ザーーーーーーーーー。
オレは雨の降る墓場に立っていた。
あふれる涙がとまらない。
不治の病で彼女は逝ってしまった。
その世界でのオレはピアノは本業ではなかった。
オレは家業を継いで寿命まで生き、死んだ。
楽譜は未完成のままだった。
※※※
「――え」
オレはうたた寝から目をさました。
「少し寝てたね」
花音がそう言った。
――前世であれだけ愛していた彼女が、元気で、目の前にいる。
今生の指の怪我を忘れるくらいの衝撃と喜び。
前世のオレが心の中で、震えて泣いている。
「やだ、泣いてるの? 怖い夢でもみたの?」
花音は笑ってオレを小突いた。
オレは彼女に抱きついた。
「ちょっと!?」
生きている。
彼女が生きている。
オレはその気持が落ち着いてからは、学校に行くようになったが。
ますます花音に甘えるようになった。
「ほらーーーーーーーーーーーーーー起きなさいよ!!」
「やだ」
「起きなさいって」
「いやだ」
「そんなだともう起こしてあげないわよ!!」
「それもいやだ」
「きーーーーーーーっ!!」
花音にかまわれたい。
オレは朝にこのやり取りをやりたくて、わざと起きなかった。
うれしい。
ずっとこんな日々が続けばいいのに。