未知のウィルスにより、人々が異形となる現象が多発した世界。
富裕層は安全区域と呼ばれるドーム状の中に住まい、中間層はその近くで恩恵を受けながら暮らし、貧民層は感染症に怯える日々。
そんな世界において、感染者達を治す術はなく。
その結果、生み出されたのが感染者達を食らう捕食者たる――人造吸血鬼と呼ばれる存在達だ。
元々人間だった彼らは、新技術により人造吸血鬼となった。
その理由は人それぞれ。
――金のため。
――守りたい者のため。
様々な想いを背負い、彼らは今日も感染者達……俗称を
藍き血者を殺す方法であり、かつ、人造吸血鬼達にとって唯一のエネルギー源だからだ。
もっとも、代替え品は補給物資として勿論入っている。
だが、それでは不足する上身体が強化出来ない。
それ故に、人造吸血鬼達は獲物を求めて危険地帯へと赴くのだ……。
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サーチ用の空中浮遊する自動AIが稼働を始める。
それを見つめながら、彼女は自身の髪に触れる。人間だった頃綺麗な金髪だったその髪は、今や水色に変異しミディアムにまで切りそろえられている。そんな彼女の服装は、ピッチリとした黒の専用スーツだ。その上からカーキ色のボロボロになった布を纏っている。
彼女の腰には二対のナイフと、鈍色に光る自動拳銃が装備されている。この拳銃の弾丸は特殊な素材で出来ている。というのも、藍き血者は通常の武器が一切効かないからだ。
「標的はどこに?」
『アハト=ディソナンツ。ここからはサーチ出来ません。別の場所に移動する事を推奨致します』
識別名称を呼ばれた彼女は、表情を変える事なく静かに頷き場所を移動する。両腕に着けたワイヤーを交互に射出しながら、荒廃した街の残骸を駆け抜ける。尋常ではない素早さも、身体にかかる重力も気にする事なく進む。この身体能力の高さも、人造吸血鬼であるが故だ。
彼女は自ら人である事を捨てた。
そこに後悔はない。
あるとしたら……。
(気にしても仕方ないわ。今は狩りが最優先よ)
『サーチ範囲内に、標的を発見致しました。その数、六
「わかっているわ」
彼女……アハトは自動拳銃を構え、近い位置の一匹に向かって弾丸を放つ。藍き血者となった存在は、人の形を無くし、異形……要するに奇形になっている。関節は曲がり、顔は崩れ、筋肉は膨張し、完全に変異している。
その血をすすり、消滅させるのが――仕事なのだ。