今、私はとある森の中にいる。いつも自分の部屋でゲームをしている私がなぜこんなところにいるのかというと――
「それこっちに置いてー」
「はいはい」
アリスが自分の
なぜアリスがそんなものを作っているかって?
大好きな河伯の寝床に自分も住むつもりなのよ。
口では明連と五輪と河伯の三角関係を見て楽しむとか言ってるけど、アリス自身も河伯にメロメロなのがあからさまなのよね。何故か当の河伯は全然理解してないみたいだけど。
っていうか、河伯は明連が好きって言ってるわりに明連の気持ちにも気づいてないのよね。五輪の好意はまだ恋愛感情ってほどではないからまあいいとして。
最近は玉藻も熱い視線を送ってるけど、あれも全然わかってないわね。どうしてくれようかしら、あの天然スケコマシ。
女心ってものがまるでわかってないのよね。ずっと水底で寝てたらしいけど、あれはひどいもんだわ。
実力は間違いなくトップクラスだし、性格もちょっと見ないレベルで良い。でもあまりにも浮世離れしすぎていて、恋愛に疎すぎる。竜神だからってのもあるかもしれないけど、あれじゃあこれからもどんどん被害者を増やしていくわ。京都でも女神に会うような話を五輪がしていたし。
「フヒヒ、これで快適な生活が送れますぞ」
アリスが住処の出来に満足しているみたい。それ怒られて撤去することになったらどうするつもりなのよ。河伯のことだから困惑しながらそのまま住まわせるんでしょうけど。
「できたの? じゃあゲーセンにでも行きましょうか。河伯が帰ってくるのは明後日よ」
私は人間の姿をとってアリスを誘う。最近はこの姿でアリスとゲーセンに入り浸るのが日課だ。狼のままじゃ入れないからね。河伯に言われて気づいたわ。
「うん、玉藻おねーちゃんも来て!」
ここで玉藻を呼ぶのはどうかと思うわよ? いつも河伯に学園から追い出されて一緒にゲーセン通いしてるとはいえ。
「なに、アリスちゃん。またゲーセン……って、ここ河伯の寝床じゃない! 何してたの?」
呼ばれて飛んできた玉藻が驚きの声を上げる。来る前に気づきなさいよ。
「えへへー、河伯お兄ちゃんのおうちに一緒に住んで世界制覇をねらうんだよっ!」
なにそれ?
「何言ってるのかわからないけど、一緒に住んでいいって河伯が言ってるの?」
「無断に決まってるでしょ。まあ河伯のことだから追い出したりはしないだろうけどね」
私の言葉に何やら考えこむ玉藻。まさかコイツも住みつくつもりじゃないでしょうね?
「よし!」
何がよしなのよ。
「さっ、ゲーセンに行きましょ。河伯は明後日まで帰ってこないし」
「うん、いこいこ!」
何かを決めた玉藻と満足げなアリスに促されて、ゲーセンに向かうのだった。
これ絶対なんかやらかす気だ。
……しーらないっと。