161. 後輩ちゃんは『トリ』がやっぱり無理らしいです
そして次の日。オレはいつものように朝配信を終え、一息つきながら事務所の連絡を確認していると、運営からのメッセージが届いていた。どうやら『クリスマス企画』のスケジュールらしい。それを確認しようとしていると、いきなり扉が開かれ寝癖のついた彩芽ちゃんが部屋にやってくる。
「おはよう彩芽ちゃん」
「あっあの……みみ……みましたか?」
「何を?」
「『クリスマス企画』のスケジュール……です」
「ああ……今から確認しようとしてたんだけど?というか前にも同じことなかったっけ?」
オレは笑いながら答えるとそのスケジュールを確認する。今回も遠山さくらちゃんが発案した企画らしい。こうやって大型企画の内容を考えられるのは凄いなと思う。オレなんてただの雑談配信しかしてないし……えっと内容は……
【クリスマスだよ全員集合!仲良しフリートークリレー配信】
15:30~ 遠山さくら 八神えるる
16:00~ 八神えるる 黒夜ルナ
16:30~ 黒夜ルナ 葉桐ソフィア
17:00~ 葉桐ソフィア 青嶋ポアロ
17:30~ 青嶋ポアロ 伊集院クララ
18:00~ 伊集院クララ 園崎ラビ
18:30~ 園崎ラビ 海原あると
19:00~ 海原あると 姫宮ましろ
19:30~ 姫宮ましろ 九重キサラ
20:00~ 九重キサラ 輝聖いのり
20:30~ 輝聖いのり 神川ひなた
21:00~ 神川ひなた 皇ジャンヌ
21:30~ 皇ジャンヌ 魔月リリィ
22:00~ 魔月リリィ 朽木ココア
22:30~ 朽木ココア 夢花かなえ
23:00~ 夢花かなえ 双葉かのん
23:30~ 双葉かのん 遠山さくら
なるほど。1人1時間で30分ずつ、つまり2人のライバーとフリートークする企画か。しかも同期が被らないようにうまく振り分けが出来ている。ほう……オレはあるとちゃんとキサラさんか……。3期生でもほとんど絡みがない2人だな。これは楽しみだ。
オレが彩芽ちゃんのほうを見ると、この世の終わりかのような顔をしている。またか……
「えっ……と。その……なんで…最後なんですか?トリとか……無理です」
「前も言ってたよそれ。さくらちゃんとはコラボしたことあるし大丈夫だよ。それに4期生の八神えるるちゃんなんか、まだデビューして1ヶ月程度でトップバッターだろ?彩芽ちゃんは先輩なんだから」
「そうやって……他のライバーさんのこと……」
「そんなことないだろ。これは仕事なんだから頑張ろう」
「うぅ……気持ち悪い……」
緊張しすぎだよな……今までの仕事のほうが大変なことあっただろうに。本当に彩芽ちゃんには困ったもんだ。
「あと彩芽ちゃん。年末のFmすたーカウントダウンライブの3期生オリジナルユニット曲の仮歌が今週中に届くらしいから、確認しておいて」
「……はい」
「今回もまだ誰と組むかは決まってないけどユニットがあるから、結構練習量が多いらしいから頑張ろう」
「はい。お仕事……頑張ります」
すたライは年末……そう言えば彩芽ちゃんは年末どうするんだ?仕事で今はオレと同居してるだけに過ぎないし、実家に帰るのか?
「あのさ彩芽ちゃん。年末年始はどうするんだ?実家に帰るのか?」
「帰ります……でも……少し落ち着いたらにします。だから……年越しは……颯太さんと一緒です……いいですよね?」
「もちろんいいよ」
「よかった……です。お蕎麦……食べます」
「海老天大きいののせような」
「はい……」
彩芽ちゃんは安心したように微笑んでくれた。今年は楽しい年越しになりそうだな。