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第41話

 いつかまた出来ればいいだなんて淡い夢を抱いていたけれど、それがまさか叶うだなんて思ってもいなかったのだ。


「見てもいいですか?」

「もちろん」


 鈴は千尋の答えを待って箱の前にしゃがみ込むと、中を覗き込む。電飾の他にも色々な飾りが入っていて今からウキウキしてしまう。


「喜んでいただけたようで安心しました」

「嬉しいです! 凄く楽しみです。当日は私が料理とケーキを担当してもいいですか?」

「もちろんです。私達も現地のクリスマスを体験出来るのは貴重ですから、よろしくお願いします」

「はい!」

「それではこれは明日、誰かがここから出してくれたら屋敷に運びましょう。とりあえず今は寝床を確保しないといけませんね」


 そう言って千尋は蔵の中をあれこれ歩きまわりだした。こんな時でも一切の動揺を見せない千尋は、見た目は穏やかで美しい人だが、中身はとても頼もしい


「お昼に掃除をしていた時に毛布をいくつか見つけましたよ。えっと、こっちに――ひゃぁ!」

「危ない!」


 昼間に雅と二人で協力して棚の上に上げた荷物を取り出そうとしてバランスを崩した鈴は、落ちてくる荷物に思わず目を閉じた。


 けれど、そのまま千尋が抱きしめて庇ってくれたので事なきを得た。


「大丈夫ですか?」

「す、すみません! 千尋さま、お怪我はありませんか!?」


 屋敷の主に鈴の不注意で怪我などさせてしまったら大変だ。

 鈴は急いで千尋から離れてどこにも怪我がないか確認していると、そんな鈴を見て千尋が笑った。


「こんな事ぐらいで龍は怪我などしませんよ。それよりも! あなたは小さいのですから高い所にある物は私に言えばいいのに。今みたいに上から物が降ってきたら危ないでしょう?」

「……はい。次から気をつけます」

「そうしてください。はぁ、ヒヤっとしましたよ」


 そう言って千尋は落ちてきた物を見て苦笑いをすると付け加えた。


「ですが、これで怪我をするのは難しいですね」

「はい。中身は布物なので」

「そのようです」


 ばつが悪そうに笑った千尋を見て鈴も小さく微笑むと、頭を下げる。


「ありがとうございました、千尋さま」

「いいえ、どういたしまして」


 それから二人で何とか簡易的な寝床を確保すると、それぞれの寝床の間に仕切りを置いた。


「すみません、こんな形になってしまいますが大丈夫ですか?」

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