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06 西條奏 5


 つばきが神谷くんと上手くいっていないと聞いて真っ先に思いついたのがこれだった。私自身、高校の頃の元彼に浮気された経験があるため、男が急に態度を変える理由について、浮気を疑ってしまうのはもう病気みたいなものだ。


「そうね……実はあたしも、同じことを考えてた」


 マルゲリータを食べるつばきの手が止まる。さすがに、深刻な相談をしながらご飯を味わう気にはなれないようだ。私もここらで一度手を止め、もう一度真剣につばきの話を聞くモードへと入った。


「思い切って聞いてみるのは勇気がいるよね。そこで関係が終わりかねないし」


「ええ。だからこっちから証拠を掴むのが早いんだけど」


 そう言うと彼女は目を細めて、私の背後をぼんやりと見つめた。


「なんだか虚しいの。彼の目を盗んで浮気を突き止めて、待っているのは破局だけだなんて。あたしはまだ別れようなんて心の準備、できていないのに」


 虚しい。

 確かにつばきの言う通りだ。

 神谷くんが仮に浮気をしていたとしても、つばきが彼を好きな気持ちが変わらなければ、真実を見破ったところでただつばきが苦しくなるだけだ。


「……難しい問題だね」


 恋人のいない私には縁のない悩みだが、当の本人からしたら今後の人生を左右する大問題だ。


「あたしさ、真斗と結婚してもいいって思ってるんだよね」


「そうなの?」


 結婚、というワードに私は思わず口にミートドリアを入れようとしていた手を止めた。


「なに、そんなに意外?」


「いや、意外っていうか……でもそうか。もう結婚なんか考えないといけない歳なんだ」


 私たちは今年で22歳。結婚なんてまだ先の話だと思っていた。そもそも私は結婚云々の前に恋人さえできないのだから。


「20代なんてあっという間よ。早いとこ相手見つけとけないと30手前で男に捨てられる未来なんてあたしは嫌だもん」


 そんな人は世の中にごまんといるだろうけれど、将来計画に抜かりがないつばきが考えていそうなことだ。私は目的のためなら手段を選ばないタイプなので、もし30手前で独り身だったら結婚相談所でもお見合いでもなんでも使うだろう。だができれば結婚相手とは自然に出会いたい——それはすべての女子が願うことではないだろうか。


「とにかく、カナももし真斗と会うことがあったらさ、それとなく様子を探ってみてくれない?」


「会うことがあればね。でも神谷くん理系だからな。あんまり会わないと思うけど」


「いいのよ。もし何かの偶然で会ったら、ということで」


「分かった」


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