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第450話

 菫がやってきた事を知るなり、仲間内と桃紀が神森家にやってきた。

 そして地上の学校という物について菫と朝から話し合いをしているのだが、話しているのは桃紀と菫で、他の者達はただその会話を聞くだけだ。

「なるほど。地上では男子と女子では学校に通う割合が違うのね」

「ええ。でも私はそんなのは時代遅れだと思っています」

「そうね。それは私も都で常々感じているわ。この節子さんと言う方はよほど頑張られたのね」

 桃紀は言いながら手元の資料を興味深げに見つめている。そんな桃紀に菫は深く頷いた。

「節子さんは私の尊敬する方です。この方のおかげで私は進学を決めたと言っても過言ではありません。それから学校を作るにあたって最も重要なのはやはり教師です。教師の質が低いと、生徒の未来に影響が出ます」

「そんなに?」

「はい。学校は朝から夕方ごろまであり、一日のほとんどを子どもたちはそこで過ごす事になります。そこで触れ合う大人の質が低ければ、必然的に子どもにも影響が出る。教員を目指した者たちが一番気をつけなければならないのは、教師は子どもたちの未来や成長に大きく影響する存在だという事です」

「それは確かにその通りかもしれないわ。龍の倫理はあなたも聞いているかもしれないけれど、酷い物よ。今は大分改善されたけれど、それでもまだまだ人間には及ばない。私はここの根底の部分を解決したいの。出来ると思う?」

 菫を試すような桃紀の言葉に菫は微笑んで頷いた。

「それこそ、私がこの都へやってきた二番目の理由ですから」

「あら、どういう事?」

「私の妹が前の戦争で龍たちに狙われたのをご存知ですか? あの時、私は心に誓ったのです。龍の性根を叩き直してやる、と」

 その言葉にギョッとしたのは部屋の隅で縮こまって話を聞いていた鈴と楽だ。

「す、菫ちゃん!?」

「お、お前! それは秘密にしとけよ!」

「どうして? ここに居る人達は信頼出来ると思ったから話したのよ。だっていつまでその価値観でいるつもり? 地上では洗濯機が出来た。そして海外では電気の冷蔵庫まで発明された。それなのにあなた達はまだそんな事にこだわるの? いつまで? 永遠に? 地上の発明品を使っているくせに? おかしいでしょ?」

 菫の言葉に千尋と桃紀は頷き息吹は拍手しているが、流星の顔は険しい。

「あなたは未だにそんな顔をするのですか? 流星」

 千尋が問いかけると、流星はゴクリと息を呑む。

「すぐには……受け入れられないよ。悪いけど。千尋くんと鈴さんの結婚とは訳が違う。今の発言は反逆罪にも相当すると取られても仕方ない」

 流星の言葉に菫は頷いて言う。その眼差しは真っ直ぐで、やはり鈴とよく似ている。

「王様、だからあなたの前で話したんですよ。それにそれは最初から百も承知です。でも言いたかった。言わなければならなかった。何故なら、あなた達がいつまでもそんなだから。王のあなたがそんな事を言うという事は、大半の龍がまだそんな事を考えているという事でしょう? このままじゃいずれ、また前のような事が起こるわ」

 王に対してもピシャリと言い切った菫に千尋は心の中で拍手していた。そしてそれまでずっと黙って聞いていた羽鳥は口笛など吹いている。

「いいねぇ。桃紀、どう?」

「私は好きよ。他の皆もでしょう。後は王ですが……」

 そう言って桃紀は何か言いたげに流星を見た。そんな桃紀の視線を受けて流星は頭を抱え込む。

「あーもー! だから嫌だったんだ! どうして俺の周りにはこんな気の強いのばかり寄ってくるんだよ!」

 頭をかきむしる流星を見て心配になったのか、鈴が柔らかい声で流星に話しかけた。

「流星さま、これを飲んで落ち着いてください。菫ちゃんはこう言ってますが、本当に純粋に龍の都を変えたいと思っているんです。でもそれは地上に都合の良いようにって意味じゃありません。都の龍の皆さんにとって過ごしやすくなるようにと思っているのです」

「……そうなの?」

 鈴の言葉に流星がようやく顔を上げて菫を見ると、菫はフンと鼻を鳴らす。

「当たり前でしょ。だって私もこれからここに住むのよ? ちょっとでも過ごしやすくしたいと思うのは当然じゃない」

「ほら! 菫ちゃんは正しい人なんです! 千尋さまと同じぐらい私の尊敬する人です! 確かに口調はきついですが、間違った事は言っていません。倫理観を皆が知る事で都は千尋さまが目指す温かくて過ごしやすい場所になると私は思います。少なくとも千尋さまや楽さんのような方は減るのではないでしょうか?」

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