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11 安藤恭太 2



 彼が玄関の方へと向かう。僕は彼が段ボールを抱えて戻ってくる姿を予想していた。


「御手洗くんっ」


 しかし予想に反して玄関の方から聞こえてきたのは女の子の声だ。

 って、女の子!?

 学のやつ、僕に内緒でクリスマスの朝に女の子とデートをする約束なんかしやがって!

 けしからんやつだっ。

 突然の展開にもしっかりと腹を立てた僕は、やつの遊び相手を一眼見てやろうと腰を上げた。


「て、三輪さん?」


 玄関先で寒そうに両手を擦り合わせながら学と対峙していたのは、ほかでもない三輪つばきだった。

 そうか。学、結局三輪さんとあることないこと進んでいたのだ! だからこの間も、三輪さんにナナコのことを伝えると名乗り出たのか。

 いや、それにしても変じゃないか?

 三輪さんは昨日、彼氏とデートをしてきたのではないか。その結果がどうであれ、昨日の今日で学と約束なんかするか? ま、まあ男女の約束に「絶対こうあるべき」なんて話はないのだけれど。それによく考えたら、学がクリスマスの朝から好きな女の子を誘えるのか? これは僕の偏見だけど、三年半一緒に過ごしてきたから分かる。やつにはそんな勇気あらへんわ!


「どうしたんだい三輪さん」


 学の一言で、彼女の訪問が彼の意図しないものであることが分かった。となると、彼女はなぜ突然訪ねて来たんだ?

 その疑問を解消すべく、僕は三輪さんの姿をもう一度よく見てみた。白色のダッフルコートにチェック柄のマフラーをしているが、マフラーは乱れて半分解けてしまっている。鼻の頭も耳も真っ赤に染まり、何より目尻に涙が浮かんでいるのが気になった。


「どうしよう御手洗くん。カナが……」


「と、とにかく上がりたまえ」


 これはただごとではない。

 学もそう思ったんだろう。寒さに震える三輪さんを家の中へと案内した。


「お、おはよう」


「安藤くん……」


 挨拶をする余裕すらないという様子の三輪さんは、僕の顔を見てさらに顔をくしゃりと歪めた。わわ、泣かないでくれ! そう言おうとしてももう遅い。すでに彼女は目尻にいっぱい溜めた涙をポタポタとこぼしていた。

 学が三輪さんにハンカチを渡す。ありがとうと言って三輪さんがハンカチを受け取って両目に押し当てた。


「ここ、座って」


 学に促されるがままに、彼女はこくんと頷いてソファに座る。

 いつのまにかキッチンで温かいお茶を淹れて彼女に差し出した学が、三輪さんの前に座った。


「ありがとう……」


「一体どうしたんだい。そんなに慌てて」


 ソファに座りお茶を飲んだことで気持ちが落ち着いたのか、三輪さんは「突然来てごめんなさい」と頭を下げた。


「カナが……カナが家に帰っていないようなの」


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