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第2話 悪役令嬢断罪事件 2

 第二王子様の前に辿り着いたところで一礼をする。


「貴様! 何者だ!」

「我が身をご存知ではない? 有名な方だと思ったのですが。いや〜自己評価ジコヒョウカが高くてお恥ずかしい」


 照れ笑いを浮かべて頭をいてしまいます。


 我が身は特徴的トクチョウテキな姿をしております。


 右目に眼帯ガンタイを付け、猫背ネコゼで、足が悪いわけでもないのにステッキを持ち歩いております。


 奇々怪界キキカイカイな貴族社会でも、珍しい容姿ヨウシをしているので、有名だとばかり勝手に思っておりました。


「それでは自己紹介をさせていただきます。我が身はシャーク・リブラと申します。王国子爵位オウコクシシャクイ頂戴チョウダイしておりますれば」

「なっ! リブラ子爵だと!」


 どうやら我が身の顔は知らなかったようですが、名前は知っていてくれたようですね。


法治国家ホウチコッカテルミ出身と言っても、一応王国の貴族なのです。顔ぐらいは覚えていてほしいものですな。第二王子様」

「くっ!」


 勉強不足をつくだけで、悔しそうな顔をなされます。

 まだまだ子供なのですね。


「リブラ子爵! 貴様が法の番人バンニンと呼ばれる人間であり、何かと話題に上がっていることは聞いている!」


 苦虫ニガムシツブしたような顔をする第二王子様。

 そんな第二王子様を放っておいて、我が身は侯爵令嬢を取り押さえているグルガ騎士団長子息の前に立ちます。


「離しなさい」

「はっ?」


 我が身から発せられた声に反応できなかったグルガ騎士団長子息、行動を起こさないので彼の腕をステッキで殴りつけます。


「ぐっ! なっ! 何をする」

紳士シンシがレディーに暴力を振るってはいけません。あなたこそ何をしているんですか?」


 我が身から発せられた一喝イッカツに、場がシンと静まり返ってしまいました。


「マリアンヌ様、助けに入るのが遅れてしまい申し訳ありません」

「いっ、いえ、リブラ子爵様。ありがとうございます」

「痛いところはありませんか? お手をとってもよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」


 マリアンヌ侯爵令嬢に手を差し出す。


 その手を躊躇チュウチョなく取ってくれるマリアンヌ侯爵令嬢は素晴らしい女性ですね。


「ありがとうございます」

「いえいえ、美しいレディーを救うのは紳士の務めにございます。このような餓鬼ガキどもの遊びと思って放置ホウチしていたことを、こちらの方こそお詫びします」


 我が身をくの字に曲げて深々とした謝罪シャザイを口にします。


「あっ、あなたには関係ありませんでしょ? お顔をお上げください」

「いいえ、大人として、子供のシツケをしなけれならないと思って出てまいりました」

「お前! 俺を殴ってタダで済むと思うなよ!」


 ステッキで殴られたグルガ騎士団長子息が起き上がって殴りかかってきました。


「ハァー、まだ爵位シャクイを持たない小僧コゾウが、爵位持ちの我が身に暴力を振おうとするなど、不敬フケイに当たるとどうして考えないのでしょうね。ですが、いいでしょう。この場では我が身の方が立場が上です」


 我が身は殴りかかってくるグルガ騎士団長子息の拳を避けて、ステッキで彼の股間コカンを思いっきり殴りつけました。一つほどツブれた音がします。


「ガハッ!」


 その衝撃ショウゲキに白目を剥いて、意識を失ってしまいます。


「おや、一つ残ってよかったですね。さて、第二王子様。先ほどの話にいくつか矛盾があるので質問をしてもよろしいでしょうか?」

「貴様! グルガに暴力を振るうなど!」

「彼の行為に問題がありましたので、イサめただけでございます。何か問題でもありましたか?」

「無礼であろう! グルガは上位貴族であり、我は王子だ!」


 二度も問題点を質問したのに、「王子だ」と言われても困ってしまう。


 どうしてそんな言葉が返ってくるのか、理解ができませんね。


 もしかして我が身は魔物と対峙しているのでしょうか? ゴブリンやオークならば話が通じないのも理解できるのですが、見た目はこの国の第二王子様に相違ないです。


 頭が痛くなってきますね。


「王子がなんだというんです? 我が身が仕えているのは法治国家テルミであり、雇っているのは王国です。あなたではありません。我が身を従わせたいのなら、あなたが王国そのものになってください」

「なっなっなっ!!!」


 見る見るうちに顔を真っ赤にする第二王子様に、我が身は深々とため息を吐いてしまう。


「それとも会話ができない獣なのですか? 我が身は質問があると言ったのですよ」


 カンとステッキを突いた音で、その場にいたものたちが息を呑む。


「わっ、わかった。質問とはなんだ?」


 先ほどのグルガ騎士団長子息を殴り飛ばした問題点についてはお答えいただけないようです。


 さて、ここからは話し合いといきましょうか?


 その前に、立っていることに疲れたので、近くにあった椅子を引き寄せます。

 我が身が座るよりも前に、ずっと隣に立っているマリアンヌ侯爵令嬢へ差し出しました。


「あっ、ありがとうございます」

「いえいえ、紳士として当然のことをしたまでです。しばしお付き合いくださいませ」

「はい! 私の問題でもありますから!」


 新しくもう一脚を持ってきて、ちゃっかりとマリアンヌ侯爵令嬢の隣に座ったのはご愛嬌アイキョウです。


 年下の美人であるマリアンヌ嬢を守る騎士として、我が身の心はやる気に満ち溢れております。


 さて、悪役令嬢の敵対者であるヒロインにもテンプレは存在します。


 私の視線に映るシル・ダレガレ男爵令嬢はどんな女性でしょうか?


 1、純朴な世間知らずな田舎少女が、才能を認められ学園にやってきた。しかし、王都の貴族と馴染めなくて、健気に頑張る姿を王子やその他の男性に惚れられる。(正統派ヒロインタイプのテンプレですね)


 2、マリアンヌ侯爵令嬢と実は姉妹で、姉妹間の争いから蹴落とそうとしている姉妹NTRヒロインというテンプレ。これは血縁の格差による問題が生じている恐れがあります。


 3、異世界から転生してシル男爵令嬢の体を乗っ取り、この世界を書物やゲームをプレイした世界として好き勝手に逆ハーレムを作るなかなかに厄介な相手です。転生知識チートヒロインテンプレですね。


 4、見た目が可愛くても中身が悪女で、自覚を持って王子たちを籠絡する悪女系ヒロインテンプレですね。


 さて、どんな相手なのでしょうか?

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