目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報
153. 姫は『やる気』があるそうです

153. 姫は『やる気』があるそうです




 4期生御披露目配信まで残り2日。オレは一ノ瀬さんと最終調整をしながら、初配信で何を話すかなどを決めていった。


 設置した機材の扱いにも慣れてきているので、スムーズに準備が出来ていると思う。あとはなるようにしかならない。


 時間は16時。そんなオレは、『姫宮ましろ』として事務所に呼ばれていた。今日は公式企画の収録があるからだ。


 内容は『夢のFmすたーらいぶ!先輩!あの子の良いところ教えてください!』というもので、これからデビューする4期生のためにオレこと『姫宮ましろ』と立花さんこと『魔月リリィ』のFmすたーらいぶでトップの2人が他のライバーのことを話していくというものだ。


 ちなみに3D生配信で司会は玲奈ちゃんこと『葉桐ソフィア』ちゃん。初司会らしい。


 そんなこんなで、控え室に案内される。中にはもう既に玲奈ちゃんがいた。


「おはようございます」


「あ。ご機嫌よう。颯太さん今日はよろしくお願いいたします」


「うん。よろしく」


 オレが席につくと、スタッフの方がやってくる。台本を受け取り、内容を確認する。


「颯太さん。リリィママってどんな人ですか?私あまり話したことなくて、挨拶は何回かしたことあるんですけど」


「うーん。そうだな……」


 その質問に答えようとするとタイミング良く立花さんがやってくる。


「おはようございます。魔月リリィです。よろしくお願いします」


「あ。おはようございます。葉桐ソフィアです。こちらこそよろしくお願いします」


 ……Fmすたーらいぶの最年長と最年少が目の前に並んでいるのを見ると、不思議な気分だ。しかし、今は打ち合わせの時間なので雑談をしている暇はない。そして、今回の企画について説明を受けて配信時間まで待つことにする。


「あの!私……佐伯玲奈って言います。もしよろしければお名前を聞いてもよろしいですか?」


「あ。私は立花紫織よ。よろしくね玲奈」


「立花さん?紫織さん?紫織ママ?」


「ママじゃないわよw」


 そんな感じで、玲奈ちゃんは緊張しているのか、ソワソワしていた。彼女にとってみんな年上だし、大人だからな。高校生が良く頑張っているよ。とオレも関心する。


「そう言えば颯太。あなた4期生の『園崎ラビ』のマネージャーになったんだって?」


「一応、正式な担当マネージャーが退院するまでの間ですけどね」


「あれ?彩芽さんのマネージャーは?」


「今は桃姉さん……神崎チーフマネージャーがついてくれてるよ」


 玲奈ちゃんはそれを聞いて、何かを納得するような顔をしながら話を続ける。


「だから最近、彩芽さん元気ないんですね。配信の切り抜き観ててもいつもと違いますし、同期だから分かります」


「颯太。ちゃんとフォローしてあげなさいよね?今まで一緒にいたのに仕事とはいえ急に離れるなんて、本当は辛いんだから」


「ちゃんと一緒に居てあげてるんですか?いつもと同じじゃありません?ダメですよ、離れた分はきちんと埋めないと。嫌われちゃいますよ?」


「え?嫌われるのか?本当に?」


「当たり前でしょ。放って置けば熱が冷めるでしょうに。私たちVtuberだって長期間配信を休んだら、少なからずリスナーにも離れる人がいるのと同じよ?」


「颯太さん。もう少し考えてあげたほうがいいですよ?女の子はデリケートなんですから!」


 なるほど。そういうものなのか……なんかJKの玲奈ちゃんにまで言われているオレって一体……。というかただ心配してくれているだけだよな?彩芽ちゃんと付き合ってるのバレてる?


 すると、扉がノックされスタッフが入ってくる。そろそろ配信開始のお時間のようだ。


 スタジオに入り、オレは気を引き締め直し配置につき画面を確認する。こうして自分の動きに『姫宮ましろ』が動いているのを見ると、違和感はあるが、それと同時にやる気が出てくる。


「ねぇ颯太」


「なんですか?」


「こうやって『姫宮ましろ』と並ぶ時が来るなんてね」


「確かに初めてですよね……すいません。大分待たせてしまって」


「謝らないでよ。すごく嬉しいし、前にも言ったけど、私たちはこれからなんだからさ?」


 そう言うと、立花さんは少し微笑みながらオレの顔を見る。オレもそれに答えるように笑顔で返すと、スタッフから合図が出る。


 良く考えてみたら、まだまだ初めてのことが多いよな。『姫宮ましろ』として、これから色々と経験していくことになる。そんなことを考えるとまた不思議とやる気が出てくるのだった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?