72. 姫は『再び』あらわれるようです
8月中旬。ついに『ましポん48』を来週に控えて、オレと鈴町さん、そして日咲さんは準備を着々と進めていた。
基本は枠取りや台本の用意などは事務所がほとんどやってくれるので、個人的に必要なデータなどを事前に各ライバーから集めておいたり、BGMを用意したりが作業内容になる。
「雑談も必要になるから、あとで3人で打ち合わせをして話す内容をある程度決めておかないとな……」
そんな中、オレは配信を流しながら作業をしている。最近は他のライバーの配信を観ることで勉強になったりするし、気付いたことも多いからだ。これはこの前の3期生の朝配信のおかげでもある。
ちなみに今は朽木ココアちゃんの謎解きゲームの配信を観ていた。時間は23時。ココアちゃんの配信が終わる。ふむ。やっぱり他のライバーさんの配信は為になることが多いな。そんなことを考えていると、違和感に気付く。
「あれ?配信切れないな?」
なぜか配信終了してるのに画面が消えないのだ。不思議に思っていると、声が聞こえてくる。
「ふぅ。あー疲れた……良かった。今日ポンココしなかったよ。初めてかも!超嬉しい!私頑張った」
普段とは違う地声……おいおい。まさかの配信切り忘れじゃないかこれ?かましてくれたなココアちゃん……。
コメント
『草』
『でも可愛い』
『ついてるよココアちゃん!』
『誰か教えてやれ』
『ヤバそう。特にココアちゃんじゃ』
『ポンココ』
仕方ない。なんかオレ……ココアちゃんの保護者じゃないかこれ?急いでディスコードをつなぐ。
「ん?え?ましろ先輩?え?え?私何かしたっけ……来週の件かな?提出したような気がするんだけど?あれ送ってなかったっけ?」
頼むから、もう何も言うなココアちゃん。黙ってオレの通話を繋いでくれ『ましポん48』のことがバレるんだが……すると通話が繋がる。
「もしもし?ココアです。来週のやつ送ってませんでしたっけ?」
《こほん。……こんばんは。お久しぶりです。突然の『まっしろココア』の夜ラジオをお聴きのリスナーさんいかがお過ごしですか?》
「はい?ましろ先輩?」
コメント
『姫来たぁ~!!』
『ピンチに登場!』
『もう保護者じゃんw』
《可愛く喜んでるところごめんねココアちゃん。驚かないでね?……配信切れてないよ。観てごらん?》
「え?……ああああ~!!ヤバい!?嘘!?聞こえて……ココア何か言っちゃってた!?」
コメント
『可愛かった』
『今日も頑張ったなココア』
『私助かる』
『地声も助かる』
《あはは。ポンココ出ちゃったね?残念。とりあえず謝ろうか使い魔さんたちに》
「ごめんなさいましろ先輩!使い魔さんたち!」
コメント
『せっかくだからラジオ聞きたい』
『突発コラボ歓喜』
『ココア。いい仕事するな』
『召喚魔法の使い手』
『さすが魔女っこ』
『ぐっすり眠りたいんだ』
「そんな~ましろ先輩にも迷惑だよ!本当にごめんって!」
《ましろの立ち絵送るね?》
「え?ましろ先輩?」
《まっしろココアラジオやろうか。リスナーさんたちも望んでるし。ましろ作業してただけだから大丈夫。朝配信あるから1時間だけね?ほら画面出して》
コメント
『うおおおお!』
『話が分かる姫』
『姫好き!』
『やったぜ!』
こうして、また朽木ココアちゃんのポンココにより突発的にラジオ配信をすることになった。まぁ朝配信のお礼もあるし、ちょうど良かったけどな。