74. 後輩ちゃんは『助けたい』のです
喉の調子も戻り、オレはいつものように朝配信を終え、Twitterをチェックしていた。すると興味深いTwitterが上がっていた。それは3期生のツイートだった。
葉桐ソフィア@hagirisophia
「【重大告知!】明日8月19日(土)朝8時から10万人耐久歌枠配信やります!是非観に来てください!お楽しみに!」
九重キサラ@kokonoekisara
「3期生もソフィアちゃんと共に、キサラの家で並走オフコラボする予定です。みんなで一緒にソフィアちゃんを応援してくれると嬉しいです!」
海原あると@umiharaaruto
「同期とゲーム出来るの嬉しい!絶対負けない!」
朽木ココア@kuchikicocoa
「ココアはポンココしないように頑張るから!」
双葉かのん@futabakanon
「キサラさんの家……緊張するけど、頑張ります!」
「これは……凄いな。箱推しリスナーは歓喜だろうな。しかし、鈴町さんがオフコラボか……成長したな。なんか嬉しすぎてオレが泣きそう」
そんなことを考えていると、鈴町さんいつものようにやってくる。
「おはようございます……」
「おはよう鈴町さん。オフコラボするんだって?同期の仲が良くて何よりだよ」
「あの……その件なんですけど……」
「どうかしたか?」
鈴町さんはなぜかモジモジしながら、オレを見つめてくる。
「実は……その……」
「どうしたんだ?何か言いにくいことなのか?オレでよければ相談に乗るよ」
「実は10万人耐久配信……事務所は反対してたんです。ソフィアちゃんのチャンネル登録者は現在90800人で……リスクが大きいって。でも……ソフィアちゃん困ってたから……キサラさんが無理矢理お願いして、社長に許可を取ってもらったんです」
確かに耐久配信とはいえ、一気に1万人近く登録者を増やすのは正直難しいし、玲奈ちゃんには22時までというタイムリミットもある。そりゃ反対されるよな。そして失敗すればリスクも大きいし。
「でもなんでいきなり明日やることにしたんだ?確かに早いと思うけど」
「来週はましポん48があるので……ソフィアちゃん、用事があってもう夏休みに配信する……時間がないって。そして……夏休み中にチャンネル登録者10万人いかなかったらVtuber辞めるって最初から親とそういう約束してるみたいで……」
なるほど。玲奈ちゃんはまだ高校生だし、親も完全には納得していないのだろう。それにしても、ずいぶん厳しい条件で活動してたんだな。玲奈ちゃんの家庭の話だし、部外者がどうこう言える状況でもないが。
でもその目の前にそれが見えてるならそりゃやるしかないよな。今までも厳しい状況で活動してきたんだしな。
「それで……キサラさんが、3期生の仲間で少しでもお手伝いしようって……声かけてくれて……ソフィアちゃんが辞めるの嫌ですし……一応……ましろん先輩には……知っていてほしくて」
「そっか。オレも何かお手伝いできるなら言ってくれ」
「ありがとう……ございます……」
「あぁいいんだよ。気にしないでくれ。同じFmすたーらいぶの仲間なんだし。応援したい気持ちは同じだよ」
それからすぐに、鈴町さんは自分の部屋に戻っていった。本当に忙しい子だ。あんな小さな身体でよく頑張ってるよ。
そしてすぐにパソコンを開きディスコードで1期生と2期生にメッセージを送る。何かをしてあげられるわけじゃないけど、このまま何もしないのは先輩として仲間としてダメだからな
「明日の葉桐ソフィアちゃんの10万人耐久歌枠配信をFmすたーらいぶの先輩として盛り上げたいので、時間がある方は応援してあげてくださいね!(。・_・。)ノお願いします!」
これでよし。するとすぐに何人かのライバーがリアクションをつけてくれている。各々応援の仕方はあるけど、こうやってすぐに動いてくれるのは嬉しいもんだ。そのままオレも仕事の準備を始める。明日は一日熱くなりそうだな。