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407. 姫は『怖い』そうです

407. 姫は『怖い』そうです




 7月20日。『すたフェス』当日を迎える。そしてなぜかオレの家に1期生が集まるオフコラボが実施される。


 そう言えば、月城さんと今年も1期生オフコラボしたいって話してたっけ。あれから半年だもんな。まさか実現するとは……それに実際にオフコラボをしたのは『ましポん48』の『グランメゾン・リリィ』以来だから約1年ぶりか。


 そんなことを考えながら自分の部屋を掃除し、リビングの掃除をしようと降りてくるとそこには桃姉さんがいた。


「え……」


「おはよう颯太。どうしたの?」


「何……してるんだ?」


「え?リビングの掃除してるのよ。今日は他の1期生が来るんでしょ?」


「どした?掃除するとか……体調悪いのか!?」


「あんた失礼ね。私だってたまには掃除ぐらいするわよ」


「たまに……な……」


「何よ?悪い?」


 オレは桃姉さんに睨まれる。昔から仕事が忙しい桃姉さんに代わって、洗濯以外の家事はオレがやっているからな。最近は彩芽ちゃんもやってくれているけど。


「配信どうするの?ここでやる?」


「あー……確かにリビングのほうがいいか。月城さん飲みたいだろうし、冷蔵庫が近いしキッチンで何かつまめるものを作ったほうがいいか。それにオレの部屋に4人は狭いよな」


「ならみんなが来る前に準備しちゃいましょうか?」


「え?本当に桃姉さん大丈夫か?優しくて怖いんだけど……」


「うるさいわね。私は事務所のマネージャーなんだからライバーの手伝いだってするわよ」


 桃姉さんはそう言ってキッチンからリビングに向かって掃除を始める。なんか久しぶりに姉と弟って感じの雰囲気でなんか懐かしい気分になるな。


 そして色々準備をし16時を回る頃、インターホンが家中に鳴り響く。どうやら1期生がやって来たみたいだ。オレはそのまま玄関に向かい出迎える。


「いらっしゃい。どうぞ」


「お邪魔しま~す!」


「元気だね七海ちゃんw」


「おっお邪魔します……」


「どうしたの?紫織ちゃん?初めて彼氏の家に来た彼女みたいに緊張してるけどw」


「え?そっ!そんなんじゃないわよ!変なこと言わないでよ陽菜!」


 顔を赤くしながら立花さんは月城さんに怒鳴ってる。そんな反応されるとこっちも緊張してくる。とりあえずリビングに案内し、軽く打ち合わせをしながら雑談をする。


「ねぇ紫織さん。何か作ってよ?あたし唐揚げ食べたい」


「え?なんで人の家のキッチンで何か作らなきゃいけないのよ」


「いいじゃん。いいよね颯太?」


「作ってもらえるなら助かりますけど。材料は適当に冷蔵庫のもの使ってください。足りなければ買いにいきますから」


「紫織ちゃん。私、だし巻き玉子食べたいなぁ?あとサラダw」


「分かったわよ……颯太、エプロン貸してもらえる?」


 日咲さんと月城さんの急な無茶ぶりにも立花さんは応えてくれるようで、キッチンに向かい冷蔵庫から材料を取り出し料理を始める。本当に立花さんは料理できるし、美人だしあと胸も大きいし……いやいや違うんだ彩芽ちゃん!別にこれは浮気とかじゃなくてただの感想だから!


「あれ?颯太どした?紫織さんのことガン見してw」


「ガン見なんかしてないだろ!」


「いや、してたじゃんw女の子そういうの分かるから。ね。陽菜ちゃん?」


「颯太君も男の子だし、紫織ちゃんの身体見てたんじゃないw」


「やめてください立花さんに失礼ですから。もう酔ってますか月城さん?」


「ひどいなぁ颯太君w」


 そんなやり取りをしながら、配信準備をしていく。そして18時20分。配信10分前。リビングのテーブルには立花さんが作ってくれた料理と何種類ものお酒、そして1台のノートパソコン。前回と同じで最初の30分は雑談をすることになっている。


「こんなもんか……準備大丈夫ですか?」


「私は大丈夫よ」


「颯太君ビールでいい?紫織ちゃんと七海ちゃんは桃……ましろ缶でいい?」


「ましろ缶懐かしいんだけどwあたしはそれでいいよ!」


 ……準備ってお酒の準備のことじゃないんだが?1期生に言ったところで仕方ないんだろうな。本当に配信歴が長いから緊張してないだろうし、どっちかと言うと友達と遊んでる感覚なんだろうし。まぁ……オレも今ではこの空気感が好きではあるけどさ。


 こうして約1年ぶりの1期生のオフコラボ、そして『すたフェス』同時視聴配信が始まるのだった。

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