「鈴が良い」とはっきり言いきった千尋に鈴は思わず息を呑んでしまった。胸のあたりが締め付けられるように苦しくて熱くなる。
「あたしだってそうだよ! そりゃちょっと反対もしたけどさ」
「雅さん、私はあれを反対だとは思ってませんよ」
「え?」
「私の事を心配してくれたんだって思ってます」
「……そ、そりゃ心配もするさ。こちとら歴代の嫁見てきてんだから……」
そう言って雅は猫の姿になって鈴の膝の上に飛び乗ってきた。
最近気づいた事だが、雅は照れたりしょんぼりすると猫に戻る。そうしたら顔色を隠せると思っているのかもしれないが、人型で居る時よりも猫の時の方が雅は分かりやすい。
そんな雅を見て千尋は微笑みながら言った。
「それについても私は解決策を探すつもりです」
「どうやってさ」
「タイミングの良い事に、もうじき私の里帰りなんですよ。もしかしたらあちらの文献に何か解決策があるかもしれないでしょう?」
「そうだった。すっかり忘れてたよ。いつだっけ?」
「今月の終わり辺りです。それから一ヶ月ほど私は家を空けますが、家のことをよろしくお願いしますね、鈴さん」
「は、はい!」
千尋に家の事を任されるなんて思いもよらなかった鈴は勢いよく頷く。千尋が居ない間もしっかりと神森家を守ろうと心に誓うと、そんな鈴を見て千尋が笑った。
「そんなに気合を入れなくてもいつも通りで十分ですからね。雅達の事、どうぞよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ!」
「このまま鈴が女主になったら、あたしは楽が出来ていいねぇ」
そんな事を言って洗濯物を猫の姿で器用に畳む雅に、鈴と千尋は思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
「ところで鈴さん、クリスマスプレゼントは何が良いですか?」
一しきり笑ったところでふと千尋が言った。
「え?」
あまりにも唐突で鈴が思わず首を傾げると、千尋は少しだけ考えてハッとした顔をする。
「クリスマスは確かサンタクロースがやってくるのでしたか?」
「えっと」
戸惑う鈴にさらに千尋は困惑した顔をする。そんな千尋を見て雅がおかしそうに言った。
「サンタクロースはさり気なく何が欲しいか聞くんだよ。そんな真正面から聞いちゃ意味が無いじゃないか」
「そうなのですね……すみません、勉強不足で」
そう言って申し訳無さそうに言う千尋に鈴は慌てて両手を振る。