431. 後輩ちゃんは『リラックス』しているそうです
愛梨ちゃんの初めての企画配信を終え、『あかくま50』の最後の準備をしながら毎日の配信をこなしていく。
そして8月23日。『あかくま50』の配信当日を迎える。今回は司会のライバーの数が前回より多い4人なので、スケジュール的にはかなり休憩もとりやすく体調管理もしやすい。
企画段階のものから、ライバーのスケジュールや内容を見直して、多少変更や企画追加などもあったが、なんとか無事に完成することができたし、あとは配信を成功させるだけだな。
オレは今、彩芽ちゃんと共にリビングの掃除を終えて、いつもオフコラボをするときに泊まってもらう部屋で機材と戦っていた。
「これは……こうかな?」
「颯太さん。間にこれを……いれないとダメじゃないですか?」
「え?それ何?」
「……分かりません」
とこんな調子である。今回の配信のために運営から配信パソコンを借りることになったのだ。ノートパソコンも絡めて配信すればいちいち移動したりしなくても済むし、前回はソファーで寝たりしていたけどきちんとベッドで寝ることが出来るからな。
「これは……この配線……ここじゃないですか?」
「……じゃあこっちは?」
「……分かりません」
そんなやり取りを10分おきくらいにしている。彩芽ちゃんもパソコンに詳しいわけではないのでなかなか難しい状況だ。
「……衣音ちゃんに連絡して少し早めに来てもらおうか」
「そう……ですね」
集合時間は15時だったが、衣音ちゃんに連絡して少し早めに来てもらうことにする。そして14時を回る頃衣音ちゃんが来てくれる。
「ごめんね衣音ちゃん」
「いえ大丈夫です。これですね?」
衣音ちゃんはそこにあるパソコンや機材を見て、すぐに配線を繋ぎ始める。オレと彩芽ちゃんは完全にいらない子状態である。そしてものの10分ほどでパソコンを起動させ設定も終わらせる。さすがは衣音ちゃんだ。
そんなこんなで準備を終え、朝比奈さんも合流し最後の打ち合わせを済ませて時間は17時。前回と同じく決起会をやることになった。と言っても出前のお寿司やらピザ、ポテトなどを食べる普通の夕飯だけどさ。
そして彩芽ちゃんと衣音ちゃんはお風呂を済ませている。2人は最初の深夜の長時間枠を担当することになっているからな。
「それじゃ『あかくま50』の成功を願って始めようか」
「彩芽ちゃん。お寿司とってあげる。何食べる?」
「あの……海老と玉子……」
「えびたまねw」
「はっ……恥ずかしい……」
なんか前回もこんなやり取りしていたな。でも朝比奈さんと彩芽ちゃんは本当に仲が良いよな。そのあと朝比奈さんは衣音ちゃんの分も取り分けている。朝比奈さんって……なんか……めっちゃ気が利いて良い子なんだよな。本当に配信とのギャップがあるし……
「神崎さんは何食べますか?」
「オレは適当に食べるから大丈夫だよ。それより朝比奈さんもいっぱい食べて」
「あ。はい。そうします」
なんか……彩芽ちゃんが好きになるのも分かるような気がする。女子力高すぎない?そんなこんなで楽しく決起会を終え、時間は18時50分。SNSで告知し、かなりの反響が来ている。あとは上手く行くことを祈るだけだな。
「オレの左が衣音ちゃんで、右が彩芽ちゃん、その隣が朝比奈さんでいいですか?」
「はい。その方が『あるましろ』と『ましのん』になるので配信やりやすいと思いますよ」
「私は……『ましのん』以外認めてませんから」
「私は『あるましろ』推してないからね?神崎マネージャーが推してるだけだからw」
と、配信前なのにも関わらず緊張どころか、いつものやり取りができるほどリラックスして配信を待機している。彩芽ちゃんも衣音ちゃんも成長しているんだな。
「さぁ時間だ。みんな楽しんで行こう!」
オレがそう言うとみんなは大きく頷いてくれる。そして時間は19時になり、そのままマイクのスイッチを入れる。Fmすたーらいぶ夏の名物、地獄耐久配信『あかくま50』が今始まるのだった。