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140. 姫は『提案』するようです

140. 姫は『提案』するようです




 10月。来週は3期生の1周年記念配信があるので、彩芽ちゃんは忙しそうだ。スケジュールを見ただけでも大変そうだしな……。


 そんな中、オレはと言うと……。彩芽ちゃんと付き合うことになった。正直オレは戸惑っている。今までリアルでの恋愛なんてしたことなかったから、何をすればいいのか分からなすぎる。それに彩芽ちゃんは仕事も忙しいだろうし、あまり負担をかけたくもない。


 そしてオレは隠し事が2つになった。1つは姫宮ましろがオレであること。もう1つは彩芽ちゃんと付き合っていること。お互い仕事に影響がでないようにと決めたことだ。まぁ……一応日咲さんだけには報告をしておいた。色々フォローしてもらったし。日咲さんなら誰にも口外しないと信じてはいる。


 そんなことを考えながら、仕事で来ていた事務所を出ると廊下で誰かに呼ばれる。オレは振り返るとそこには満面の笑みを浮かべた玲奈ちゃんがいた。


「こんにちは颯太さん」


「玲奈ちゃん」


「お仕事ですか?かのんちゃんの?それとも姫宮ましろの?」


「姫宮ましろのだよ。でももう終わったから帰るところだけど」


 オレは苦笑いを浮かべながら答えると、玲奈ちゃんは少しだけ考える素振りをする。何だ?オレが首を傾げていると、玲奈ちゃんが上目遣いでこちらを見上げてくる。


 うわっ……あざとい……これがリアルJKか……天然なら将来が恐ろしいよ。オレがドキドキしていると、不意に腕に抱きついてきて、身体を密着させてくる。その柔らかさに動揺しながらも平静を装って口を開く。


 ってか……胸が当たってるんですけど……最近の子は発育が良すぎないか?いかんいかん。近いって……良い匂いがするし……これはヤバいぞ……マジで。


「あの玲奈ちゃん?近いし離れてくれないか?恥ずかしいし」


「え?10万人耐久配信の時私のこと抱きしめたじゃないですか?私だって恥ずかしかったですよ?」


「いやあれは……」


「冗談ですよ。せっかくなのでどこかで奢って欲しいと思って?話したいこともあるし」


 そのまま玲奈ちゃんに促されるまま、近くの喫茶店に入る。違うんだ彩芽ちゃん。これは仕事だから……とか自分で言い訳をする。そして注文を終えて店員さんがいなくなると、玲奈ちゃんは急に真剣な表情になった。


「実は……相談があるんです」


「相談?オレなんかで役に立てるかな?」


「はい。もちろんです」


 そしてしばらく待っていると注文した2人分のアイスコーヒーが来る。すると玲奈ちゃんは一口飲んでから話し始めた。


「あの。オフコラボしてもらえませんか?」


「オフコラボ?」


「はい。私は未成年なので深夜配信は出来ないですけど」


「でも玲奈ちゃん忙しいだろ?1周年記念配信の準備とか?」


「だからやるんです。正直家にいると制限されて何もできません。別に配信をしなければ夜更かししても問題ないはずです。1周年記念配信は成功させたいですから!」


 なるほど。そのために頼めるのがオレしかいないと言うことか。それなら……。オレはそのままスマホを取り出しある人に電話をかけることにする。


「もしもし?」


 《あっ。颯太君?どうしたの外?》


「あっはい。月城さん今大丈夫ですか?」


 《大丈夫だよ。今家だし。だからディスコードじゃないのね。どうかした?》


 電話の相手は、Fmすたーらいぶ1期生の『神川ひなた』こと月城さんだ。今は家だと言っていたので、ちょうど良かった。


「月城さんはかのんちゃんとコラボする予定でしたよね?」


 《うん。今週末にやろうかなって。そうか颯太君はマネージャーでもあるからスケジュール知ってるんだね》


「はい。それでご相談なんですけど、良ければオレと葉桐ソフィアちゃんも含めてオフコラボにしませんか?実は今裏で葉桐ソフィアちゃんと一緒で……」


 かなり無理なお願いなのは分かっているし、断られても仕方がないと思っている……が月城さんはほぼノータイムで返事をくれた。


 《いいよいいよ!じゃあ皆でコラボしようか!私もかのんちゃんとソフィアちゃんともっと仲良くなりたいし!颯太君の家でいいよね?かのんちゃんと同棲してるんだもんね?》


「同居です。同棲ではありません」


 《あはは。じゃあ土曜日にしようか?楽しみにしてるよ!また後で連絡するね!バイバーイ!》


 通話を切ると、玲奈ちゃんが目を輝かせてこちらを見てくる。


「え?ひなた先輩ともオフコラボ出来るんですか!?そんな簡単にOK貰えるなんて、やっぱりFmすたーらいぶのエースは違いますね?」


「いや同期だからだよ。とりあえず予定は決まったよ。土曜日にオレの家に来てもらって、そこでコラボ配信するって感じになると思う。一応確認しておくけど、玲奈ちゃんの親御さんは大丈夫なんだよね?」


「これから話します」


 ……マジか……これって結構まずいんじゃないか?まぁ……玲奈ちゃんがさすがに何とかするだろうけど。


 こうしてオレは彩芽ちゃん、月城さん、そして玲奈ちゃんとオフコラボをすることになったのだった。

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