夕暮れ沿いの帰り道、わたしたちは手を繋いで歩く。不揃いな歩幅、繋いだ手とは反対側でお揃いのシュシュが揺れる。
オレンジ色の風景と繋いだ手から伝わる体温。否が応でも、昔のことを思い出す。学童の帰り、高学年になってからは放課後クラブの帰り。一緒に帰った日々を。あの時はまだ、れんはわたしよりも小さかったっけ。
わたしは思い出と重ね合わせるように隣のれんを見つめる。その表情も体格も、何もかも違う。
「それにしても、れんは大きくなったねぇ」
「なに、急に」
「小学校の時はこんな風によく一緒に帰ったじゃん。その時と比べて、随分と大人になったなと思って」
「まあね」
「昔はちっちゃくて泣き虫で、よくわたしのところに泣きついてきてたのに。一人で登下校する姿なんて想像もできなかったのに。それが中学で部活始めて、背も一気に伸びて。本当に、成長したねぇ」
「……なんでそんなろくでもないことばっかり覚えてるの」
不満を示すように、ぎゅっと強く手が握られる。思わず笑みがこぼれる。
れんは変わった。表情も体格も、何もかも。
けれど、不思議と、その輪郭だけは何も変わっていないような気がした。
家族という限りなく近い場所で生まれて、遠ざかって、また近づき始めているわたしたちの関係。その行き先は分からない。けれど、いつだって、願いは変わらない。あの日芽生えた誓いは変わらない。
れんを守りたい。
そうやって、変わったものと変わらないものを指折り数えて歩く。大切にしたい日常は、しっかり見つめていないと、気づかぬうちに形を変えてしまうから。
お父さんが家族から離れていったように。れんがわたしから離れていったように。
だから、今を大切に、歩きたい。わたしはぎゅっときつく、れんの手を握る。手首の上、あかね色に沈むお揃いのシュシュを撫でる。今日一日が楽しかったからこそ、募る寂しさをそっと抱きしめる。
また、行こうね。
そんな言葉が、喉元で留まる。今が幸せだからこそ、“また”を期待することが少しだけ、怖い。“また”れんがわたしの元から離れたらって、考えると、怖い。
いつからか張り巡らされたそんな予防線。それを破ったのは、れんの方だった。
「あの、来週、部活で新人戦っていう大事な大会があるんだけど……お姉ちゃん、見に来る?」
「いく!」
れんの顔を見上げ、即答する。
れんはわたしの勢いに驚くように、瞬きをして、それから呟く。
「ありがと」
わたしは人目もはばからず、れんをぎゅっと抱きしめて告げる。
「絶対応援行くから、頑張って」
れんの瞳を真っすぐ見つめて。
急に近づいたわたしたちの関係。その行き先は分からない。ただ、今はれんの一言で生じた変化を大事につなぎ留めたい。れんがわたしから離れて獲得した、部活という居場所。そこに、誘われることはわたしにとって特別だった。
太陽と月が交わる時分、正反対の色をしたシュシュが、重なるように揺れていた。