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第4話 思い出の切れ端

「人殺しってしたことありますか?」

 僕は隣に座っている部活の先輩に尋ねた。

「私は己すら殺せぬ腑抜けさ。ましてや他人を殺すことなど、できるはずがなかろう」

 カッターの刃を出し入れしながら言われても、全く説得力がなかったが、まあ普通はないだろうと納得した。

「私は他殺は好きではない。いや、好きなやつがいたらどうかと思うが」

「カナタは自殺志願者ですもんね」

「ふふっ、わかっているじゃないか。それで、どうした? 急にそんな質問をして」

「いえ、ふと、カナタに初めて会ったときにされた質問に答えようと思いまして」

 相模さがみ叶多かなた——自殺志願者という異様な側面を持つ部活の先輩は、初めて会ったとき、たった一人文芸部の見学に来た僕に、こんな質問を投げ掛けた。



「自殺したいと思ったことはあるか?」



 初対面の人に言う台詞ではないだろう。あのとき僕はこの問いから逃げた。普通の人もそうするかもしれない。普通の反応だったのかもしれない。

 でも僕は、この問いから逃げてはいけなかったのだ。

「あります。何度も。特にあの子が死んだときは心の底から自殺したいと思いました。そしてそれ以来、そう願うのをやめました」



 僕、ひいらぎ友人ゆうとは自殺一家と呼ばれる家に生まれた。というのも僕が生まれる前に母方の祖母と伯父が自殺し、僕が生まれてからは祖父が自殺した。

 僕が物心ついて間もなくして、母も自らの手首を切り裂いて死んだ。母の死は鮮明に覚えている。その頃僕はまだ[死ぬ]という言葉の意味をよくわかっていなくて、母さんが勢いよく自分の右手首を切り刻んで、そこから血が溢れて流れていくのを呆然と見つめていた。その意味さえもよくわかっていなかった。ごめんね、と言って僕の頬に触れた母さんの手が温かく、赤く濡れていたことをよく覚えている。仕事から父さんが帰ってきて、動かなくなった母さんを見て、何故黙って見ていた、と言って僕を殴ったこともよく覚えている。痛かったけれど、何故か涙は出なかった。泣き方もよくわからなかったのだ。

 小学校に入ってからは自殺一家だということで無視されたり、避けられたりしていた。学校に僕の居場所はなかった。朝、学校に行くと、机も椅子も教室にはなかったし、休み時間に教科書やノートが盗まれるなんてざらだった。

 先生にそんな被害を届けても、広い学校の中、犯人探しなどしてくれることもなく、僕一人の声は忘れられてしまった。別に、僕も犯人にやめてほしいというだけで責めるつもりはないのだから、大事にしないようにと心がけていた。ただ時折、どうしょうもなく虚しくなって、死にたくなった。父さんにお前は絶対に死ぬな、と言われていたので、死にたいと思うたび、その言葉を思い出して耐えていた。

 学年があがっていくにつれ、いじめはエスカレートしていった。みんな僕をいじめることを楽しんでいるようだった。もしくは、僕がいじめられているのを見て楽しんでいた。鞄の中や下駄箱に悪戯されていることに気づいて呆然としている僕を見て、みんなが喜んでいることに気づいた。先生にそれを言いに行ったときだ。先生の顔に浮かんだ真意に気づいてしまった。またか、面倒な、と。その思いのとおり、先生には適当にあしらわれた。

 先生からも見放された僕は、本当に死のうかな、と少し思った。父さんに買ってもらった工作用のカッターナイフを自分の手首に当てた。

 そのとき、何やってるんだよ!? と止めてくれた人がいた。

 それが今の唯一の友達のたちばな悠斗ゆうとだった。

 悠斗は名前の読みが僕と同じ[ユウト]だったために勘違いされていじめられていたらしい。そして本物の[ユウト]の僕を探していたらしい。

 それ以来、悠斗だけは僕を避けず、普通に接してくれた。いじめは相変わらずだったけれど、悠斗が友達でいてくれたおかげで、そんなに辛くはなくなった。

 中学は少し遠くの学校に行くことにした。悠斗も一緒だった。

 悠斗に勧められて、卓球部に入ることにした。そこでさくらなのはと出会った。

 桜は物静かそうな印象の女の子だったが、卓球では誰よりも積極的に練習に参加し、個人的にも特訓しているがんばり屋だった。

 けれども、その努力は決して報われず、彼女は公式戦はおろか、練習試合にすら出してもらえないような腕前だった。

 彼女は一所懸命努力しているのに、どうして実らないのだろう、という悔しさの矛先をクラスメイトでもあった僕に向けた。僕はずぶの素人だったが、皮肉にも桜から基本を教わると、面白いように上達していったのだ。桜にはそれが理不尽なことに感じられたのだろう。ある日、彼女は僕に尋ねた。

「どうして柊くんはそんなに上手いの?」

「……知らないよ」

 僕は素っ気なくそう答えた。中学の頃の僕は、小学校の頃のいじめでできた傷を引き摺っていて、少々グレていた。

 人称も[僕]ではなく[俺]で、普段から無愛想だっただから素っ気ない返答も、別のことでなら桜もスルーできただろう。しかし、そのときは違った。

「知らないってことはないでしょ! 自分のことなんだし!」

「だからわからないんだって」

「みんなに秘密で特訓とかしてるんでしょ!?」

「してない」

「橘くんとかと。

 うーん、参考書とか?」

「あるけどあんまり読んでない」

「家に卓球台は?」

「ねぇよ」

「むむ~」

 悩み込む桜は、しばらくして思いついたようにぽん、と手をついて言った。

「じゃあ、柊くんは卓球が大好きなんだ!」

「は?」

 何がどうなったらその結論に達するのかよくわからなかった。すると桜はご丁寧に、そしてどこか得意げに説明した。

「ほら~、よく言うでしょ。スポーツはその競技が好きな人ほど強くなれるって」

「……それ、スポ根マンガの読みすぎだから」

「ええ~? 違うの~?」

「第一、好きなだけで上手くなるんだったら、人は何だってできるよ」

 そのとき、一瞬だけ桜の表情が凍りついたのを僕は見た。

「それも、そうだね」

 作り笑いを浮かべて言う彼女はきっとそのとき、僕の台詞を反芻していたのだろう。

 僕はそこで気づいていればよかったんだ。言葉は簡単に人を傷つけられる刃なのだということに。



「そういえばお前、自殺はもう見たくない、とか言ってたな。その桜というのが何か関係があるのか?」

「……桜は三年のときに自殺しました」

「…………まさか、お前のそのときの言葉を引き摺って?」

「いえ、少し違いますが……似たようなものです。僕は彼女に、彼女にとって一番辛いであろうことを言ってしまったんです。あれは、三年の夏の終わりのことでした」


 その年、無名だった中学の卓球部は中総体で全国まで行った。僕がシングルスでそこまで上りつめたのだ。

「柊くんはやっぱりすごいです」

 桜もそう言って祝福してくれた。しかしやはり、自分が出られなかったことを──出してもらえなかったことが悔しかったのだろう。 二人きりになったとき、桜は僕に言った。

「やっぱり、本当は卓球が好きなんでしょう?」

「なんで?」

「そうじゃなきゃ、ここまで勝ち残れないよ」

「なら、どうして僕はここまで来たんだ?」

 卓球で全国大会に行く。それは部の目標であって僕の目標ではなかった。桜の目標であって僕の目標ではなかった。決して僕自身の目的ではなかったのだ、卓球をすることも、上手くなることも。

「柊くんは、卓球、好きじゃないの?」

 僕の問いに答えず、桜は再び問いかけてきた。

「好きでも嫌いでもない」

 なんとも中途半端な、けれども正確な答えを僕は出した。しかし桜は簡単には納得しなかった。いや、認めたくなかったのだろう。

 嘘だ、と続けた。

「好きでも嫌いでもないなら、どうして三年間続けてきたの? どうしてそんなに上手くできるの? どうしてずっと一所懸命にやってきた私より遥か先に行けるの?」

「知るか、そんなの」

 僕はぶっきらぼうに言い捨てた。なおも桜は迫ってくる。

「好きじゃないなら、どうしてそんなに上手なの?」

「できるんだから仕方ないだろう」

 僕は答えるのが嫌になって、返答はさっきよりずっと投げ槍になった。

「仕方ないって何ですか? 質問の答えになっていません!!」

 桜は食ってかかってきた。

「やりたくてやってるわけじゃない。でもできてしまうんだ。単純に手先が器用とか、生まれつき反射神経がいいとか、そんな理由だろう。それを他人に責められる謂われはない」

 感情的になっていく桜に対し、僕は冷静に答えた。桜はこらえきれなくなったように泣き叫ぶ。

「だって、だって! 私は大好きなのに……大好きなのに! 私より好きでもなんでもないあなたが、どうしてそんなに上手いの? どうして? 本当は好きなんじゃないの?」

 その質問はあまりにも一方的で、求める答え以外を受け入れないという強固な姿勢がありありと見えていた。

 これは彼女のエゴだ、と思った。自分勝手すぎる主張に腹が立った。

 だから僕はこう叫び返した。

「嫌いだ!!」

 この一言で充分だった。

 彼女のエゴを──上手くできないと自覚している卓球に対するなけなしのプライドを打ち砕くには……充分すぎた。

「俺はこんなの、大嫌いだ。本当ならラケットにもボールにも触れたくない。でも俺は卓球部だ。卓球部という立場だから、その立場としての責任を果たすためにここにいるんだ。やらなきゃならないからやってる」

「そんな……」

「お前に責められる謂われなんてない。お前が下手なのは俺の責任じゃないからな。責めるんなら、お門違いだ」

 それは僕のエゴだった。

 僕は吐き捨てるように言い、そこから逃げるように立ち去った。



「その翌日、桜は死にました。奇しくも、母と同じ方法でした」

 桜の死を聞いたとき、僕はすぐに自分の言葉のせいだとわかった。桜にとって僕の言葉はきつすぎた。桜が大好きだった卓球を貶し、それに苦しむ桜をも否定したのだ。

「僕はそうやって、桜の心をばらばらに引き裂いて殺したんです。たとえ、法的にはそうでないのだとしても、僕は人殺しなんです。桜を、殺したんです」

「うん、お前の言い分はわかった。しかし、それを思っているのはお前だけではないのか?」

 叶多は厳しい口調で言った。

「そうなのかも、しれません。桜は遺書に[柊くんは卓球を続けてください]と書いていたくらいですから……」

「だから、卓球をやめたのか」

 高校に入った僕は、卓球をやめて文芸部に入った。そのことを悠斗には何度も詰られたけれど、僕はこれでよかったと思っている。最初、卓球をやめたのは[桜のことを忘れるため]だったが、むしろ文芸部に入ってからの方がよく向き合わされている。卓球も少しではあるが、また卓球を始めたし、叶多と話していることだってそうだ。

「まあ、卓球どうこうはさておき。それよりも私が知りたいのは[それ以来自殺したいと願うのをやめた]理由の方だな。自分のせいだと思ったのなら、後追い自殺などは考えなかったのか?」

 とんでもないことをさらりと言う人だ、と呆れつつ、僕は答えた。

「考えましたよ。でも、遺書を読んでやめたんです」

「遺書……その、桜とやらのか」

「はい」

 桜は次のように綴っていた。



 柊くん、この間はごめんなさい。

 でも、やっぱり納得できません。今、本当に好きじゃないんだとしても──大嫌いなんだとしても、柊くんはやっぱり上手いんです。それは絶対に間違ってなんかいません。それに卓球をやっているときの柊くんは輝いています。これも絶対に間違ってなんかいません。だからやっぱり柊くんは卓球が大好きなんだって思っています。

 柊くんがこれを読んでいるとき、私がどうしているかは、正直、よくわかりません。これを書いたら決めます。なんでこんなことを書いているかもよくわかりません。なんでだろう? 止めてくれるわけでもないのに。


 ただ一つ、私は確実に伝えたいことがあります。

 どうか、卓球をやめないでください。絶対に、やめないでください。卓球が下手な桜なのはからのお願いです。卓球をやめないでください。でないと、あなたという存在が大きすぎて、私という存在が押し潰されてしまいそうです。

 わけのわからないことばかり書いてしまってごめんなさい。手紙はこれで終わりです。

 さよなら、友人くん



 僕は文中で三度も繰り返された彼女の[お願い]を裏切った。

「だからせめて、生きていようと思ったんです。自殺すれば、苦しみなんて一瞬で消えてしまうだろうから、生きて、苦しんで、生きようと思ったんです」

 叶多はそれを聞くと、苦虫を噛み潰したような、笑いをこらえているような、複雑な表情で言った。

「お前はMか」


「はい? ……何故そうなるんです?」

「だって、苦しみたいから生きているのだろう? 自分を虐めて楽しいか? それは紛れもなくMの発想だろうが」

「違います。というか、カナタのSM観念がよくわかりません。そもそもここで使う言葉ですか」

 突然何を言い出すかと思えば、と溜め息混じりに返すが、そこでかち合った叶多の目は──どこまでも透明だった。

「言語の論理など、今はどうでもいい。問題はお前が苦しむことを目的に生きていることだ。そんな生き方でお前はいいのか?」

「……自殺志願者に生き方について説教されるとは思っていませんでした」

 苦笑いして僕は続けた。

「いいんです、これで。僕は苦しいかもしれない。でも、それで僕は桜を覚えていられるんです。よく言うでしょう? 人が本当に死ぬのは、誰からも忘れられてしまったときだって。だから僕はずっと桜という思い出の切れ端を死ぬまで忘れないでいようと思っています。……それが人殺しにできる、唯一の償いだと思うから」

 叶多は難しい表情を崩さずに呟く。

「随分と易しくない生き方だ」

「そうですね。でも……僕には悠斗がいます」

 自分と同じくらい、桜の死に苦しんだ友達がいる。そして──

「それに、カナタもいますから」

 この自殺志願者に出会えた。そして本当に大切なことに気づいた。それは、目を反らさないこと。辛くても、向き合うこと。

 思い出の切れ端を、なくさないこと──



「ありがとう」



 友人の言葉に叶多の眉がぴくりと跳ねる。途端に彼女は険しい顔になり、彼を睨む。

「お前、友人ではないな?」

「何を言うんですか、カナタ先輩。……全く、どうして、はあ」

 溜め息を吐く友人は先刻の友人からがらりと雰囲気が変わっていた。柔和な雰囲気が粗野なものへと変わる。彼は友人であり、友人ではない。

 友人の家庭内人格といわれるもう一つの人格である。

「言っとくが、さっきの一言は友人の台詞だったんだからな、本当に。よっぽど強い意志だったんだか、珍しく俺の意識に残っていたんだよ」

 基本的に柊友人の二つの人格は互いの記憶を共有しないらしい。

「はて、どの言葉のことやら」

 意地悪く言う叶多に、彼は思わず拳を握り、ひきつった笑みを浮かべる。

「おい、もう一回言わす気か?」

「なんだ、言ってくれないのか?」

「恥ずかしいんだよ!」

 どこまでも素直な彼の反応に叶多は笑った。先程の友人ならばさらりと言ってしまうのにな、と少し寂しく思った。

「何はともあれ、はじめましてだな、ユージン」

「俺をユージンと呼ぶのはあんたで二人目だぜ。カナタさんよ」

 ユージンの存在を知るのは、友人の父、悠斗の二人だけだった。

 父は彼を[ユウト]と呼ぶが、悠斗は[ユージン]と呼ぶ。

「私を敬称で呼ぶようなけしからんやつにはこれくらいがちょうどいい」

「ご機嫌斜めですね、お嬢さん」

 ユージンの言うとおり、叶多はこの上なく不満そうな面持ちだった。

「当たり前だ。子供で言ったら、お気に入りの玩具を取り上げられたようなものだ」

「友人は玩具かよ……」

「ものの例えだ。全く、細かいところを気にするのはお前も同じだな。私は折角友人本人の口から自殺観を聞けると楽しみにしていたのに、いいところで水を差しおって」

「自殺観って何だよ……?」

 叶多いわく、[自殺]という観点で見る死生観のことらしい。

「俺も曲がりなりにも柊友人本人なんだが」

「記憶も性格も思いも違うのなら、それは別人と同じだ」

「そーかい」

 ユージンは興味をなくしたように叶多から視線を外し、呟くように言う。

「俺の方があんたと気が合うと思ったんだけどな」

「どういう意味だ?」

 不機嫌な面持ちのまま、叶多は問う。

「俺は柊 友人が本来持つ自殺欲求を殺すために生まれたからだよ」

「何……?」

 自殺欲求という言葉に予想どおり叶多は食いついた。

「柊友人が桜なのはのために選んだ道は易しくないし、優しくない。その道を選ぶこと自体、苦しかったんだ。だから、桜を忘れない代わりに自殺をしないという苦しみを忘れることにした。その思いの切れ端が行き着いた先が俺だ。

 俺は、友人ができないことができる──決してやらないことがやれる柊友人だ。だからあいつが吐き出さないようにしているストレスを代わりに吐き出して死なないようにしているんだ。……でも、正直言って、死ぬのが一番楽だと思ってるよ。だって、死んだら苦しむ心もなくなるんだろ? それってものすごく楽だと思う」

「ならば何故そうしない?」

「怖いからさ。心が消えるってことは、俺という存在も消えるってことだ。それに……俺が死んだら悠斗ハルト以外、誰が桜のことを覚えていてやれるんだよ? ……俺も友人も、桜なのはを本当に死なせてしまわないために生きているんだ」

 ユージンの──柊友人の瞳に嘘はなかった。しかし、彼は直後に自嘲のように笑った。

「これも俺たちの嫌いなエゴなんだよ、結局は。俺はさっき言ったとおり、死んだら心は消えると思っている。だったらなんで桜に償いをするんだ? 桜のために生きるんだ? 桜はもう死んでいて、俺の論理じゃ心なんてもう残っていやしない。そのなくなっている心をどうして慰められるっていうんだ? どうして慰めようなんて思うんだ? ……それは俺自身がそうすることで満足するからさ。つまるところ、自分の都合なんだ。

 ——エゴなんだよ、この償いは」

 そう言って笑うユージンを叶多は傷ついたウサギを見るような目で見た。

「悲しいんだな、お前は」

「そーかい」

「死なないために、自分を否定して生きるのか」

「そのとおりだ」

「辛くないのか?」

「辛いさ」

「死んだ方がましと思っているのだろう?」

「全くだ。……それでも、俺はこの償いをやめられない。エゴを捨て去ることは……できないんだよ」

 叶多はこの少年を見ているうちに、憐れんだらいいのか、悲しんだらいいのか、よくわからなくなった。だから、一言呟いた。

「捨ててはいけない、思い出の切れ端、か」

 呟いて、抱きしめた。

 死ぬに死ねない少年を、受け入れようと、抱きしめた。


 許されなくていいから、もういない君の分まで、ちゃんと苦しんで生きるから、さようなら。

 新しい好きな人を、好きになってもいいですか?


 思い出の切れ端~了~

 されどこの物語は続く……

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