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405. 姫も『恥ずかしい』そうです

405. 姫も『恥ずかしい』そうです




 時間は22時30分。オレたちは収録スタジオに移動し、そのまま『ましリリィの3Dコラボ』の歌収録に入る。ちなみに高坂さんは残業の関係で帰っている。


 彩芽ちゃんの曲は速くて歌唱が難しいが、『ホワイトプリンセス』と同じくらいなので問題はないと思う。衣音ちゃんの曲は……歌詞が可愛いから恥ずかしいけど。問題は朝比奈さんの曲だよな……ダンスが難しいので何回も撮り直ししそうで怖い。


 そしてこのコラボでは、『すたフェス』が新曲のオリジナル曲なので前回のオリジナル曲を歌うことにしている。その方が違った曲を聴けてリスナーも喜びそうだしな。


「じゃあまず、かのんさんの曲から撮りましょう」


 そうスタッフさんに言われてオレと彩芽ちゃんはカメラの前に立つ。そして歌の収録が始まった。彩芽ちゃんの歌は何度も聴いてるけどやはりこんな速い曲を歌い上げるのは凄いと思う。


「お疲れ様彩芽ちゃん」


「はい。颯太さんも……とても良かったです」


「ありがとう。次は衣音ちゃんの曲を撮ろうか」


「あっはい。歌詞割り大丈夫ですか神崎マネージャー?」


「うん……結構恥ずかしいけど頑張るよ……」


 そして、今度は衣音ちゃんの曲を撮ることにする。まぁ衣音ちゃんのは……歌詞が可愛すぎて恥ずかしいだけだからな。まぁそれがオレにとっては問題なんだが。


 そのまま衣音ちゃんの曲の収録も終わり、スタッフさんに確認してもらうと、特に問題はないとのことでそのまま続けて朝比奈さんの曲を撮ることになったのだが、やっぱりダンスがキレッキレで難しく、案の定何回も撮り直しになってしまう。


「神崎さん。1度休憩にしましょうか」


「うん。ごめんね朝比奈さん」


「いえ。気にしないでください」


 朝比奈さんは笑顔でそう答えてくれる。本当に申し訳ない……でも本当に難しいんだよこの曲のダンス……と心の中で自分に言い訳をしていると、スタジオに誰かが入ってきた。


「お疲れ様」


「立花さん?」


「紫織さんお疲れ様です」


「これ差し入れね?みんなで食べて?」


 そう言って差し入れのシュークリームや飲み物を彩芽ちゃんと衣音ちゃんに渡す。みんなは立花さんにお礼を言い、そのまま休憩し始める。


「颯太。ちょっといいかしら?」


「はい?」


 オレはそのまま立花さんに連れられてスタジオを出て休憩室に向かう。


「収録どう?」


「いや、朝比奈さんの曲のダンスが難しくて今何回も撮り直してるところですよ」


「ふふ。あの曲難しいわよねw私がやらなくて良かったわ」


 立花さんはそう言って笑う。まぁ立花さんも他のライバーさんと収録してるから文句は言えないけど。


「あの……立花さん?」


「何かしら?」


「えっと……何かありましたか?」


「えっ?」


「いや、わざわざスタジオを出て休憩室に向かうってことは……何かあるのかなって?」


 そうオレが言うと立花さんは驚いた顔をして、そしてすぐに顔を赤くしながら、少し照れ臭そうに微笑みながら話す。


「……恥ずかしいからよ。みんなの前であなたと話すのが。そもそも事務所であなたと会うことないじゃない。陽菜や七海がいるならまだいいけど……だからよ……」


 えっ?そんな理由?そんなこと言われるとこっちも恥ずかしくなって来るんだが……確かに……あまり他の人がいるところで立花さんと話したことはあまりないかも。と、とにかく何か話さないと……


「たっ立花さんの方は収録どうなんですか!?」


「えっ私!?私は……問題なく進んでるわよ。そう言えば、最後はあなたとオープニングとエンディング、あとは曲も収録しないとよ?」


「そうですね。でも……この大変な分だけ、自分が『姫宮ましろ』として頑張って来た証拠ですからね。あの時から……本当にFmすたーらいぶは大きくなった」


「そうね。今度5期生も入って総勢21名のライバーが在籍することになるわ。いつまでみんなを引っ張っていけるか分からないけど、まだまだトップの座は譲るつもりはないわよ私も。後輩に負けないようにお互い頑張らないとね?」


「そう考えると……この『ましリリィの3Dコラボ』はインパクトを与えられるかもしれませんね?リスナーさんもライバーさんにも」


「そうなると良いわね。だから、ダンス頑張りなさいね?」


 そう言ってお互い顔を見合わせて笑う。そのままオレと立花さんはスタジオに戻り収録を再開する。オレはこの仲間たちのためにも、Fmすたーらいぶのためにも……エースとして、もっと頑張らないといけないな。


 ちなみに収録は朝比奈さんがダンスの振り付けを簡単なものに直してくれたので、OKを貰うことが出来た。

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