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400回記念SS 『闇を暴く名探偵誕生!』(前編)

400回記念SS 『闇を暴く名探偵誕生!』(前編)



気づけば400話ですね……今回はそれを記念して、Vtuber事務所『Fmすたーらいぶ』の1期生の闇を暴く名探偵『青嶋ポアロ』探偵として活動する日咲七海のVtuberになるきっかけのショートストーリーです。ぜひポアロ探偵推し!七海ちゃん推し!の人はお楽しみくださいませ




 時間は深夜1時。明かりも点けずに暗い部屋で1人パソコンをいじっていた。パソコンのモニターがぼんやりと、部屋の暗さに適応していく。


「こんなもんかな。明日はレアアイテムの情報とか更新するか!」


 大好きなRPGの攻略サイトを真似た自分のブログの更新を終え、布団に入る。誰のためにやっているわけでもない、ただの自己満足。それでも、あたしの心は満足感で満ちていた。


 毎日のように好きなゲームをやり込み、ブログを書き続ける日々。理解はしてもらえないかもしれないけどすごく充実していた。


 あたしの名前は日咲七海。20歳。今は専門学校に通いながら一人暮らしをしてる。趣味はゲームで、昔からのゲームオタク。特にRPG。理由は、色々な攻略方法があって自分だけのやり込み要素があって楽しめるから。最近は、趣味が高じて色々なRPGの攻略サイトの真似事をしたブログを始めたりしている。


 小さな頃から家に引きこもってゲームばっかりしていたため友達も少なく、専門学校に通うようになっても、周りの女子の話題は彼氏だのコスメだのの話で。あたしはその話題はからっきしだから学校では浮いた存在。


 でも、あたしはそれでいいと思ってる。だって楽しいんだから。あたしにとってRPGゲームをやること、それが生き甲斐とまで今は思っている。



 それなのに……



 最近、なぜか少し物足りなさを感じていた。理由は分からない。毎日充実した日々を送れているのに……ゲームをしている時、そしてブログを書いているとふと感じることがある。


(もっとたくさんの人にあたしのやっていることを知って欲しい……)


 そんな浅はかな気持ちが芽生え始めていたのだ。ゲームの配信者やゲーム実況者なんて人もいることは知っている。それになればいいんじゃない?と思うかもしれないけど、でもそれは無理な話だろうと思う。あたしにはそこまでの勇気がない。


 そんなモヤモヤした気持ちを払拭するために、ゲームに夢中になりすぎて気づいたら夜中になっていたりすることはよくある。


 起きなきゃ遅刻するくらいのギリギリの時間のアラームでやっと目を覚まし、急いで学校に行く準備をして学校へ。授業が終わり、家に帰ってから再びゲーム三昧。そんなことを繰り返しているんだから当然である。


「げっ!もう3時……明日はちゃんと起きて学校行かないとな……」


 そう思いながら眠りについた。




 翌日の朝、残念ながら願いは叶わず、あたしはいつものごとくギリギリのアラームの音で目が覚めた。慌てて飛び起き、支度を始める。


 授業の開始まであと10分ほどしかないため少し早歩き気味で急ぐことに……すると歩いているあたしの目を1つの電子看板の広告の光が一瞬で奪った。


 その電子看板はいつもあるもので、特別いつもは気にならなかったけど、急いでいたからその光が気になったのかもしれないし、分からない。


 ただ言葉にするとするなら……それがあたしの『運命』だったのかもしれない。


 その電子看板の広告には、赤茶色のボブでシャーロックホームズみたいな衣装を着た3Dモデルが動いていた。そして『Vtuber大募集!あなたの好きをこの子とみんなに共有しませんか?』と書かれていた


「可愛い……『青嶋ポアロ』か。でもVtuber……って。何?YouTuberの偽物?」


 何のことか分からないあたし。ハッと我に返り走ってそのまま学校へ急いだ。




 それから数日たったある日、あたしはあの電子看板の広告が気になっていた。なかなか知られていないがVtuberというものはすでに存在しているらしく、バーチャルユーチューバーの略らしい。


 3DモデリングというアバターになりきってYouTubeに動画を上げて、その動画にコメントやスパチャをくれた人たちとコミュニケーションを取るという活動内容らしい。


 しかもVtuberの強みは、アバターになれること。つまり、可愛い女の子にだってなれるし、イケメン男子にもなれるし、動物や無機物などなんでも変身することができる。もちろん男性から女性にだって変身できる。つまりあの『青嶋ポアロ』になれるということだ。


 そしてあたしは配信をやっているVtuberの動画を観てみることにした。動画の内容は様々で、ただ好きなことを配信している人も多かった。もちろん再生数も1桁台から2桁台であまり試聴されてなかった。


「まぁ趣味みたいなもんだもんね。仕方ないか……」


 そんな中、あたしは1つの動画に釘付けになった。そのタイトルは『そこのあなたもVtuberに!』という企業のものだった。


「あ。これあの電子看板の……」


 そこにはあの電子看板の女の子の他に3名のアバターがいた。どうやら4名のVtuberのプロジェクトらしい。企業名は『Fmすたーらいぶ』。


「あなたも輝く一等星に……あたしがあの子になる……大好きなゲームを大好きな人と共有しながら楽しく……」


 なぜ気になったのか、あたしにも分からない。でもなぜか惹かれるものがあった。そして気づけばあたしの指は自然とその企業に、必要事項を書いてVtuber応募のメールを送っていた……



 そして翌日。あたしはいつものように学校で授業を受け、今は昼休み。ちなみにあたしが通っているのは情報処理系の専門学校。理由は特にない。資格があれば就職に有利になるという安易な考えで選んだだけだ。まだ働くつもりもなかったしね。


 あたしがコンビニで買ったおにぎりを食べていると横の女の子のグループの会話が聞こえてくる。


「あはは。マジ?」


「マジだよ。もう別れたし」


「あはは!早!」


「だってなんかめんどいし……」


 なんかすごく盛り上がってるなぁ……彼氏か……あたしには無縁な存在だけど、そこまでブサイクでもないし、あたし的には可愛いと思ってるけど。


「そう言えばあの動画観た?めっちゃウケたよねw」


「あれでしょ?観た観た」


「YouTuberっていいよね?自分の好きなことしてお金貰えてさ?」


「そう?恥ずかしいし、顔出しとか私は無理!」


「そしたらなんかゲームの配信者とかゲーム実況者?とかでもいいじゃん?あれ顔出さないじゃん。そっちのほうが絶対楽っしょ?」


 楽……?ゲームはそんなに簡単なものじゃないから


「……じゃあ今度やってみようかなw」


「やめときなゲームなんて、あんなのオタクじゃん。人気になっても恥ずかしいよw」


 バンッと。あたしは無意識に机を叩いていた。それは大好きなゲームをバカにされたからじゃない。それを一生懸命やっている配信者や実況者を『オタク』の一言でバカにされたのが許せなかったから……


 どうしてあたし……


 でもその女の子たちは一瞬驚いたが、そのあとはあたしのほうを全く見ないで会話を続けていた。


 これが……今のあたしなんだ……

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