシル男爵令嬢は堂々とした態度で我が身を見つめます。
可愛らしいお嬢さんに見つめられることに悪い気はしません。
「私が学園に入学した当初、毎日のように嫌がらせを受けておりました。男爵家という位の低さからだと思います。私は悔しいと思いながらも日々勉学に励んでおりました。その際にクリス様と出会ったのです」
我が身に宿る右耳は、法廷内で相手の嘘を見抜く力を持ちます。
シル男爵令嬢の話に嘘はなく、嫌がらせは存在していたようです。
「中庭で泣いている時にクリス様から声をかけていただきました」
「どうした? 何があったのだ?」
「クリス様! いえ、私の事など」
「良い、聞かせてみろ」
頬を染めて語る馴れ初めも一切嘘はありません。
「学園に入学してから友人が出来ず。学園に馴染めないことを話させてもらいました。するとクリス様は優しく私を励ましてくださいました」
「私の側にいればいい」
「そう言っていただき、二人で勉強をする日々が始まりました」
「ですが、それは長く続けることはできませんでした。マリアンヌ様に注意を受けたのです」
「注意ですか?」
「はい。私に対して注意をなされました。『あなたは知らないのですか? 婚約者のいる殿方に近づいてはいけないと?』そう言って、みんなが見ている前で叱られたのです」
涙ながらに語る話に嘘はない。
「マリアンヌ様の婚約者であるクリス様に近づいたことで、嫉妬をされているのだと思いました。私も悪いことをしたと自覚したので、マリアンヌ様のいう通りにクリス様に何も告げることなく距離をとりました」
「そういうことだったのか?! 辛い思いをさせたのだな」
シル男爵令嬢の言葉に、茶々を入れる第二王子様。
面倒なので、強制的に黙らせる《静粛》カードを発動します。
口をパクパクさせて、声を出せないことに驚いた顔を我が身に向けておられます。
「うむ。あなたの発言に一切嘘はないようです。続けてください」
「はい。クリス様から距離を取った私に対して、嫌がらせはエスカレートしました」
「そんな時に助けてくださったのが、グルガ様でした。私も自分で強くならなくちゃいけないと思って、道場に行った際に剣術の指導をしてもらったんです」
気絶したまま原告席の横に倒れるグルガ君に傍聴席からも視線が集まります。
仕方がなく、我が身は彼に回復魔法をかけました。
「はっ! ここは?」
「ようこそ法廷へ。我が身は裁判官を務めるシャーク・リブラ子爵にございます」
「お前!」
名乗りを上げる我が身に飛びかかってきた彼の拳は、法廷のルールに則って、暴力と魔法は封印されている。
「なっ! 殴れないだと」
「この場は我が身の支配下です。どうかお静かに。あなたにはシル様と出会った経緯を間違いないか確認をしていただきます」
「くっ!」
項垂れ、原告席に腰を下ろされました。
「グルガ様に出会った時、私はグルガ様が貴族だということを知りませんでした。優しく指導してもらっている間に心を許し合って、その後に貴族であることを知りました。ですが、知ったきっかけは、伯爵家のリリアナ令嬢様から、近づくなと脅されたのです」
シル男爵令嬢には嘘はありません。つまり、悪意は無く。
男たちが彼女の容姿や健気さに吸い寄せられているのかもしれません。