奥に着くと、どこかに繋がっているのだろう、金属の扉があった。
鍵は腐食し、壊れており、中に入る事が出来そうだった。
(入るしか、なさそうね)
彼女は慎重に扉を開ける。そして、中に入るとそこには見覚えのある機械が、一台置かれていた。
それは、人造吸血鬼を創り出す時に使用する装置。
――人間を人外にするための、機械だ。
それのおそらくプロトタイプと思われる物を、睨みつけた後、彼女は室内を見渡す。壁一面に広がる金属製の棚を見やり、手がかりを探す。
大体の資料はおそらくどこかに持ち出されたのだろう、空きの多い棚を漁る。
(目ぼしい資料は、残されているわけ……ないわね)
そう思い、この場から立ち去ろうと棚から離れた時だった。入口付近に置かれていた古いモニター付きの機械に視線が行く。
(これは……確か、旧時代のパーソナルコンピューター? だったかしら?)
任務を行っていた頃、ジャンクの山の中で見た事のある機械。ジャンク好きな人造吸血鬼とたまたま遭遇した際に、延々と解説されたのを思い出して、思わず苦笑すると、彼女はパーソナルコンピューターに近づく。
(確か、電源があって……ここね? これを押したら動くかしらね)
電源スイッチを押すが反応はない。彼女はため息を吐くが、ふと、ある事に気づく。
(そういえば、確かコンセントに挿す必要があったわね……)
パーソナルコンピューターが置かれているデスクの下に潜り込むと、抜けたコンセントを発見した彼女は、少し迷って自身が持つ端末に差し込んだ。
人造吸血鬼には、ある程度自家発電能力がある機械端末を渡されているのだ。
都合が良い事この上ないが、利用しない手はないと判断した彼女の思惑通り、パーソナルコンピューターの電源がしばらくして点いた。何年どころではない期間、放置されていたというのに、しっかりと機能する目の前の機械に感心しながら、彼女はおぼつかない操作で、動かして行く。
(えーっと、欲しい情報は……うん? 『人工的なウィルス開発におけるリスクとデメリットについて』ですって?)
気になるタイトルのレポートを見つけ、息を飲みながら彼女はファイルを開く。その手は、心なしか震えていた。
レポートが立ち上がり、その内容を自身の端末にダウンロードしながら、読めるだけ読んで行く。
いくら独学で読めるようになったとはいえ、内容が一回では理解出来そうにないと判断したからだ。
そうして、ダウンロードとある程度読み終えた彼女の胸中に宿るのは、こんな世界に
「必ず……殺す」
彼女は、今度こそこの建物から立ち去るべく出口を探す。どうやら、この部屋には非常口が着いているらしく、そこの扉は壊れていたが、無理矢理こじ開け、外へ出る。
なびく風に、心地よさと怒りを感じながら、彼女は次なる目的地へ向かう。
目指すは……この国を実質支配しているラヴェンデル・メテオーア社の現本社だ――